外食で“焼肉”活況、「ワンランク上の食べ放題」が3世代の支持獲得、「1人焼肉」は新たな市場を創出

3世代にわたる客層で賑わう「焼肉きんぐ」店内
焼肉業態が好調だ。日本フードサービス協会(外食関連企業約800社が加盟)が毎月発表する外食産業市場動向調査では、焼肉は31カ月連続(2019年6月時点)で売上高を拡大している。

熟成肉や赤身肉ブーム、糖質オフや肉の健康感の浸透など、市場拡大の環境が整ったことが好調な要因のひとつ。また、ハレの日をつかむ焼肉テーブルオーダーバイキングや、個食化をつかむ1人焼肉など、消費者ニーズに沿った業態を各社が工夫を凝らし開発してきたことも功を奏している。

〈3世代が集まるテーブルオーダーバイキング〉
7月のとある土曜日、午後7時。シニアと子ども夫婦に孫の3世代の来店で賑わう外食店舗が、地方都市のロードサイドにある。物語コーポレーションが運営する焼肉テーブルオーダーバイキング「焼肉きんぐ」だ。

食べ放題コースには、看板の熟成厚切り肉を筆頭に、ビビンバや冷麺などの焼肉店定番メニューに加え、唐揚げやフライドポテト、たこ焼きといったファミレスや居酒屋需要をもつかむバラエティー豊かなサイドメニューが並ぶ。

メニューの充実ぶりや上質感のある店内、テーブルでオーダーした料理を席まで届ける丁寧な接客が支持され、同業態は1店舗当たりの平均年商が2億円近い一大業態へと成長を遂げている。2007年の初出店から毎年20店舗程度出店し、220店舗強まで拡大した。開発・人材力を強みに今後も継続成長を続けていく意向で、「牛角」を抜き、この3年以内に焼肉業界で売上トップを狙うという。

「焼肉きんぐ」の売り上げを支える主な客層はファミリー層。自分で焼いて食べる焼肉はエンターテイメント性があり、肉のご馳走感はハレの日需要やプチ贅沢需要をつかむ。肉好きなシニアが、家族を連れて来店する例も多く、60歳以上のコース価格を500円引きで提供する。

一方、関西を中心に展開し昨春には関東にも進出を果たしたワン・ダイニングが運営する「ワンカルビ」でもシニア料金を設定。売れ筋の3580円コースは50歳代3220円、60歳代2860円、70歳以上2500円と段階的に価格を引き下げており、3世代はもちろん、肉の健康効果の浸透なども手伝ってシニア同士で来店する客も多いという。

かつての安かろう、悪かろうのイメージからワンランク上の食べ放題業態を目指そうと各社が進出したテーブルオーダーバイキングだが、割安感のある価格設定がシニアの需要をつかんでいる。3世代で来店した場合、会計を支払うのも祖父母という例も多く、シニアを引き付ける工夫が好業績に直結している。

〈“1人焼肉”に新規参入の動きも〉
一方、1人1台の無煙ロースターを使って好きな部位を好きなだけ食べられる“焼肉ファストフード”を開発したのは1人焼肉業態の焼肉ライク。

同社が目指すのは、すし業態における回転すし。これまで無かった焼肉のファストフードを作ることで、新たな市場創出を目指すという。昨夏の1号店出店以降、これまで国内は繁華街、ロードサイドを合わせて9店舗をオープンしている。5年で300店舗を掲げる同社は今後、出店を加速化させる予定で、9月以降、月5店舗の新規出店を予定している。

1人焼肉業態については、同社より一足早く吉野家の子会社も「トノサマカルビ」で参入している。追随する企業もいくつか出てきており、個食化と継続する肉ブームを背景に伸びしろのある業態として、外食各社の新規参入が進む様相だ。