昆虫食専門レストラン「ANTCICADA(アントシカダ)」が、2020年6月4日(虫の日)、東京・日本橋馬喰町にオープンしてから約5か月が経過した。営業は金曜から日曜限定。コロナ禍の中にありながら、オープン以来、金曜と土曜のコース予約はほとんど埋まっており、「コオロギラーメン」を提供する日曜も順番待ちが発生するほどの盛況だという。先日、知人の紹介で訪れる機会があった。
日本橋馬喰町「ANTCICADA(アントシカダ)」外観

日本橋馬喰町「ANTCICADA(アントシカダ)」外観

 
「ANTCICADA(アントシカダ)」では、金曜・土曜はコース料理を完全予約制で提供し、日曜の11時から21時までは「コオロギラーメン」やサイドメニューのほか、「コオロギビール」「タガメハイボール(通称タガハイ)」などのドリンクを提供している。アントシカダの代表は、昆虫食歴21年「地球少年」の肩書きを持つ篠原祐太氏だ。
 
記者が日曜の夜に訪れた際、13席ほどの座席は満席だった。
 
まずは「コオロギラーメン」(1,000円、以下税別)を注文。コオロギラーメンは、2015年に人気店「ラーメン凪」と共同開発したもので、その後、篠原氏の母校である慶應大学の食堂や、赤坂サカス、日比谷音楽祭、FOODEX JAPANなど全国各地のイベントで提供するたびに完売したという人気メニューだ。篠原氏によると「発売以降改良を重ね、常にブラッシュアップを続けてきた」という。
 
コオロギラーメンには、しっかりした味わいと香ばしさが特徴の「フタボシコオロギ」とまったりした甘みが特徴の「ヨーロッパイエコオロギ」、2種の国産コオロギを使っている。コオロギ2種をブレンドした出汁、「コオロギ醤油」を使ったタレ、特製の「コオロギ油」、さらには「コオロギ練り込み麺」とコオロギづくしのラーメンとなっており、1杯に約110匹のコオロギが使われているという。トッピングコオロギの有無は選ぶことができる。
 
食べてみると、口の中に香ばしい香りと味わいが広がり、コクがあるもののさっぱりとした旨みがあった。虫というとゲテモノという印象を持ってしまいがちだが、ラーメンとしてちゃんとおいしいことに驚いた。篠原氏は「ラーメン凪」やミシュラン一つ星「四谷うえ村」で修行し、食材としての虫の可能性を探究してきたという。
 
次に、「シルクソーセージ」(500円)、「佃煮 3種盛り(コオロギ・イナゴ・カイコ)」(500円)、「蚕沙茶(サンシャ茶、冷たいカイコの糞茶)」(300円)、「蚕沙(カイコの糞)アイスクリーム」(400円)を注文。
 

シルクソーセージ/日本橋馬喰町「ANTCICADA(アントシカダ)」

シルクソーセージ/日本橋馬喰町「ANTCICADA(アントシカダ)」

 
「シルクソーセージ」は、ペースト状にしたカイコの蛹(サナギ)と豚肉を合わせて作ったソーセージ。ふわふわな食感を実現するため、生クリームを多めに入れているという。
 
「佃煮 3種盛り(コオロギ・イナゴ・カイコ)」は、生姜で味付けしたコオロギ、紫蘇と青唐辛子で味付けしたイナゴ、ピスタチオとカルダモンで味付けしたカイコの盛り合わせで、つまみに最適な味わいだった。

佃煮 3種盛り(コオロギ・イナゴ・カイコ)/日本橋馬喰町「ANTCICADA(アントシカダ)」

佃煮 3種盛り(コオロギ・イナゴ・カイコ)/日本橋馬喰町「ANTCICADA(アントシカダ)」

 
「蚕沙茶(さんしゃちゃ=冷たいカイコの糞茶)」は、桑の葉だけを食べたカイコのフンを乾燥させて煮出したお茶。カイコのフンは、古くから中国では漢方として用いられてきたという。
 
「蚕沙アイスクリーム」は、カイコの糞で味付けをしたアイスクリームで、玉露を思わせる上品な香りが楽しめる、食後にぴったりの爽やかなデザートだ。

蚕沙アイスクリーム/日本橋馬喰町「ANTCICADA(アントシカダ)」

蚕沙アイスクリーム/日本橋馬喰町「ANTCICADA(アントシカダ)」

 
店内の一角には、沢山のコオロギが飼育されていた。篠原氏が食材のコオロギについて詳しく説明してくれた。
 
店舗で飼育しているコオロギは、ラーメンのトッピングに使うもので、日曜の提供にあわせて木曜から餌を抜き、コンディションを整えている。コオロギは食べる餌によって味が変化するらしく、香ばしい味にするには魚粉を多く与えたり、あっさりした味にするには野菜を多く与えるなど、商品にあわせて与える餌を変えているという。

乾燥コオロギなどを手に、「アントシカダ」代表の“地球少年”篠原祐太氏

乾燥コオロギなどを手に、「アントシカダ」代表の“地球少年”篠原祐太氏


来店客にはどのような人が多いのか篠原氏に聞くと、意外に「虫は苦手だけど興味本位で来てくれる人など、昆虫食に抵抗のある人が多い」という。記者自身も食べてみるまでは昆虫食に抵抗感があった。しかし、アントシカダの料理を食べて、虫が持つ食材としての魅力を感じることができた。
 
まだ昆虫食が一般的でない中、篠原氏はどのようなことを目指しているのか聞いてみると、以下のように語ってくれた。
 
虫はゲテモノとか珍しいものというイメージが多い中で、虫も魅力を持った一つの食材だということを知ってもらいたい。虫に対するイメージを変えていった先に、動物も植物も魚も虫も一緒で、フラットだということを伝えていけたら。
 
食糧問題の観点から昆虫食の話をされるよりか、飲食体験として食べておいしいと感じてもらうことで、昆虫って食材として価値があるものなのではないか、ということをその人自身の感覚で考えて理解するきっかけになれば。
 
今後の店舗展開などについて、話をもらうこともあるがあまり考えていない。アントシカダは発信拠点としての意味合いが強い。虫に精通したアントシカダのメンバーが、接客の中で料理に使われている虫の魅力をしっかりと伝え、密度の濃い場所にしていきたい――。
 
金曜・土曜に提供するコース料理では、旬の昆虫や野草、ジビエなどを使い、日の目を浴びていない生き物たちの魅力を表現しているという。虫の形状が苦手な人でも楽しめるよう、ソースやだしに使っているメニューも多いとのことで、記者も、今度はコース料理を堪能したいと思う。
 
【「ANTCICADA(アントシカダ)」店舗概要】
〈住所〉

〒103-0002 東京都中央区日本橋馬喰町2-4-6
 
〈営業日〉
◆金曜19:00~
◆土曜12:00~、19:00~
(完全予約制でコース料理を提供)
 
◆日曜 11:00~21:00
(予約不要、コオロギラーメンなどを提供、売切れ次第終了)


《「ANTCICADA(アントシカダ)」公式サイト