ゼンショー×エヴァ「外食5チェーン共同作戦」CMが800万再生突破、仕掛人が語る狙いとは

YouTubeで公開されたゼンショー×エヴァンゲリオン「外食5チェーン共同作戦」CM
ゼンショーホールディングスが3月8日から開催してきた「外食5チェーン共同作戦」が4月20日で終幕を迎える。

アニメ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」公開記念企画。「すき家」「なか卯」「はま寿司」「ココス」「ビッグボーイ」の5チェーンによる初の“共同作戦”として、全国約3700店舗で、コラボメニューの展開や限定クリアファイルの配布、“葛城ミサト”の声優・三石琴乃さんによる店内放送などを実施してきた大規模キャンペーンだ。

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YouTubeで公開されたゼンショー×エヴァンゲリオン「外食5チェーン共同作戦」CM

 
結果、CMはYouTubeでシリーズ累計800万再生を突破し、キャンペーンが始まった3月の店舗客数や売上も大きく伸長。まだキャンペーン期間中ではあるが、ここまでですでに十分な成果を得ているといっていいだろう。
 
YouTubeのコメント欄を覗くと、「こういうCMだったら飛ばさない」「初めて広告の動画をタップした」など、CM内容を高く評価する意見が並び、「食べに行きたくなった」というコメントも多く見られる。「エヴァンゲリオン」シリーズの人気や、最新映画への注目という背景があるとはいえ、いったい何が人々をひきつけたのか。仕掛人のThe Breakthrough Company GO 小竹海広(おだけみひろ)氏に、制作の狙いを聞いた。
 
〈The Breakthrough Company GO コピーライター 小竹海広氏プロフィール 〉
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了、TBWA HAKUHODO、ByteDance(TikTok)、フリーランス等を経てGOに参画。 コアアイデアの開発やSNSで話題になるコピー・CMプランニング・クリエイティブディレクションを得意とする。累計動画再生1.6億回。累計運用SNSフォロワー300万人。 YOUNG SPIKES 2020 デジタル部門 日本代表、YOUNG SPIKES 2021 インテグレーテッド部門特別賞、釜山国際広告祭 U30部門 NEW STARS 銅賞、ACC、ADFEST、CLIO、YouTube Ads Leaderboard等を受賞。個人Twitterは@0dake。

クリエイティブディレクター/コピーライター 小竹海広氏

クリエイティブディレクター/コピーライター 小竹海広氏

 
〈ナレーションや映像の随所にこだわり〉
今回の「外食5チェーン共同作戦」CMは、TV放送にも使用されたキャンペーン全体のCMと、WEB限定の5チェーン個別CMに、予告編を加えた計7本。どれも「エヴァンゲリオン」ファンにはおなじみの予告映像を模し、映画のシーンとコラボメニューの画像を組み合わせて作られている。
 
小竹氏によると、今回の「外食5チェーン共同作戦」で最も苦心したのは、「エヴァとゼンショーとのバランス」。「エヴァンゲリオン」シリーズの暗い世界観は、普通に考えれば、おいしい食事を提供する外食チェーンのイメージにはマッチしない。かといって、明るくハッピーでは“エヴァらしさ”に欠ける。ゼンショーの担当者とディスカッションを重ね、良いバランスを模索したという。
 
また、CMは「コラボメニューの内容をちゃんと伝えることを意図した」という。三石琴乃さんがエヴァの予告風にナレーションする内容は、例えば「ロンギヌスの槍が、包み焼きに埋まるコアを貫く」(ココス「コア包み焼きハンバーグ」)、「いくらとサーモンのダブルエントリーシステムを採用するはま寿司。覚醒したネタには、マグロとアボガドに、紫マヨがかけられていた」(はま寿司「2号機ビーストロール」「初号機暴走ロール」)など、キャッチ―なフレーズが並び、エヴァンゲリオン風の背景を敷いたインパクトあるメニュー映像とともに繰り広げられる。エヴァを知っていれば思わず耳を傾け、画面に見入らずにはいられない。
 
限定デザート「紅茶のブラン・マンジェ」を紹介する箇所では、映画から切り出した映像を使い、シンジがカップに液体(CMでは紅茶にも見えるが実は味噌汁)を注ぐ瞬間(すき家ver.)や、レイが湯気の立つ椀を手にするシーン(なか卯ver.)などとともに商品説明がナレーションされる。このように、ナレーションと映像が緻密に組み合わされているからこそ、視聴者はストーリーを楽しみつつ、コラボメニューの内容を理解し、自然とキャンペーン自体にも興味を持てる。
 
小竹氏は、「エヴァンゲリオンのファンは、情報が示されない中でも“解釈”をする」と語る。例えば、キャンペーンのメインビジュアルについて、ファンの一部では「シンジとマリのカバンが同じだ」として、その理由について議論が交わされている。また、ゼンショー5チェーンの看板が並ぶ、ゼーレをパロディしたCMカットは、作中で「SOUND ONLY」とされている表記を「FOOD ONLY」としており、画像をキャプチャした視聴者のTwitter投稿が広く拡散されるなど話題を呼んだ。

「ゼーレ」をパロディしたゼンショー5チェーン看板のCMカット

「ゼーレ」をパロディしたゼンショー5チェーン看板のCMカット

 
キャンペーン自体の設計からメニュー内容・CMまで、ゼンショーの「外食5チェーン共同作戦」には、数多くの仕掛けが緻密に施されている。キャンペーン終了は4月20日。それまでの期間に、店舗の利用客やCM視聴者たちは、どれほどの新しい発見をし、新しい解釈を行うのだろうか。
 
◆ゼンショー×EVANGELION「外食5チェーン共同作戦」特設サイト