からあげ市場 大手参入で競争激化も“飽和状態”ではない?! 専門店やコンビニの動向は

からあげ市場で競争激化(画像はイメージ)
からあげ業界の市場競争が激化している。ワタミなど大手外食企業の参入が相次ぎ、コンビニエンスストアのホットスナックやスーパーの総菜コーナーでも、からあげに注力する動きが見られる。

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からあげ文化の発信などを行う日本唐揚協会の発表によると、2022年4月時点のからあげ専門店の店舗数は推定4379店舗で、前年比40%増。集計を始めた2012年の450店舗から毎年拡大を続け、10年で約10倍に増えた。

一方で、足元では新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置の終了などを受けてテイクアウトの特需も落ち着きを見せ、からあげ業界は正念場をむかえている。

〈ワタミ「から揚げの天才」はキッチンカー・コンテナ店舗に取り組み〉
居酒屋大手のワタミでは、からあげと玉子焼きを販売する「から揚げの天才」を展開。低投資で出店できるフランチャイズモデルを確立したことで、コロナ禍初期に積極的に出店した。2018年11月に1号店をオープンし、2年7ヶ月後の2021年7月に100店舗を達成。これは日本の外食チェーン最短の記録だという。2021年10月に112店舗に到達して以降、一部店舗の閉店もあり100店舗を割り込んだが、2022年6月にはキッチンカーの2店舗目、コンテナタイプの8店舗目をオープンするなど、さらに出店しやすい新モデルでの取り組みを進めている。

ワタミ「から揚げの天才」(コンテナタイプの店舗)

ワタミ「から揚げの天才」(コンテナタイプの店舗)

 
〈“から好し”取り扱い「ガスト」は約1300店舗に〉
すかいらーくレストランツのからあげ専門店「から好し」店舗数は88店舗(2022年3月31日時点)。ただし、同社が展開するファミリーレストラン「ガスト」の“から好しのから揚げ”取扱店舗は約1300店舗。2020年7月から取扱店舗を増やし始め、現在ではほぼすべての「ガスト」で「から好し」のからあげを扱っている。

すかいらーくレストランツ「から好し」

すかいらーくレストランツ「から好し」

 
〈「からやま」着実に店舗数を拡大〉
とんかつ専門店「かつや」などを展開するアークランドサービスホールディングスのからあげ定食専門店「からやま」「からあげ縁」は、着実に店舗数を伸ばし、2ブランド合計で167店舗(2021年12月時点)。

アークランドサービス「からやま」

アークランドサービス「からやま」

 
〈ファミリーマート「ファミから」は“1週間で540万個”の好調〉
ファミリーマートでは5月末、店内で揚げるからあげの新シリーズ「ファミから」を全国発売した。従来の商品「和風からあげ」の約30g×4個入り税込200円に対し、「ファミから」はからあげ専門店で主流の1個約50gにサイズアップし、1個単位、税込98円で販売している。発売後1週間で販売個数540万個を突破するなど、滑り出しは好調だ。

ファミリーマート「ファミから」

ファミリーマート「ファミから」

 
かつて大ブームを巻き起こした「高級食パン」や「タピオカ」同様、急拡大したからあげ専門店でも淘汰が進むことを危惧する声も増す一方、“まだ市場には成長余地がある”とする専門家の意見もある。
 
日本唐揚協会の八木宏一郎専務理事は食品産業新聞社の取材に、「からあげの基本である『柔らかくてジューシー』『鶏肉に臭みがない』という2つのポイントが守れていない専門店は淘汰される」との見方を示した一方、「からあげ文化で先行している大分県や福岡県と比べると、東京にはまだまだ市場成長の余地がある」と語った。
 
八木氏は「東京は食のジャンルが豊富なため一概に言えないかもしれない」としつつも、“少なくとも10万人あたり5店舗”までは飽和状態でなく、東京には“約1.5店舗分の余地”があるとする。また、今後のからあげ業界については「外食控えの傾向が長引くことで引き続き需要が見込めるが、原料高や社会情勢の変化に、いかに対応していくのかが当面の課題」だと述べた。
 
コロナ禍のテイクアウト需要で再評価された国民食「からあげ」。市場全体として激しい競争があることは確かだが、掘り下げて状況観察していけば、ビジネスチャンスを見つけることはできそうだ。