中国・海通食品集団、寧波から日本向け凍菜 管理・研究開発に注力 課題は「柱商品の育成」

チャイナフリーの購買行動が一部で根強いなか、中国からの凍菜の輸入数量は16年、3年ぶりに前年を上回り40.5万tと13年の過去最高を上回った。北海道の台風被害による国産品の供給不足が要因だ。中国が突発的な代替需要にこたえる第1候補であることの証左と言える。2020年東京五輪を控え、選手村で提供される食材として凍菜の確保がにわかに話題となっているが、国際標準に適合する輸入品に矛先が向かう可能性も高い。ここでも中国の存在感が増すと予想される。中国凍菜は今後、どのような方向に進むのか。浙江省の有力食品企業、海通食品集団を取材した。

海通食品集団(毛培成総経理=写真)は寧波市に属する慈渓に本拠をもつ企業集団だ。1985年に国営企業として設立、冷凍野菜メーカーとして発足した。その後事業領域を拡大し、現在は調理冷食、缶詰、濃縮果汁、フリーズドライ――など事業領域を広げている。16年度は年商12億人民元(200億円超)、取扱い数量は12万t。そのうち凍菜は2.5万t、金額ベースで2.2億人民元となる。凍菜の大部分が日本向けだ。

生産拠点は浙江省に3工場、それ以外に上海、湖北、江蘇の合計6拠点をもつ。凍菜の主力工場は本社慈渓工場、そのほか同じく寧波市の余姚工場では欧米向け凍菜を、江蘇省の徐州海通では国内向け凍菜を、それぞれ生産している。

寧波地区からは10万ムー(約6,700ha)の畑から原料野菜を調達している。内訳は自社農場が5,500ムー、加盟農場2万ムー、契約農場7.5 万ムー、株主農場が500ムー――。特に寧波から杭州をつなぐ街道沿いに2万ムー有し、1.5時間以内に工場搬入が可能だ。自営農場で新種のテストを3年ほど行い、加盟農場で実用化するというのが栽培モデルとなっている。

生産品目は200アイテムと多い。豆類はソラマメ、枝豆、インゲン――、葉物はチンゲン菜、ホウレン草、小松菜、葉ダイコン――、花菜類のブロッコリー、カリフラワー、そのほかミックス野菜、地域特産のシイタケ、タケノコ、レンコン、イチゴ――など。

「多品種小ロット対応は優位性でもあるが、これからは柱となる商品を作らないと成長は難しい」と毛総経理は言う。「多品種小ロットには今後も対応し続けるが、機械化生産できる商品を探している」と話した。浙江省で収量の多い枝豆、ブロッコリーを候補に考えているという。

栽培管理では約15年前から、主要取引先のニチレイフーズやノースイの支援を受けながらトレーサビリティシステムを構築。小売パッケージの印字から30分以内に収穫農場、農薬履歴など必要情報を追跡できる体制をとる。品質安全面では第三者機関としての資格「CNAS」認証を受けた試験室を慈渓本社に置く。残留農薬は146項目検査できるという。研究開発にも意欲的だ。自営農場では育苗のほか種の開発、農業技術や器具の開発まで行う。沿海地域の人件費上昇に対応して、ハーベスターなど農業機械の開発販売事業も手掛ける。国内外の様々な大学との合同研究にも取り組んでいるという。

中国では新・食品安全法の下、モデル地区を定めて食品の輸出促進を図っている状況がある。寧波市CIQによれば、寧波地域からの対日輸出野菜の総量は16年2万6,000t強と前年比20%増と伸長した。モデル区認定は慈渓、余姚が受けている。一部、検疫と通関の分離を実現し、通関の時間短縮を図るなど、国を挙げて貿易促進に注力しており、最初にモデル地区認定を受けた山東省を含め、今後も現地動向を注視する必要がある。

〈冷食日報2017年10月24日付より〉