サンマルコ食品恵庭工場、再来年秋に新棟完成 6ライン体制へ

製品の袋詰めには人手を割く
〈1日90万個の量産工場、包装ラインの自動化が課題〉

サンマルコ食品の特徴は産地に根差し、原料に強いメーカーである点だ。基幹工場のひとつである、恵庭工場はコロッケ専用工場としては国内最大級の生産規模を誇る。JAようていと直接契約して原料ジャガイモ(男爵いも)を調達しており、台風被害が甚大だった昨年も前年を上回るジャガイモを確保し、安定供給を続けた。再来年秋には増築して2ライン追加する計画も進行中。業界のコロッケシェア3位である同社の動向に注目し、本紙など10社が加盟する冷凍食品記者クラブは10月31日、恵庭工場を取材した。

恵庭工場は大量生産型のコロッケ専用工場だ。もう一つの主力工場である津別工場(網走郡津別町)がクリームコロッケ、プリフライ・レンジコロッケ、いももち、春巻、グラタン――等、幅広い品目を生産するのとは対照的に、型抜きコロッケだけを生産する。1992年11月に竣工、当初は2ラインだったが、2015年に2ライン増設した。1ラインで毎時1,500kgの生産能力を有する。1日実働10時間、コロッケ1個60g換算とすると1日90万個を生産することになる。供給先も大手コンビニエンスストア、量販店など大量消費する需要家が中心となる。

恵庭と札幌の工場では原料ジャガイモはJAようていから調達している。農協で温度(0~2℃)・湿度(98%以上)管理が徹底されたジャガイモが毎日、工場へ搬入されている。反収重視の加工用原料と違い、生食用の規格外品を使用していることから、製品コロッケの品位に対する評価も高い。

ジャガイモは専用倉庫から洗浄機に投入、スクリュー式連続蒸し機を通り、100℃の蒸気で蒸し上げる。皮むき機を通過して100kgずつ大型ボールに入れたのち一端、真空冷却機で20℃に冷ます。その後、仕様毎に他の具材とともにミキサーにかけ、成型機に投入、微細パン粉、バッター、パン粉付けしてスパイラルフリーザーで急速凍結する。

製品の袋詰めには人手を割く。流れてくる製品を規定個数に並べる作業だが、パン粉の違いもあり、機械では正確に並べることが難しいのだという。

恵庭工場では来年6月から、新棟に着工する計画。恵庭の従業員数は約230人だが、高齢化や採用難を見据え、包装工程の自動化を最大の課題に掲げる。しかし「熟練パート1人分の仕事の一部をロボット2台でできる」状況にすぎない。自動化実現にはさらなる検討・検証が必要なようだ。

現行ラインでは冷凍機の更新も進めており、更新によって1ライン2tまで生産能力が向上した。増築ライン分を含めると生産能力は単純計算で1時間あたり12tと、現在の2倍になる。ただし、新ラインには付加価値製品の製造機能を持ち込むことも検討しているという。生産能力は自動化の成否にもかかっている。一方で冷媒は新棟建設に併せてアンモニアCO2に切り替える予定だ。

〈家庭用に対応できる体制堅持〉

サンマルコ食品の今期売上高は102億円となる見込み。売上構成比は恵庭、津別工場がともに全体の42%、重量ベースでは恵庭工場が同社全体の55%を占める。

かつて売上構成比は家庭用が8割、業務用が2割だったが、現在は家庭用が2割弱と逆転している。「大口契約によって一気に業務用中心にシフトしてきたが、業務用専業ではない」と藤井幸一社長(=写真)は強調する。「1回やめたら市販用のノウハウを失ってしまう」と、現在の家庭用市場の動向も見据えて、家庭用への取り組み姿勢を崩さない。大量生産工場である恵庭工場にも、油ちょう機器を備えてプリフライやレンジ調理品を一部生産している。

サンマルコ食品・藤井幸一社長
今年のジャガイモの作柄は「良すぎて、生食用に多く回る懸念がある」という。例年10~15%が加工用となるが、10%を割る可能性もある。生食用を調達せざるを得なければ原料コスト上昇要因となる。

〈冷食日報2017年11月6日付より〉