〈冷食卸売アンケート2(完)〉次期冷食は安定成長に傾く

〈業態別市況、医療・介護頼みさらに 採用難も急進〉
本紙で実施した冷食卸アンケートでは各社事業概況と次年度見込みのほか、業態別市況や冷食市場予想、さらに物流コストや採用難の状況について聞いた。

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冷食の販売利益を見ると「増益」と回答したのは28社で有効回答57社のうち49%だった。大幅に増加した前年(63%)の反動影響がある。一方「減益」は12%で、やはり前年(8%)からは悪化に転じている。

利益率で見ると「上昇」したのは30%で、2年越しで製品値上げによる収益改善が見られた前年(43%)の反動から減少に転じた。一方「低下」と答えたのは19%で、やはり前年(12%)からは悪化に転じた。

17年度の施策について回答を見ると、2年連続で多かった「値上げ対応」は大幅に減少した。ただ物流コスト分の料金交渉について触れた回答が見られた。

「人手不足対応商品の拡販」など前年に複数回答が挙がったものも見られなくなったが、それが前提になっているためとも考えられる。今年は「時短」「生産性アップ」「物流のアウトソース化」など対内的な施策が目立った。

〈業態別市況、ドラッグ好調〉
アンケートでは17年度に伸びた業態(商品)と苦戦した業態(商品)についても聞いた(グラフⅡ)。

「病院・介護施設」が伸長したとの答えが今年はさらに伸び、21件(前回15)となった。「骨なし(骨取り)魚」や「やわらか食」が伸長したとの回答はこの7年間散見される。今回は「カット野菜」「冷凍野菜」がいくつか挙がった。

主戦場のひとつである「中食・惣菜」は好調が3件、苦戦が5件となり、比較的堅調だった前年(好調6、苦戦2)までから、苦戦カテゴリーに転じた。

業界全体としてメディカル頼みが一層強まっている。

「外食」も2年連続で苦戦が好調を上回った。好調7件、苦戦15件は前年とほぼ同じ。複数挙がったのは居酒屋。好調としたのは大都市圏の卸が多い。

メディカル以外の「給食」は好調が5、苦戦が9と前年とほぼ同じ。前年同様、学校給食の苦戦が比較的多く挙がっている。

今回、好調業態で目立ったのはドラッグストアで家庭用を取り扱う4件から挙がった。

〈次年度見込み〉
各社の次年度の業績予想としては、総売上高で「1~3%」増収が最多、有効回答45社の36%(前年48%)を占めたものの、「4~6%」増収の33%(同31%)とほぼ同水準となった。「7%以上」増収は11%(同7%)と増加しており、成長期待が大きくなっている。

冷食売上高に絞ると「4~6%」増収見込みが最多、有効回答39社の31%を占めた。「1~3%」は28%でほぼ並んだ。ただし7%以上を含めた「4%以上」の増収予想は39%と前年調査(47%)よりも後退している。

冷食については横ばい予想が26%と前年(13%)から倍増、7%以上の増加予想は8%と前年(16%)から半減した。物流や人手不足の課題もあることから、18年度はやや安定成長に傾いている状況が見られる。

〈物流費増73%〉
今回のアンケートでは前回に引き続き物流コスト負担の状況と人手不足による採用難の状況についても聞いた。

物流費負担については「増えた」との回答が73%(前年64%)を占めた。増加率は2%~20%と事業者によってさまざま。前年2桁増で今回1桁という例もあり、先行きの不安は色濃い。「変わらない」は22%、「減った」も6%あったが、ともに前年を下回った。

採用難については「非常に深刻」としたのが40%で前年(19%)から急激に企業の採用環境が悪化したことがわかる。「多少困っている」を合わせると採用難を感じているのは90%となった。

両課題に対して具体的対策をとっていると回答したのは68%で前年より6ポイント増加した。具体的には物流に関して「効率的な配送コースへの見直し」「配送頻度の調整」「拠点集約などによる物量集中」「配送ロットの取りまとめ(見直し)」「在庫回転率向上」――、人材確保の対策として「求人先の間口拡大」「中途採用の促進」「通年の採用活動」「人材派遣の活用」――などが挙がった。「求人広告を掲載したが、あまり効果がない」との意見もあった。

物流費の負担と採用難の状況

〈冷食市場予想〉「冷食市場は拡大」88%、「卸売に働き方改革のしわ寄せ」
アンケートでは冷食業界の18年度成長予想と課題についても聞いた。

成長予想で冷食業界の成長を予想したのは全体で88%となったが、前年よりも3ポイント減少した。「1~3%」の成長との回答が最も多く、有効回答48社の67%を占めた。前回調査(77%)よりも11ポイント縮小している。一方「4~6%」の予想は17%で5ポイント増加した。

マイナス成長予想は今回も1社と少なかった。業界の課題について自由回答を見ると、メーカーに対する「類似商品が多すぎる」という意見はすっかり影をひそめた。一方で「類似商品の選別」は引き続き充当施策に挙がっている。

商品開発に対しては「人手不足に対応した簡便高品質商品、高付加価値商品の開発」を求める意見が引き続きあった。前年は「食品表示法の改正」や「労働時間短縮のための納品時間の指定」などによる「しわ寄せが問屋に課せられている」――との訴えもあった。今年も同様に「働き方改革のしわ寄せが問屋に来ている。時間指定や賞味期限の記載など本来納品先の現場でやるべきことが、現場の合理化の名目のもと問屋に求められる」との意見が見られた。また物流面の課題を指摘する意見も複数見られた。

〈冷食日報 2018年2月20日付より〉

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