水産加工品生産工程の見える化実証実験、生産効率の向上に効果

〈実装できる仕組みの実現目指す〉
極洋とNECソリューションイノベータ、東北大学大学院工学研究科情報知能システム(IIS)研究センター、傘下の極洋食品――の4者は2月13日、共同で実施した水産加工品の生産工程の見える化に関する実証実験について、生産効率の向上につながる効果を得たと発表した。水産加工業における技術継承や人手不足の課題を、情報通信技術によって克服しようとする取り組みだ。

実証実験の背景には水産加工業が技術継承や人手不足の課題に直面している状況がある。これまで水産加工品の生産工程では、熟練技術者の目視による品質チェックが一般的だったが、技術者の高齢化と水産加工業従事者の減少によって、技術継承と人手不足が大きな課題となることが予測されている。特に東北地域では東日本大震災以降、課題が顕著になり、1級品と2級品の判別において従来の精度とスピードを維持できなくなる懸念が差し迫っている。

また多くの水産加工品の生産現場では、生産工程が”見える化”されていないため、1級品と2級品が発生する原因をとらえられず、歩留まり率の向上に課題を抱えている。そこで4者は共同で、持続可能な水産加工業の実現に向けて、ICTを活用して簡易に実装できる、水産加工品の生産工程の見える化技術の開発を目指して実証実験を行った。

実証実験は極洋食品塩釜工場(宮城県塩竃市)で2017年8月~11月に行った。エビフリッター、コロッケ、フライを対象として、生産ラインにカメラを設置。下ごしらえと揚げ調理の各工程についてAI画像診断による生産個数の計測精度や2級品の検出精度を測った。さらに2級品の発生パターン分析を行い、原因究明を図った。

その結果、エビフリッターについて調理工程における生産個数の計測では99%の精度を、生産ライン(下ごしらえ・調理)では平均画像解析速度0.05秒以内での2級品検出を、それぞれ実現した。また一部の水産加工品については、調理と2級品発生原因との関連についてその可能性を確認したとしている。

極洋など4者はこの成果を活かして生産工程に実装できる仕組みの実現を目指す。また「マシンインテリジェンス研究会」(会長=東北大大学院情報科学研究科青木孝文教授)と連携し、VRやロボティクスなど最新技術を活用し、生産現場のさらなる効率改善や熟練者の技術の承継、生産工程の省人化に向け、今後も共創を推進するとしている。

〈食品産業新聞 2018年2月26日付より〉