総務省の家計調査によれば、家計の消費支出に占める食料費の割合、いわゆるエンゲル係数はこのところ上昇傾向にある。二人以上の世帯におけるエンゲル係数が2016年は25.8%と、1987年以来29年ぶりの高水準となったことも話題となった。2017年は若干下がって25.7%だったが、依然として高水準にある。総務省統計局のWEBサイトにおいても「一般にエンゲル係数が低いほど生活水準が高いとされています」としており、これをもって日本国民全体としての貧困化や二極化を語るむきもある。

ただ、家計調査の結果をもってそれを論じることには、いくつかの問題がある。一昨年末、ある大手卸のトップに取材した際、2016年の消費状況について「個人消費の伸び悩みという言葉をしばしば聞くが、数字と実態はずれている感じがする。家計調査の結果も、世帯人数との兼ね合いがあり、実態を捉えるのが今は難しくなっている」という話をしていた。

実際、家計調査における一世帯当たりの世帯人員は2000年に3.31人だったところ、10年前の2008年は3.13人、2016年は初めて3人を切る2.99人、2017年は2.98人と目に見えて減少傾向にある。エンゲル係数は比率なので、世帯人員数の影響は直接には受けないが、消費支出や食料費の「金額」で比較した際には影響は当然大きいし、統計的裏付けを取るのは難しいが、食料品の場合、一般論として人数が減った分容量が減れば割高となるということは言えそうだ。

次に挙げられるのは、より加工度の高い食料品の比率が高まっていることの影響だ。「有職女性の増加や世帯人員減少といった社会背景の変化に伴う簡便ニーズの増加、“料理を作らない化"の進行」といった言葉は、食品業界においては既に決まり文句となっている。食品メーカー幹部は「これからの高齢化、人口減の中で、国内の“胃袋"が縮小することは明らかだが、そうした中でも加工度を高め付加価値のある商品を投入し、収益を確保したい」と語る。

家計調査の統計数値上でもこうした傾向は表れている。食料費に占める「調理食品」支出の割合は、2000年に10.8%だったところ、10年前の2008年に11.5%、2017年は13.2%と上昇傾向が続いている。ならば「外食」支出の割合も向上しているかといえば、2000年に16.7%、2008年に17.0%、2017年は16.3%と横ばいから微減傾向なので少し悩ましいところではあるが、全体として言えば調理を外部化した加工度の高い=価格の高い食品への支出が高まっている。

そして最後に挙げたいのは、食に関する「コト消費」の高まりである。たとえば、2017年における月ごとのエンゲル係数を見ると、年間の平均が前述の通り25.7%であるのに対して、クリスマスや大晦日等イベントがある12月が28.0%など、イベントや長期休暇がある月が高くなっている。10年前の2008年は、年間の平均が23.2%であるのに対して、12月は25.1%だった。エンゲル係数全体が上がっている中でも、12月の食料費が2017年は年間平均の2.3ポイント増、2008年は1.9ポイント増と、2017年の方が突出しているのが分かる。ちょっとこれだけでは強引な気もするが、記者個人の肌感覚としても、イベントでの「プチ贅沢」のような、「コト消費」での食料費の増加は感じる。

メーカー、流通がこうした消費を盛り上げようと努力している成果とも言えるだろうが、消費者の側でも「インスタ映え」に代表されるような気持ちの変化が見られる。こうした点を踏まえると、今後もエンゲル係数は緩やかに上昇するのではないかと思えるのである。

〈冷食日報 2018年3月26日付より〉