コープ食品・東北工場見学〈下〉 手間ひまをかけ“厨房の肩代わり”、長年の調理・抽出技術で冷凍「オマールソースベース」製造

「オマールソースベース」製造工程
キユーピーグループのコープ食品東北工場(福島市)は、外食や中食といった業務用市場に向け調理・素材・デザートの3カテゴリーを製造する。うち40年以上続く調理・抽出技術を生かし製造するのが「オマールソースベース」(冷凍)で、“厨房の肩代わり”を標榜し、「手間ひま」かけた「料理ソース」を創造する。一方、農産加工・缶詰製造から伝承してきたフルーツ加工技術を集結させ開発したのは「ごろっと果実」(冷凍)で、飲食店のスイーツメニューの価値観アップと売れる高単価メニューへと繋がっている。

キユーピーはこのほど、本紙など食品関連の専門紙記者を招き、コープ食品東北工場の見学会を実施した。前回の素材豆に続き、今号では、調理ソースとデザートの製造工程と販売施策を詳報する。

〈前回の記事〉コープ食品・東北工場〈上〉 業務用素材豆シェアは5割、調理・素材・デザートの3カテゴリーを手掛ける

調理ソースは、「オマールソースベース」の調理・抽出工程を見学した。同社の調理ソース・スープの強みは〈1〉40年以上続く調理・抽出技術、〈2〉積極的なPB開発、〈3〉開発から原料調達・生産の一貫体制の3点。

このうち〈1〉では、シェフが手間をかけて作りあげる工程を工場の作業にスケールアップさせ、手間を惜しまず、再現にこだわり本物のおいしさを追求している。

〈2〉〈3〉では、ホテル向け缶詰商品を長年受託してきた開発力・提案力を強みに、外食チェーンが採用するコーンスープを筆頭に、年々受託先を拡大している。15年に発売の「オマールソースベース」の原料には、春漁で漁獲される脱皮前のカナダ産のオマール海老の頭部を使用。現地で同社専用に加工したオマール海老の頭部を玉ねぎなどの原料とともに30分間しっかりと炒め、うま味と香りを引き出す。白ワインやトマトペーストなどを加え、臭みをとった後、タラからとった自社製の魚だし「フュメ・ド・ポワソン」を加えて魚のうま味を加える。45分間かけて丁寧にアクをとり、濾して、なめらかでうま味・香りのあるソースに仕上げるという。同商品の拡販に当たってはスープだけでなく、海鮮だし万能調味料として使用する提案を実施。オマール海老の華やかで濃厚なうま味とコクを活かし、和食やラーメンへの利用を促す。また社内外でソース勉強会を定期的に実施し、自分の言葉で語れる「人材の育成」にも注力している。

〈「ごろっと果実」でスイーツメニューの価値向上へ〉
一方、デザートは具材ソース「ごろっと果実 いちごのソース」の選別・充填工程を見学した。

「ごろっと果実 いちごのソース」

「ごろっと果実 いちごのソース」

12年に発売の「ごろっと果実」は缶詰、IQF(個別急速冷凍)、生原料の各利点を取り入れ、農産加工・缶詰製造から伝承してきたフルーツ加工技術を結集し開発した新しい冷凍フルーツソース。果肉の存在感、生のフルーツのようなフレッシュ感、ソースとフルーツの一体感が、スイーツメニューの価値観アップ、売れる“高単価メニュー”につながるとして大手ファストフードチェーンに採用されるなど発売以来、売上高は年々伸長している。

「ごろっと果実 いちごのソース」に使用するいちごの選別工程では、3cmほどの大きさの果実を具材用に、3cmより大きい果実をソース用に大きさによって選別。固形部分と液体部分を分けて製造しており、基準値より糖度の低い果実は、液糖に漬ける。糖度によって管理している。充填後、100℃以下の低温殺菌を実施。低温で殺菌することで、果実の色や風味、香りを残すことができるという。トンネルフリーザーを導入しており、製造直後の凍結が可能。なお見学した「いちご」は冷凍原料だが、「りんご」や今秋発売した「洋なし」は東北産の生原料を使用している。拡販に当たっては秋冬が旬のフルーツである「洋なし」の追加により、年間を通して使用できるシリーズとして導入アップを狙う意向だ。

〈冷食日報 2018年10月24日付より〉