18年の国内冷食生産量は微増の160~161万t見通し、自然災害が影響/冷食協

日本冷凍食品協会・伊藤滋会長
〈「冷食の特性を活かし、身近な食品としてニーズに対応」/伊藤滋会長〉
日本冷凍食品協会(冷食協)の伊藤滋会長(マルハニチロ社長)は12日、本紙「冷食日報」など専門紙10社が加盟する冷凍食品記者クラブに対して年末記者会見を開いた。その中で18年の国内冷凍食品生産量について、前年比100~101%の微増で160~161万t になるとの見通しを示した。家庭用は全体として堅調だったが、豪雨や台風、大型地震など自然災害が多発した影響で業務用の市場がやや停滞したと見る。今年の国内景気動向について「特に7~9月のGDPは年率2.5%減と大幅に落ち込んだ」として自然災害の影響の大きさを指摘した。冷食業界にとっても「冷凍食品工場への直接的被害はほとんどなかったが、北海道では停電の影響が大きく受けたところもあり、原料調達や需要面には影響が出た」。

今年の冷食市場について「家庭用は各メーカーで売上げの差が出たが、各社主要商品の開発や積極的なメディア露出が行われており、全体としては前年をやや上回る。業務用は惣菜など中食が引き続き堅調だが、外食は天候影響や北海道でインバウンド・観光客の減少もありやや苦戦し、業務用全体としては弱い動きとなった」と予想した。家庭用は2~3%の増加、業務用は前年割れと見る。

ただし「今後も少子高齢化、女性の社会進出、単身2人世帯の増加――と社会構造の変化、人手不足の深刻化があり、家庭用・業務用とも冷食需要の拡大機会は増えていく」として、一過性の停滞との見方を示した。

コスト上昇の現状について「輸入農畜産原料では小麦がやや高値推移した以外、総じて国際相場は落ち着いた動きとなったものの、円安傾向で推移したため輸入品はコスト増となった。国内は近年、米の価格が高止まりしている。天候不良による北海道の野菜の不作、一部水産物は不漁が続き全体として原料コストは上昇している」「物流費も大幅上昇している。ドライバー不足が深刻化し、我々にとって大きな課題となってくるだろう」と指摘。

これに対して一部メーカーは業務用冷凍食品を中心に価格改定を公表した。「今の状況が続けば、他でも価格改定が必要な環境となっていくと考えている」との見通しを述べた。他方、家庭用についても多くのメーカーの業績が減益となっている状況もあり、価格転嫁が必要となってくる可能性があるとした。

冷食企業にとっても人手不足は深刻な問題だ。「一部ではAIやロボット活用で製造工程を見直し、省人化を進めているが、冷食製造は完全な装置産業ではなく一部に労働集約的な工程が必要」としたうえ、どこまで自動化できるかについて「半分出来るかと言えば難しい、2~3割に部分は10年以内に(自動化)が進んでいく」との見解を示した。

その人手がかかる部分の価値を認めてほしいとの思いも漏らしている。

新たな外国人材受け入れ制度については「対象の14業種として飲食料品製造業も入る見込み」と期待を込めた。特に受入れの環境作りが重要だとして「住居や福利厚生について会員に助言できる準備をしたい」と述べた。

協会として積極的に関与してきたフロンから自然冷媒への転換を図るための環境省補助事業については、平成29年度補正予算に続き30年度予算でも冷蔵倉庫に加えて製造機械も対象となった。「来年度予算でも増額を要請しているところだ」として、自然冷媒への転換をさらに進めていきたいと述べた。

今後の冷食の役割について「冷凍食品は(社会構造やライフスタイルの変化など)消費者の変化に合わせた商品を提供できる優れた特性をもつ。特に時間をコントロールできる食品だ。おいしさはもちろん、栄養が保持され保存性、簡便性に長けていることを訴求するとともに、調理の多様性、商品領域の拡大性――といった特性を活かして身近な食品として家庭用・業務用のそれぞれのニーズに対応するよう取り組んでいきたい」と述べた。

関連して、炒飯やから揚げなど既存カテゴリーの拡大が牽引している家庭用市場については「新しい分野に取り組んでいく必要がある」と強調した。既存品のリニューアルのレベルも上げるべきと指摘。冷食を利用していない20%の層があることから、「こんな物ができるのか」と認められる商品開発としていかなければならないと述べた。

〈冷食日報 2018年12月13日付より〉