冷凍パン市場が堅調な伸びを見せている。ベーカリーショップは減少傾向にあるものの、慢性的な人手不足から、店舗内で粉から手づくりする“スクラッチ製法”を、一部、冷凍パン生地や焼成済み・半焼成済み冷凍パンに置き換える事業者が増えている。

業務用冷凍パン生地市場は17年度、1,300億円強と前年比2~3%拡大しているのに対して、焼成済み・半焼成済み冷凍パンは270億円強と、規模は小さいものの、前年比7%強伸びている。背景には小規模製パン企業や街のパン屋の廃業もあるが、今後国際イベントを控えてさらに拡大が予想されるインバウンド需要に対して、受け皿となるホテルや外食業態では特に焼成済み・半焼成製品が伸びると予想される。以下に各社の動向をまとめた。
 
〈外販向けは拡大続く 家庭用にもチャレンジ/山崎製パン〉

山崎製パンの冷凍パン生地事業の今期の動きは、外販向けが拡大し、前年同期比微増で推移している。「外販向けの拡大は続いており、自社業態向けと半々に近いところまできた」。また、これまでは冷凍生地を中心に事業を進めてきたが、家庭用への焼成済み冷凍パンの投入、細分化した外販向けのニーズへの対応など裾野を広げていく考えだ。

家庭用では今期、焼成済み冷凍のハード系のパンを市場に投入した。ミニタイプのフランスパンなど、業務用で引き合いのある本格的なパンを発売。オーブンでリベイクするタイプの商品だ。「当初は自然解凍してからオーブンで焼くという商品設計を考えていたが、冷凍状態から焼く方が、生地に水分が残り美味しくなることが分かった」。来期は子どもや高齢者にも食べやすい柔らかいパンの投入を計画する。
 
〈カフェ業態に加え、ホテルなどへ販路拡大を目指す/JCコムサ〉
ジェーシー・コムサの冷凍パン事業ではナン、トルティーヤ、フォカッチャ、ピタパンといったエスニックブレッドおよび、マンティンガ社(リトアニア)の輸入冷凍焼成パンを、業務用ルート中心に展開している。ピザを含む冷凍事業の17年度売上高が45億円ほどのうち、冷凍パン事業は約29億円の売上をあげた。今年度ここまで(4~11月)の売上高は5~6%増と好調に推移している。

2013年度からパートナー企業として販売に取り組む、バルト3国最大規模の製パンメーカー・マンティンガ社(リトアニア)の焼成パンの17年度売上高は、2ケタ増の1億円強だった。マンティンガ社の製品は完全に焼き切らない「半焼成」の状態で冷凍しており、オーブンで焼いて仕上げるだけで、外はパリッと、中はふんわりソフトな焼き立てパンを提供できるのが特長。

ジェーシー・コムサでは、これまで取り扱ってきた「バゲット ガーリックバター」に加え、18年12月から「ミニフレンチロール」「バター入りハーフバゲット」をラインアップに追加。さらに、近いうちに400~500gの高品質大型パンを導入予定で、これまでのカフェ業態などに加え、ホテルなどへの販路拡大を目指す。
「バター入りハーフバゲット」(ジェーシー・コムサ)

「バター入りハーフバゲット」(ジェーシー・コムサ)

〈居酒屋向けなどにユーザーのすそ野拡大、食パンも伸長/テーブルマーク〉
テーブルマークの18年度(1~12月期)の冷凍パン売上高は、大手需要家のPB(プライベートブランド)製品の苦戦がマイナス要因となり、前年を若干下回る着地の見通し。ただし、売上の6割強を占めている自社ブランド製品は1桁前半の伸びと堅調だ。
 
家庭用の市場は広がっていないが、業務用はホテル、喫茶、レストランと各チャネルで利用が拡大している。「これまで店舗で焼いていたものを焼成済み冷凍パンに置き換えられている状況がある」(有井幹夫ベーカリーカテゴリマネージャー)。
 
ユーザーのすそ野も広がっている。「居酒屋でバゲットを使ったメニューが広がったが、冷凍パンだからこそメニュー化が実現した」。大量に注文はないが、一定の需要があるメニューに利用されているケースが多い。冷凍食パンも伸長している分野。大型の「三斤棒」など好みの厚さに切って使える商品の需要も高まっている。

冷凍パン ラインアップイメージ(テーブルマーク)

冷凍パン ラインアップイメージ(テーブルマーク)

〈輸入パン再開で回復基調、国内メーカーとの取り組み拡大/日本生活協同組合連合会〉
日本生活協同組合連合会(日本生協連)のコープブランド冷凍パンの17年度供給高(会員生協への卸金額)は前年比19%増、18年度は11月までで82%増とさらに伸長している。
 
主力の輸入パンの終売によって16年8月から1年間、売上げは落ち込んだが、リトアニアのマンティンガ社との取り組みを開始したことで回復基調にある。今後、幅広いニーズに応えるため、取り組みメーカーを広げて商品数の拡充を図る考えだ。
 
コープブランドの冷凍パンは現在6品目。商品本部冷凍食品部・長門哲也部長は「トレンドに変化がある菓子パン類よりは、1つの商品を長く売っていくという意味で朝食に食べる食事パンが強みの出るジャンル」と話す。来春に向けて食事パンの新商品も検討中だ。
 
生協のパンは常温(日配)・ロングライフ・チルド・冷凍――の4カテゴリーで構成する。週1回という配達と消費期限の短さから生じる常温パンのチャンスロスを埋めるのが、ロングライフの菓子パンと食事パンを中心とした冷凍パンだ。店舗と違い、生協の宅配ではカタログ紙面で商品特性を伝えやすいことから、一般に馴染みの薄い冷凍パンの販路として適している。特にレンジ調理など短時間で手軽な、焼成後冷凍パンのカタログ配置を増やしている。
 
「冷凍パンの取扱いは10年余りと歴史が浅いので、強化していきたい」(日本生協連)。現在、製造委託先は2社だが、他の国内メーカーにも取り組みの幅を広げる方針だ。

「マンティンガ」ブランドの「ミニフレンチロール」(日本生活協同組合連合会)

「マンティンガ」ブランドの「ミニフレンチロール」(日本生活協同組合連合会)