冷食協、消費者団体と意見交換 HACCP手引書に厳格基準の必要性訴える

日本冷凍食品協会(冷食協)は18日、都内で消費者団体との意見交換会を開いた。協会側から業界にかかわる法制度として、新たな外国人材受け入れ制度とHACCP の制度化への対応についての説明があった。その中で、HACCP の手引書の作成の経緯、新在留資格制度の技能試験実施機関に同協会が加入したことなどが説明された。

この意見交換会は中国・天洋食品事件をきっかけに始まり定例化している。今回で11回目となる。

HACCP 義務化にあたって同協会では「HACCPに基づく衛生管理」(いわゆるA基準)の手引書を作成して公表した。全国消費者団体連絡会の浦郷由季事務局長から「(HACCP の考え方を取り入れた衛生管理、いわゆるB基準がない点で)ハードルが高くならないか」と懸念する一方で「会員でない企業をサポートできれば会員の拡大にもつながると思う」との意見が出た。

手引書は冷食協が運用する認定制度をもとに作成したが、十数人規模の小規模工場でも適切に運用できている実態があり、他方で冷食は賞味期限が長く、全国流通するというリスク特性があることから、A基準にこだわった経緯がある。なお今後のB基準の手引書作成については、協会としては消極的な姿勢を示している。

尾辻昭秀常務理事は中小企業の対応の難易度について「保健所の施設基準を満たしていれば、特に設備投資が必要というものではなく、一般的衛生管理ができていれば、あとは危害要因分析とHACCP プランの作成について適切なサポートがあれば難しくない」と述べた。一方で「非会員からの反応は鈍い。(18年6月13日公布から2年以内の施行だが、本格導入に向けて経過措置期間として)プラス1年となったため、切迫していない。今年から来年にかけて自分の問題として考えられるようになれば、サポートしていきたい」と話した。サポートを契機に入会につなげていく考えだ。

冷食協では会員を対象にした講習会のほか、会員外にも公開する「衛生管理計画作成講習会」を開く。4月16、17日に東京で、5月30、31日に大阪で開催する。

外国人材受け入れについて、環境部会の安居之雅部会長は「以前は外国人は1~2か国程度のものだったが、今は工場に7~8か国の方がいる。正直、いろいろな仕組みが追い付いていない部分がある。一方で工場で待ったなしに進めているのは自動化だ。複雑な仕事を教えることになると時間もかかり、間違えも増える。できるだけ仕事を標準化しわかりやすくすること、同時に機械、AIを導入することで、単純化しつつ付加価値を上げる仕事を目指している。これは現在の労働者不足、外国人労働者の受け入れとセットだと思っている」と話した。

消費者団体からは外国人材の受け入れ先の対応を懸念する意見も出たが、一般論として協会ではフルタイムの直接雇用が原則であり、問題企業は特定技能資格者の受け入れができなくなることを指摘し、格上げされる出入国在留管理庁(入管庁)が厳格に対応するだろう、と見通しを述べた。
 
〈技能試験実施機関に協会も加入〉

冷凍食品製造に関しては現行の外国人技能実習制度では「惣菜製造業」や「加熱性水産加工食品製造業」として受け入れを行っている。そのため多様な品目や調理形態を持つ冷凍食品の工場にとって制約も多かった。

これに対して新たな在留資格制度では対象業種が「飲食料品製造業」とされている。技能試験を行う外国人食品産業技能評価機構(冷食協も加入している)は今年2月に設立され、飲食料品製造業は今年10月から、国内外で年10回程度の試験を実施する予定だが、具体的な運用事項は今後決定されるという。

出席者は主婦連合会の有田芳子会長と柿本章子副会長、消費者市民社会をつくる会(ASCON)の阿南久・理事長、全国消費者団体連絡会(消団連)の浦郷由季事務局長、全国地域婦人団体連絡協議会(全地婦連)事務局の高橋ひろみ氏、東京消費者団体連絡センター(東セン)の小浦道子事務局長と事務局の池田京子氏、日本消費者協会(日消協)田中大輔教育啓発部長と黒木美紀経理主任、フードコミュニケーションコンパス(FOOCOM)のアドバイザリーボードの構成員を務める瀬古博子氏――の7団体10人。

〈冷食日報 2019年2月21日付〉