大冷 豊富な商品群とスピード活かす、人手不足対応に注力/冨田史好新社長

大冷「フィッシュ・デリ 骨なしさばのきんぴら風」(9月1日発売)
大冷は9月3日、冨田史好新社長の社長就任あいさつとなる業界紙記者会見を東京・月島の本社で行った。冨田氏は6月18日の取締役会において代表取締役社長に就任し、齋藤修前社長は取締役会長に就任している。

はじめに就任の抱負として「当社は業務用冷凍食品を扱って今期49期となる。私が5代目の社長となり、前齋藤社長から16年ぶりの交代となった。当社は設備のないファブレスメーカーであり、本社と従業員を抱えて走っている。商品も5円10円~マックス100円まで扱う企業として今後も業務用に特化しながら地道に1つ1つ努めていきたい。3年前から特販に力を入れているが、業務用中心に冷食で頑張っていく」とあいさつし、各記者の質問に対し概容次のように回答した。

〈冨田社長「業務用に特化し地道に」「本当の必需品を開拓していく」〉
骨なし魚事業はパイオニアだが、出して約20年になるが、市場は伸びているのに当社の売上げは伸びていない。今後も中核としていろんな商品を開発し品揃えを増やしていくが、魚種を更に増やしていく気はない。お客様の要望に合ったものを開発していきたい。

この間、仕入れ先や問屋等のお客様にあいさつ回りをしているが、大冷に期待されていることを知り、協力工場を大切にしていかねばと感じた。できる限り顔と顔をつないでいきたい。仕入先からの売上げを伸ばしてという声にも応え、今回は他社とは違った新商品等を自社制作カタログに入れた。野菜を入れた調理品を出すなど、世の中の流れに沿った商品を提案しており、今後は季節性のある商品も入れていく。当社への要望では魚商品が圧倒的に多い。しかし高齢社会となり他社も多く参入している。需給バランスから競争していくのは自明の理であり厳しい。当社は売上高270億円規模で、参入してくる企業は自分の船を持っているような大きな企業。奇をてらったような商品ではなく、ニーズを拾って更なる商品化を成功させていくには私どもが問屋・ユーザー・喫食者にまで下りて本当の必需品を開拓していかねばならない。私は入社8年目だが、今問題になっている人材確保・働き方改革・法令順守等については、当社は順当にいっていると考えている。

国内マーケットの成熟化により海外進出を図る企業の話もよく聞くが、ベトナムでの事業提携等を進めていく気はあるが、ニーズがあるかどうか、現地は何を求めているかなど様々あって簡単には図れない。特に中国については高齢化が進むが、ルートの問題や中国国内メーカーの動きもあって事業計画の予定はない。

東京五輪以降のマーケットの動向については、当社は大半が問屋経由なので、その先の流れが掴みにくい。直販部隊だけは直接ユーザー向けにやっているが、それ以外は動きが分かりにくい。外食でも軽減税率問題もあり、ニーズ・要望・変化を的確に掴むことは困難だ。

当社はかつて自社工場を持ってある意味失敗している。維持発展が難しいとファブレスメーカーに転じ上場も行った。今後も売上げは嵩上げせずに実のある売上げを伸ばしていきたい。介護食や施設向け商品では、自然解凍品や完調品などニーズはあっても、売れたら直ぐに真似される業界であり、価格競争を打破できる商品開発は難しい。お客様の欲しがるもの、食材を提供していくのが当社の役目だが、商材を地道に売る中でヒット商品を作っていきたい。当社の強みは、豊富な商品群とスピード。その中で大きな目標額としての300億円はあるが、売上げ数字はあまり追いかけずに常に達成できるものに挑戦していく。

「骨取り魚」商品は一部やっているが、マーケットとして骨なし魚との区別がつきにくかったのか伸びが鈍い。やはり当社は骨なし魚が強い。日本は安全に対する意識も高い。今後も独自のトレサビはきちんと維持していく。

楽らく柔らかシリーズは魚種を増やすより切り替えていく考えもある。味の改善も必要であり、全体として増やそうとする考えはない。冷凍野菜は拡大の余地はあるが群雄割拠状態であり、あらゆるジャンルにとらわれずにいろいろ開発をしていきたい。

骨なし魚を下支えしながら、バリエーションとしては骨なし魚もミート事業部商品も含めて、人手不足に対応した商品、自然解凍品や柔らかシリーズなど、当面はその方向に力を入れたいと考えている。

〈冷食日報 2019年9月4日付〉