日本水産 2019年度前期は4%増の好調、惣菜など伸長、キット商品拡売目指す/中野博史家庭用食品部長インタビュー

日本水産・中野博史家庭用食品部長
――2019年度の家庭用冷凍食品事業の総括を

トータルで前年比4%増。調理冷食は4%増、農産品は9%増だった。 惣菜や米飯、麺などの食卓メニューを中心に伸長した。惣菜(前年比25%増)では、若鶏の竜田揚げを中心に2桁以上の伸びに加え、新規の中華キット商品が上乗せとなった。

米飯(同8%増)では、「大きな大きな焼きおにぎり」30周年を機に「おにぎりを、もっと家族の食卓へ。」をテーマに展開した結果、同品は堅調に推移し、その上朝食シーンや女性にターゲットを絞った新しいおにぎりの新商品として「もち麦シリーズ」が加わり2桁近く伸ばすことができた。

具つき麺(同3%増)も「わが家の麺自慢ちゃんぽん」30周年キャンペーンの翌年のため反動を心配したが、具つき麺の良さが再認識されたことで堅調に推移し前年並みで着地した。また、汁なし麺の「同 皿うどん」は、主婦の簡便ニーズの高まりにより配荷が増え、2桁伸長となった。

一方、お弁当カテゴリー(同2%減)は、主力品は昨年並みに推移するも新商品での上乗せが出来ず前年割れとなってしまった。

重点施策として、食卓メニューの拡充による夕食での冷凍食品の利用促進に取組んだが、まだまだ期待する結果には至っていない。しかし、売場構成も徐々に変化して、「おかず」としての商品が広がっており、今後も継続して取り組んで行く。

――2019年秋および2020年春新商品のここまでの動き

2019年秋・2020春も素材と調味をセットにした商品のメニュー拡充に取り組んでいる。利用者からは様々なご意見をもらっており、少しずつだが認知獲得の手ごたえを感じているものの、まだまだ商品力を向上させる必要がある。今後も継続して取組みたい。

昨春発売した「もち麦おにぎり」シリーズに加えて今春からは「金芽米」シリーズも投入。これらの商品は、コロナ禍による家庭内喫食機会の増加もあり、順調に売上が伸長している。

――コロナ禍を受けた足元の家庭用冷食を巡る市場環境

3月以降は、米飯・麺・惣菜に加えてスナック類・農産品が非常に高い実績となった。トータルすると市場全体と同じくらい伸張し、30%増以上の伸張を示す時期もあったが、5月以降はかなり鎮静化してきている。

ただ、お弁当カテゴリーは、学校の休校・在宅勤務により落込みが大きく、前年比90%程度となっており深刻な状況だ。

生産面では、幸いにして弊社では罹患者の発生はなく、各工場ともに通常通りの生産体制が継続しているが、大きく落ち込んだお弁当カテゴリーの商品を生産している工場はライン余力がある状況にある。

また、世間一般と同様に、一時的にマスクの手配を心配したが、中国企業の協力もあり問題なく手配できている。原材料などに関しても問題なく通常通り手配できている。

――市場の課題、個人的ご意見なども含めて

現在の冷凍食品購入率はまだ50%以下で、特に若い方の購入が低くなっている。今後の市場拡大には、今まだ冷凍食品をご利用頂いていないお客様にどのようにして手に取って頂くか、どのような売場に変化しなければいけないかを考え、提案していかなければ拡大は望めないと考えており、この部分へのアプローチを意識したいと考えている。

――2020年度の家庭用冷食での重点施策

冷凍食品の食卓利用率を上げていくための商品開発、活動を実施したい。新商品では、トレー付きで具材が全部入った中華キット商品を発売し、惣菜カテの冷食の新しい形を提案した。また、利用シーンを想起させるエリアCMを首都圏で投入している。

市場ポテンシャルの高い鶏から揚げカテゴリーでは、「今日のおかず若鶏の竜田揚げ」が配荷を拡大し、堅調に推移している。

店頭では、昨年秋には店頭ディスプレイコンテストを実施し、おにぎり・惣菜類のエンド獲得、展開により露出拡大に取組んだ。ディスプレイコンテストは、テーマ別の販促、店頭での商品の見せ方の工夫などにより消費者への露出を高め、販売促進に大きくつながったと考えているものの、今年はコロナ禍の影響もあり同様の取組みは簡単にはできず、店頭活動の打ち手を模索している。中長期的にみても、冷凍食品の利用者拡大に取組み、売上の伸張を図りたいと考えている。

〈冷食日報2020年6月25日付〉