家庭用冷食市場は5年連続で過去最高を更新、社会の大きな変化に対応した商品・使い方を提案/宮川浩幸家庭用事業部長インタビュー

ニチレイフーズ・宮川浩幸家庭用事業部長
――2019年度の家庭用事業について

2019年度の家庭用冷凍食品マーケットは前年比7%増と好調が続いた。5年連続で過去最高を更新したことになり、喜ばしいことだ。当社としても市場同様の伸び(ニチレイの家庭用調理品の売上高は648億円、前期比7.5%増)となり、増収・増益を記録できた。戦略カテゴリーの中でも米飯とチキンが牽引した。

米飯は「本格炒め炒飯」「五目炒飯」をはじめとして2桁以上の伸び。チキンも「特から」が2桁以上伸び、加えておかずとしてもおつまみとしても使える「手羽から」などの新しい商品群も、売上げに貢献した。コロナの影響もあり、家飲みが増えている。新たな利用者も増えていると思う。

一方で弁当は厳しかった。おかず商品を弁当に利用する傾向が一部影響しているが、売り場提案やプロモーションに取り組んでいくことは必要だ。当社としては新商品を継続的に発売し、キャンペーンやプロモーションも継続してきたところだ。家庭用冷食市場の3割弱を占めるカテゴリーとしてテコ入れしていく。

新商品については2019年度は春に10品、秋に15品とこれまでにない数を投入した。消費増税による需要の落ち込みを意識した施策だ。期中発売した「たいめいけんドライカレー」や「まぁるい焼」シリーズもあった。後者では米飯の個食需要を新たに取り込めたと思う。

――コロナ禍の影響は

休校要請や緊急事態宣言などの後は大きく需要が動いた。3月・4月の市場は120%超えの状況だが、お客様の要望はそれを大きく上回っていた。メーカーとして供給責任があるため、当社も特に米飯で数品の休売・終売を決めて、主力商品に生産を集中した。工場の稼働時間延長や休業予定を稼働日に変更するなど、人手の確保や安全性を確保しながら増産に取り組んだ。

米飯専用の船橋工場では既存の生産ラインを統廃合することで、炒飯・ピラフ類の生産能力を増強する。4月に入って着手している。外出自粛や休校、在宅勤務による巣ごもり需要で、今まで冷食を使たことのない人が新たに利用したり、以前使っていた人がもう一度売り場に帰ってきている状況がある。また家庭内で昼食をとる割合が大幅に増加しており、昼に冷食を使う機会も増えているだろう。

新しいお客様が入ってきているなか、今の品ぞろえだけで満足を提供しきれているのかどうか、単品あるいはメニューとしてもっと選択肢を提供していく必要がある。社会の大きな変化に対応する商品、使い方を提案していきたい。新たな食肉商材カテゴリーを育成

――2020年度の計画は

コロナ禍の影響で、家庭内での食事の比率が高まり、家庭用冷食マーケットは好調に推移している。ただし、コロナ影響がなかったとしても、市場は成長を続けると見ていた。

2020年度の家庭用事業では売上高で10%増(ニチレイの家庭用調理品として715億円)を計画している。ここにコロナ影響は織り込んでいない。事業環境は変化しているが、商品、プロモーション、販売、生産を連動させて、コロナの影響の仕方も見極めながら、計画を達成したい。

「力強いカテゴリー政策の推進」と「新規需要創造への挑戦」の2つの方針は2020年度も踏襲していく。

新規需要創造としては新たな食肉商材を、現在の戦略カテゴリーである米飯・チキン・凍菜に次ぐ分野として確立したい。チキン以外の食肉カテゴリーは食卓のおかずとしてマーケットに定着していない。大型商品を投入することでマーケットの底上げにも貢献したいと思う。

今春の新商品「極上ヒレかつ」もその一環だ。春の新商品はコロナ影響もあり、出足の3、4月は例年に比べて出荷が多かった。特に「極上ヒレかつ」はプロモーションも展開し、流通の方々にもご支持頂きしっかり実績を残すべく推移している。

3、4月は凍菜も好調だった。完成品だけでなく、料理素材として冷食が利用されるケースもこれを契機に増えていくだろう。2018年発売の「切れてる!サラダチキン」は店頭を中心に地道に啓蒙活動を行い、料理素材としての利用という新規需要にも継続して取り組んでいきたい。

営業活動は対面でできない状況が2カ月強続いている。全てがマイナス面だったわけでもないので、良い点を取り込みながら新しい営業スタイルを確立していきたい。ただし状況の変化に臨機応変にスピード感をもって対応する必要がある。

〈冷食日報2020年6月30日付〉