日本冷凍食品協会が主催する「冷食JAPAN2020」では10月7日に、在宅訪問栄養指導の第一人者である中村育子氏(慈英会病院在宅部栄養課課長)が講演を行った。

テーマは「高齢者の低栄養予防における冷凍食品の活用」。中村氏は病院に通院できない在宅高齢者のお宅を訪問して、在宅という限られた環境下でできうる食事改善を行うとともに、特に摂食・嚥下障害のある方には安全に食べられる食形態提案を行う管理栄養士である。

講演では、在宅高齢者の食事の実態や新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)が及ぼす食事への影響を説明しながら低栄養の問題を説明して、その予防に冷凍食品の活用を提案した。

中村氏は緊急事態宣言下においても、在宅高齢者に訪問栄養指導を実施した。白衣の上にガウンを着て、マスクとゴーグルをつけ、手袋が必要な場合には着用するなど感染症対策を徹底した上で、栄養指導を行った。

コロナの在宅高齢者への影響については、「買い物にいけない。買い物に行っても買い占めの影響で欲しいものが買えず、緊急事態宣言下ではイトーヨーカドーの安心サポートセンターは休止となり、介護食品の購入ができなかった。また介護保険サービスが実施されず通所サービスも受けられなかった。テレビでは連日のコロナ報道で不安感が募り、食欲不振になりやすく、不眠や体重低下も起こった」と問題点を挙げた。

その上で「このような時にはやはり賞味期限の長い食品が有用になる。例えば冷凍食品や缶詰、レトルト食品、介護食品などは、在宅高齢者の低栄養予防に重要なツールであり、在宅高齢者や地域高齢者に提案した。冷凍食品はたんぱく質の多いものやカット野菜、カットフルーツもありニーズが高い」と話し、特に冷凍の豆腐商品は「賞味期限が長く、何にでも使えて便利」と強調した。

具体例として、コロナに感染した認知症の高齢者が退院しても味覚・嗅覚障害が残り、入院時に落ちた体重も戻らないという課題に対して、グループホームで、豆腐、白玉、むき枝豆の冷凍食品を使って甘酒アイスを作り、食欲増進を図った事例を紹介した。「一緒に料理をすると食べ物の認知がされやすく、食欲につながり、残さず食べられていた」。

また、在宅高齢者に多い食事パターンは「主食のみ」「主食+1品」が多く、料理の品数が少ないことを指摘した。主菜に魚、肉、大豆製品、卵などたんぱく質を多く含む食材があまりないことや果物・野菜の摂取が少ないことからも冷凍食品をうまく活用することを提案した。「冷凍食品は1年中価格が安定していて活用方法さえわかればいろいろな料理に使える」。

8月末に非常事態宣言後初めて開催された認知症カフェでは、冷凍食品を活用したアレンジレシピを紹介した。お肉の替わりに冷凍唐揚げを使った焼きそばや、冷凍中華丼の具にゆで卵をトッピングしてたんぱく質を強化する工夫などを紹介したと話した。

なお、高齢者は電子レンジのW数を確認しないままオートで温めるのでコチコチになってしまうことが多いと述べ、「冷凍食品の表示どおり加熱する。それだけをすれば失敗しない」と提案しているそうだ。

〈冷凍弁当の使用で介護負担軽減 「同じものを食べて家族にもプラス」〉
さらに、調理ができない方に対しては冷凍弁当の利用を勧めた。「嚥下困難者には柔らかくする、小さく食べやすく切るなどの提案ができるので、冷凍弁当を使えば、家族で同じものを食べられる。形態が少し違っても、家族と被介護者が同じ物を食べていたら、話ができるので家族にもプラスになる。冷凍食品を使えば介護負担も軽減する。在宅で必要な方がいればぜひ使ってほしい」と締めた。

講演の最後に、3月上旬に女子栄養大学出版部から発刊した著書「70歳からのらくらく家ごはん」を紹介した。冷凍食品・市販食品・レトルト・缶詰を活用した簡単調理や訪問栄養指導の実際やノウハウを紹介している。仕様はB5判、96ページ。価格は本体1,000円(外税)。
女子栄養大学出版部「70歳からのらくらく家ごはん」

女子栄養大学出版部「70歳からのらくらく家ごはん」