三菱食品がコロナ対応事例ディスカッション、急速に進んだデジタル化、行き渡らない部分も

三菱食品・小谷光司SCM統括オフィス室長代行
都内で開催されたフードディストリビューション展で10月8日、「食品物流におけるコロナ対応事例」をテーマにパネルディスカッションが行われた。パネリストとして卸売業から三菱食品の小谷光司SCM統括オフィス室長代行と国分首都圏の殿村貴茂執行役員部長が登壇した。

食品スーパーの売上げ推移を振り返るとピークは4月第2週の前年比117.4%(KSP-POS)だった。これに対して卸売の状況について、三菱食品の小谷氏は「最大風速では2倍弱の物量となった」と話す。

「地区、業態によって格差があるが、加工商品系の受注が多く、特にまとめ買い需要が多い、ディスカウントスーパーや食品の取り扱いの多いドラッグストアで需要が大幅に拡大した。一方でCVS(コンビニエンスストア)チェーンは都市部を中心に需要が伸びなかった」とした。

〈欠品は一時110社、7月時点も11社で〉
爆発的な需要拡大は災害時対応に似た状況だったという。「通常、繁忙期に対しては1カ月程度前から車や人の手配を準備するが、今回は災害と同じような状況となり、関東圏の従業員は各センターに応援に回って作業を行った」。

また「人の手配に汲々としているとき、外食産業から申し出をいただき、休店のスタッフに応援してもらった」状況もあったという。

需要の拡大に対応するため、メーカーに対して大量のオーダーを発注したが、商品がそろわない状況が続いた。4月時点ではメーカー110社程度で、7月時点でも11社で欠品が生じている状況だという。「スパイスなどでは厳しい状況が続いている」と話した。

リードタイムの延長については国分首都圏の殿村貴茂執行役員と同意見としつつ、「卸としてはメーカーのつくった商品を荷受けして届けるということになる。荷受けをするということを考えると互いに負担を分け合いながら合理化を進めていくこと、小売業にも個別になると思うが状況を理解していただく取り組みをしていきたい」と話した。

小売業との協調についてさらに次のように述べた。「コロナ禍によってできることの限界が顕在化した。今までサービスレベルを下げるようなお願いをできる環境にはなかったが、今回は一部で店着時間を半日ずらせてもらう対策も取らせてもらった。現在は元に戻りつつあるが、製配販の話し合いを行うことができる環境が少し整ったかと思う」。

なおリードタイム問題については、製・配・販連携協議会でリードタイムの延長と併せて次の5つの取り組みを推進すべきとの方向性を示している。
〈1〉特売・新商品のリードタイム調整
〈2〉商品回転に応じたリードタイム調整
〈3〉定番商品の発注締め時間の調整
〈4〉配送時間の分散化、納品時間枠の調整
〈5〉パレタイズ納品、予約受付システム、ASN(事前出荷データ)による検品レスの活用拡大

〈非接触と履歴管理にスピード上げる〉
コロナ禍において、社内における取り組みの方針は「入荷・受注・出荷を止めずに、全業務についてソーシャルディスタンスを確保しながら行うこと」だった。現在は5割ほど出勤せずに作業できる状況になったという。

いまも業務の場所、面会の必要性など一つずつ見直している最中だ。「直接会わなくても仕事が進んでいる実感もあり、むしろオンラインで時間調整をしやすくなった面もある」とした。

今後の“新しい物流様式”について「急速にオンライン化、デジタル化、システム化が進んだことには価値があったが、いまだ道半ばだ。すべての商品には行きわたっていない」と話す。「コロナ禍の前から取り組まなければならないと考えていたことが、何倍速にも早まって、やらざるを得ない状況になった。それを後戻りせずに粛々とやっていくことになる」とした。

また社内的課題について、非接触による仕事の仕方を推進するほか、「物流パートナー合わせて2万人いれば全く罹患しないというのは考えられない」として、早期復帰を可能にするためにも履歴管理が必要だとした。「その2点のスピードを上げて対応していかなければならない」と強調した。

〈冷食日報2020年10月22日付〉