惣菜市場(中食市場)は2019年も拡大し、10年連続でプラス成長となった。2017年に初めて市場規模が10兆円の大台を突破し、その後も拡大が続いた。世帯人口減や有職女性の増加といった社会的背景が押し上げた形だ。
惣菜市場規模の10年比較

惣菜市場規模の10年比較

 
一方、2020年はコロナ禍の影響から消費者の購買行動にさまざまな変化がおこり、ここまで苦戦気味と見られる。さらに、以前から大きな課題となっていた調理現場の人手不足は引き続き影を落としている。社会背景を考えれば、惣菜市場は今後も拡大していくものと考えられるが、コロナ禍の影響、人手不足をどう乗り越えていくかが今後の成長の鍵になりそうだ。
 
日本惣菜協会が6月に発刊した『2020年版惣菜白書』によれば、2019年の惣菜市場規模は前年比0.7%増の10兆3200億円となり、10年連続での市場拡大となった。同協会の市場規模調査開始以来、2009年に唯一のマイナスとなったが、再度成長軌道に乗り、2017年には市場規模が10兆円を突破、その後も拡大が続いている。

食の市場規模

食の市場規模

 
惣菜市場の業態別内訳は、最大シェアの「CVS(コンビニエンスストア)」が前年比1.7%増、「専門店、他」が2.0%減、「食料品スーパー」が2.2%増で、この3業態合計で87.3%を占める。また、「総合スーパー」が1.7%増、「百貨店」が1.0%減となった。
 
2009年と2019年の比較で10年間の推移を見ると、惣菜全体では28.1%増と拡大。内訳は「CVS」が64.1%増、「食料品スーパー」が40.3%増と大きく伸長し、市場の拡大をけん引した。また、「総合スーパー」が7.6%増、「専門店、他」も4.2%増と拡大したが、唯一「百貨店」は5.7%減と市場が縮小している。
 
ただ、ここへきて惣菜市場には変調要因が出てきている。1つは、2019年10月の消費税増税だ。食品には税率8%の軽減税率が適用され、持ち帰りの場合は中食惣菜も同様だが、コンビニエンスストア、スーパーともに近年設置を増やしていたイートインスペースを利用する場合は、外食と同等の税率10%が適用されることとなり、冷水を浴びせられることとなった。
 
そして、さらに大きな影響要因として今年のコロナ禍による消費者の購買行動の変化が挙げられる。3月以降、外食ほど甚大ではないものの、惣菜市場もコロナ禍の影響を受け、苦戦気味となっているようだ。
 
本記事に示した「SM・CVSの惣菜売上および外食売上増減率推移」のグラフは、2018年以降のコンビニエンスストア・スーパー・外食の売上推移をまとめたものだ。ちなみに、今年2月が山となっているのは、うるう年で前年より日数が1日多いことが単純計算で3.6ポイント押し上げていることも影響している。

SM・CVSの惣菜売上および外食売上増減率推移(単位:%)

SM・CVSの惣菜売上および外食売上増減率推移(単位:%)

 
コンビニエンスストアの販売統計(日本フランチャイズチチェーン協会)における「日配食品」(乳製品やデザート等を含むが、うち7割ほどは中食惣菜が占めるとみられる)の既存店売上前年比は、3月6.6%減、4月13.0%減、5月12.5%減と、特に4〜5月に大きく減少した。緊急事態宣言で外出自粛要請が出され、在宅勤務も広く行われた中で、オフィス街や観光地周辺のコンビニでは来店客数が大幅に減ったことなどが影響した。
 
5月25日に緊急事態宣言が解除されたが、6月以降も6月6.1%減、7月8.3%減、8月7.1%減と戻りが鈍い状況が続いている。コンビニは惣菜市場でも最大のシェアを持つため、総市場にも影響を与えそうだ。
 
一方、日本スーパーマーケット協会などスーパー3団体の販売統計における「惣菜」の既存店売上前年比も3月0.5%減、4月4.7%減、5月2.2%減と、コンビニよりは小幅ながらマイナスとなった。
 
備蓄需要や巣ごもり消費の中で、スーパーの食料品売上高そのものは拡大したものの、東京都の小池百合子都知事が「三密」を避けるため、買い物頻度を「3日に1回」程度に控えるよう要請したことなどもあり、スーパーではまとめ買い傾向が強まり、客数減・客単価増の構造となった。
 
そのため、日持ちせず買いだめ・備蓄に適さない惣菜は、客数減の影響を受けて苦戦気味となった。巣ごもりの中で手作り志向が高まったこともマイナス要因として挙げられるだろう。
 
業界関係者からは「並べられれば売れる状態ではあったが、バックヤードの調理現場でも“三密”を避けなければならず、アイテムを絞った売場づくりしかできなくなった」「コロナ対策のためバラ売りが難しくなったため、人手不足の中でパック詰めの手間が増えてしまった」という声も聞かれた。ただ、コンビニとは異なり、6月1.0%減、7月0.2%増、8月0.6%減と7月はプラスに転じるなど、売上高の面では既に前年並近くに戻っている。
 
そしてもう1つ、コロナ禍以降、外食企業がテイクアウト、デリバリーにこれまで以上に注力するようになっていることの影響も挙げられる。これらは広い意味での“中食”ではあるが、日本惣菜協会の統計上の「惣菜市場」には含まれないばかりか、「惣菜市場」とは直接の競合関係ともなる。そういう意味では、あくまでも統計上の話ではあるが、「惣菜市場」にとってはマイナス要因となるだろう。
 
冒頭にも挙げた社会背景を考えれば、今後も惣菜市場は成長するものと考えられるが、2020年の市場拡大はコロナ禍により黄信号が灯ったと言わざるを得ない。
 
コンビニ惣菜の戻りの鈍さを見ても、コロナ後の「ニューノーマル」は、想像以上に定着しつつあるのかもしれない。さらに、調理現場の人手不足は依然として深刻だ。ニューノーマルへの対応と、人手不足への対応は、再成長のために乗り越えなければならない課題となりそうだ。
 
〈食品産業新聞 2020年10月26日付〉