ノースイ2020年度上期は冷食事業11.3%減収、市販用農産は大幅伸長/森瀬公一専務インタビュー

ノースイ取締役専務執行役員・森瀬公一氏
〈市販用はPB戦略を推進、自前の供給拠点の拡充も継続〉
ノースイの2020年度上期(4月~9月)は、コロナ禍による業務用市場の落ち込みが影響し、売上高は2019年同期比17.4%減となった。

事業部門別に見ると、水産事業はホテル・レストランの市場悪化による影響が大きく、2019年同期比28.1%減に、伸長を続けていた冷凍食品事業も当上期は同期比11.3%減と2019年を下回った。

ただし流通PB(プライベートブランド)を中心とした市販用の冷凍農産品は販売が好調だ。有力流通企業との取り組みによって、さらに存在感を高めていく。森瀬公一取締役専務執行役員が本紙「冷食日報」の取材に応じた。

冷食のうち加工食品事業は外食市場の落ち込みの影響が大きく18.3%減と落ち込んだ。他方、これまでけん引役となってきた農産事業も当上期は8.1%減と前年を下回った。ただし農産事業のうち品目別に見ると、フルーツが2割増、ほうれん草が3割増、カボチャが2割弱の増加など、大幅に伸長した品目もある。

流通PB商品を含む、市販用農産品の販売が、内食需要の急拡大という市場環境が追い風となり好調だ。上期は43%増と大幅に伸長した。特需が見られた4月~6月は増加率が60%超に、9月時点でも20%増と増加基調が続いている。業務用でも医療・介護向けは落ち込んでいない。近年、毎年2倍ペースで伸びてきた注力分野だ。特に野菜を5mmカットにした「ミリ・ベジ」シリーズが引き続き拡大している。当上期も50%増で推移した。

「ミリ・ベジ」から派生して、少しサイズの大きい15mmカットの「プチ・ベジ」シリーズを今春発売した。また、用途の幅が広いタマネギについては様々なサイズのカットをそろえた「オニオンズ」シリーズの展開も始めた。いずれも売上げに貢献している。

今春はきのこ類でも「きのこ倶楽部」シリーズとして展開を始めたが、外食をメーンにしていることもあり、上期の動きは今一つだった。今後、販売を強める構えだ。

当下期以降の重点施策として、
・市販用のPB戦略の推進
・自前の国内外サプライソースの確保
・新商品のシリーズ展開
――の3点を掲げる。

森瀬専務は「伸びている市販用に、原料や人材といった経営資源を投入していく。特にPB 戦略を推し進めたい」と述べている。

そのために拠点整備を進めている。ノースイ食品では前年秋に第2工場を増設し、リパックラインは現在、第1工場で3ライン、第2工場で1ライン稼働している。さらに来年、1ラインを増設し5ライン体制になる予定だ。これらほぼすべてを市販用商品向けに使用している。

森瀬専務は「市販用の受託には価格競争力にとどまらず、安定供給力、そして何よりも高い品質が必要だ。当社は農産専属の品管が10人いる」と自信を見せる。品管体制の充実が世界23カ国170工場の品質保証を裏付けている。海外渡航が制限されている現在は、新規の工場やアイテムの導入は止めており、通常の監査はリモートで実施。実績のある工場や製品であるため、現状は品質管理に問題はないとする。

〈シリーズ化 新たに煮豆に着手へ〉
「地球温暖化の問題もあり、食料は今後、戦略物資になっていく。国内外で自前のサプライソースを確保するため、積極的な投融資を行っていきたい」。これは農産事業で一貫して推進してきた課題だ。安定供給のために産地と工場を押さえることが大切だとする。国内ではびえいフーズ(北海道)の新工場を今春竣工し、熊本大同青果との合弁で熊本大同フーズ(熊本)を設立した。海外でも現在、投融資案件を進めているという。

熊本大同フーズには3割出資している。九州では初の資本関係のある自前の拠点となる。来年秋のほうれん草から生産をスタートする予定だ。国産フルーツの商品化も視野に入れる。海外ではコロナの影響をにらみつつ、当面はタイ、ベトナム、ミャンマー、インドネシアといった東南アジアを中心に開拓を進めることになりそうだ。

「サプライソースを固めたうえで、新商品をシリーズ化していきたい。点ではなく面で展開する」。新たに、冷凍煮豆のシリーズを単品種やミックスで展開する計画だ。豆問屋と組み、海外加工して輸入する計画だが、海外渡航が制限されている状況のため、製品化は遅れそうだ。

〈冷食日報2020年11月20日付〉