極洋「食品事業で商品別から業態別に組織改定計画」、中計最終年度、事業ウイング拡大・時間価値提供で成果/2020年末会見・井上社長

極洋・井上誠社長
極洋は12月15日、本社で年末会見を開き、井上誠社長が2020年の振り返りと今後の方針について、要旨次のように話した。

――今年のコロナ禍の影響と今後の対応

今期は第1四半期から消費低迷でスタートした。特に食品事業では業務筋ルートに注力していたため、外食、問屋、給食ルートが大きく影響を受け、大変厳しい数字となった。

第2四半期に入って、回復基調が鮮明になり、回転寿司など一部外食ルート、生協など宅配事業、量販店の冷凍食品は引き続き好調を維持している。家庭用冷凍食品は前年比110%以上、エビ事業では10月以降、単月で売上・利益とも前年を上回る水準まで回復した。

しかし12月に入り、拡大するコロナ禍の影響で業務筋ルートなどに陰りが見られ、この後大きな失速も懸念される。現在のところ、ピークを迎える年末商戦ではカニ、鮭鱒、エビなど水産品は順調に推移している。

現状、コロナ禍の影響で多くの商材の市況が低位安定する中、需給が不透明で先行きが想定しづらい。これを踏まえ従来同様、量販店への販売拡大に注力することに加え、簡便性・利便性の高い商品の開発、テークアウト・宅配・通販など今後の伸びが期待できる業態へウイングを拡げると同時に、さらに積極的に扱い数量の拡大を図っていく。

上期決算で極洋単体での営業利益は前年比約20%の増益となった。昨年、鮭鱒相場下落の影響が大きく、今期はそれを取り戻している状況を反映したものだ。これを踏まえ、当社にとってコロナ対策に加え、相場対策、在庫管理も大きな強化ポイントだと考えている。

さらに、コロナ禍の影響で商談・働き方のスタイルが大きく変わった。テレワークや、オンライン商談・会議は有効性が充分確認できたと同時に、接待交際費・旅費交通費など経費削減の効果も大きく、上半期の決算で増益となった大きな要因の1つとなった。WEB を活用した働き方改革を今後も積極的に進めていきたい。

――中期経営計画「Change Kyokuyo 2021」の成果と残された課題について

今年度は中計最終年度であり、3年間の具体的成果を見ると、「事業ウイングの拡大」では、クロシオ水産買収、イチヤママル長谷川水産への出資、タイの新工場建設、「時間価値の提供」では「だんどり上手」シリーズ拡大、煮魚のラインアップ充実などに取り組んできた。また、財務面では自己資本比率が中計での目標・30%を達成するなど、着実に成果が上がっている。

一方で、依然としてクリアできていない課題が3つある。1つ目は水産商事の収益安定化。この上半期の利益は前年同期比9億円増と大きく改善したが、相場変動の影響を最低限に抑え、安定した収益を確保するためには、資源アクセスの強化を図り、付加価値商品の比率を高め、差別化した加工品での販売展開を充実することと、在庫管理の徹底を図ることが必須だ。

2つ目の課題は海外販売の強化。日本産水産物の輸出では、ホタテ、青物が年々伸長しているがまだスピードが遅い。海外の工場で生産した製品を海外で販売することを含め、海外での販売拡大は大きな課題だ。海外販売企業のM&Aも含め、早急に体制の強化を図る必要性がある。

3つ目は食品事業の規模の拡大。冷凍食品事業は今後も拡大が期待できるが、現状、業務筋ルートに注力してきたため、コロナ禍の影響で上半期の売上は前年同期比93%と落ち込んだ。これを再び成長軌道に戻し拡大するため、直系工場の稼働率アップを図りながら、一層のスピード感を持って規模の拡大を目指す必要性がある。

塩釜工場、キョクヨーフーズ、タイ新工場のKGSといったグループ直系工場による水産物を中心とした極洋ならではの高付加価値商品の開発展開を行い、市販用では量販店、CVS、ドラッグストア、業務用では老健・介護ルートや事業所給食を中心に販売を拡げていく。

――今後の組織体制と、新中計の考え方

現在策定中の新中計では、現中計の残された課題を踏まえ、収益の安定化、高収益構造への転換が引き続き大きな柱となる。

1つの施策として、食品部門の組織改定を検討している。食品事業における商品提案力、企画開発力を強化し、メーカーとして自社製品をしっかり販売できるよう、生産・販売体制の一体化を進める組織に改革する。従来の商品別組織――水産冷凍食品部、調理冷凍食品部――といった体制から、市販用・業務用2つの事業部に再編成し、支社が販売活動に専念できる体制とする。

〈冷食日報2020年12月16日付〉