――現在の市場環境について

2020年の国内冷凍食品生産量は前年並から若干減で、家庭用が伸長する一方、業務用が苦戦する流れとなった。家庭用は近年徐々に拡大していたところ、コロナ禍による外出自粛要請から需要が急拡大した。2020年2月下旬から3月にかけては米飯、麺類、餃子など定番品を中心に一時は通常の3倍もの注文が入り、供給が困難となる程だった。

メーカーは売れ筋以外の商品を休・終売するなど生産調整を余儀なくされた。その後、市場は落ち着いたが、以前からの前年比3〜4%増を上回る10%近い伸長が継続し、生活者の使用頻度は着実に増加しているので、冷凍食品の発展を大きく後押した契機と将来振り返る事になるだろう。
三菱食品 小野常務

三菱食品 小野常務

 
一方、業務用は休校で学校給食が減少した他、飲食店の営業自粛・時短要請や在宅勤務の増加、更にはインバウンド需要の“蒸発”もあり、特にホテルや居酒屋業態を中心に大きく落ち込んだ。
 
9月以降は回復基調に入ったが、2021年1月の緊急事態宣言により、再び厳しい状況にある。
 
外食業態が元の状態に戻るには、かなりの時間を要するが、いつの時代も自ら独立して飲食業を志向する新規参入者は多いので、外食はいずれ必ず復活すると思う。それ故、守りだけでなく、将来の攻めに繋がる積極的な施策も同時に進めている。
 
外食産業は外出自粛・時短営業の影響により、店内飲食が大幅に減少した為、多くの企業はテークアウトを強化している。当社も外食得意先に少しでもお役に立てればと、新サービス「ガラリトスイッチ」を2020年7月以降、展開中だ。エリアで馴染み深い外食店のメニューを同一エリアの量販店のデリカ売場で販売するもので、外食店にはテークアウト販売の増加、デリカ売場ではより本格的なメニュー導入による売場活性化の成果が得られ、双方から高評価されている。
 
また、外食チェーンの人気メニューが家庭用の冷凍食品として商品化される動きも顕著だ。冷凍食品の最も優れた強み・特性は、料理や食材本来の食味・食感を高次元で再現出来る事であり、外食の人気メニューを冷凍食品化のお陰で家庭でも簡便に楽しめる様になりつつある。
 
現時点では主として外食店舗や通販に限定して販売されているが、今後は製造能力の拡大と共に、販路が拡大し、高品質な本格的メニューが一般の家庭用冷凍食品売場に投入されるだろう。これにより市場に厚みが増し、更なる活性化が期待出来ると予想している。
 
――貴社業績概況について
 
第3四半期の低温事業の連結業績は売上高が前年同期比8.4%減7,371億円、営業利益13.9%増60億円と減収増益だった。減収で売上総利益は減少したが、改善施策でカバーする事が出来た。
 
1つは物流効率の改善効果。以前から物流頻度・配送時間帯の見直し、配送ルートの再編等、物流与件の変更を全国規模で得意先や物流委託先と綿密に打合せ、改善策を積み重ねてきた。次に販管費の削減効果が大きい。RPAやOCRの活用、帳簿の照合AI化等のデジタル活用による効率化は、当社の受発注件数が膨大なだけに重要だ。更に今期はコロナ禍の影響下、各種会議・商談のオンライン化が進む等、販管費が大幅に削減した。今期は昨年5月の本社移転の一時経費やシステム投資他の負担増加はあったが、社員一同で取組んだ効率化努力の積み重ねのお陰で結果、増益になったものと社員に感謝している。
 
――現在の重点施策について
 
当社低温事業は量販店向けリテール事業・レジ横のファストフード取引を含むCVS事業・生協向けライフネット事業・デリカ事業・フードサービス事業と、主力分野が多岐に及ぶ。分野毎に重点施策が様々に異なる中で、敢えて共通項を挙げれば、物流力強化が最重点施策である。低温の取引は常温帯カテゴリーと比べて、倉庫保管費用・配送費用等の物流コストが圧倒的に大きいだけに、如何に物流を効率化し、卸としてコスト競争力を高めるかを常に考え、施策を実行しなければいけない。
 
また、冷凍の市場が今後も引き続き拡大する事は間違いない為、十分な物流キャパシティを確保し、増え続ける物量を担える物流基盤を整備する事も重要な課題である。冷蔵倉庫の庫腹不足の状況は長期化しているが、倉庫を新築しようにも、地価や建築費用の高騰で大手物流企業と云えども二の足を踏むケースが多い。現在、新設予定の倉庫も稼働は2022〜23年であり、庫腹不足の解消には時間を要するだけに、中長期的な物量を予測しつつ、物流キャパシティを確保し、物流サービス・品質の向上と物流コストの改善の両立を如何に実現するかが最も重要な課題だ。
 
〈冷食は今後ますます、新たな領域を拡大するように〉
――冷凍でもオリジナル商品投入を進めている

 
量販店向けの低温事業はメーカーNB商品の販売が主業なので、既存品との競合は避け、新たなジャンルの開拓を狙ってオリジナル商品を出している。直ぐに大量販売が見込めるものではなく、じっくり時間をかけて浸透させたい。又、冷凍デザートの「&me time」を始め、各商品の投入から2〜3年が経過するので、今後はこれまでの経緯・実績をレビューした上で、更なる拡大を目指す。
 
冷凍ミールキット「ララ・キット」は、従来2〜3人前で展開してきたが、個食ニーズの高まりを受けて1人前の「For me」シリーズを2020年11月から立ち上げて提案した。デリカ売場で冷凍の訴求を目指す「フローズンダイニング」は、これまで家庭用冷食売場でも販売したが、本来の狙いを徹底する観点からも、今後はデリカ売場のみの専売とし、デリカならではの手作り感ある商品に刷新した。
 
糖質オフシリーズの「からだシフト」は常温カテゴリーでは既に定着したので、今後は冷食での展開を強化する方針だ。
 
――冷食の将来について
 
簡便性が高いパスタ・麺類、総菜、米飯類は引き続き着実に需要拡大するし、手間を省きながらも一手間をかける事で外食に匹敵する様な高品位の冷食(ミールキット等)も支持を集めるだろう。従来、冷食は優れた品質・出来映えの割に、申し訳ない程の安値で販売されがちだったが、価値に見合った価格で販売される様に改善されるだろう。
 
特に昨今、意欲的に独自の冷食を次々と開発しているコンビニ業態が楽しみであり、今後の冷食の流れを大きく変える原動力と期待している。又、レストランだと1,000円するメニューを冷凍ならではの再現性を活かして、家庭に500〜600円で提供する等、冷食は今後ますます、新たな領域を拡大して需要を取り込むだろう。
 
〈冷食日報2021年3月1日付〉