極洋 2020年度は減収増益見込み、鮭鱒事業回復と経費削減が寄与

極洋 井上社長
〈新中計をこれからの極洋の基礎づくりに〉
極洋東京支社の取引先卸企業等で構成する東京支社極洋会は4月9日、都内ホテルで第25回総会を開催した。極洋の井上誠社長、各事業部門担当役員が業績や方針等について説明した。

直近の業績や、新中期経営計画(中計)「Build Up Platform 2024」の概要について、井上誠社長が説明した。

2020年度の業績について、決算発表を5月14日に控える中、概要としては減収増益見込みだとした。増益要因として、2019年度に大きく苦戦した鮭鱒事業が堅調に推移した点および、コロナ禍の中で旅費交通費・接待交際費が大幅削減できた点を挙げた。

中計の基本方針は「経営基盤の強化を図りながら、『事業課題への継続的取組み』と『持続的成長への挑戦』を柱とする戦略を進め、社会と極洋それぞれが共有するべき価値を創造していくことで、新たな成長への礎となる『高収益構造への転換』を目指す」としている。数値目標は、売上高3,000億円、営業利益70億円に設定する。井上社長は「Build Up Platformは、これからの極洋の基礎作りをすることを指す」と話した。

また、「事業課題への継続的取組み」については、3つのポイントを挙げた。

1つ目は水産商事事業、鰹鮪事業の収益の安定化。井上社長は「先ほど(業績で)触れたように、2年前鮭鱒で十数億円のマイナスを出し、前期は十数億円のプラスと30億円弱の違いが出た。経営上も株主の見方にも非常に問題で、原料から製品まで、きめ細かい施策を打って収支の安定化を図りたい」という。

2つ目は前回の中計に引き続いての食品事業・海外事業の拡大。前回やり残した海外工場の拡大、伸びしろの大きい事業の拡大を図り、事業の柱に育てる。

3つ目は資源アクセスの強化。養殖事業の強化、国内外産地との関係強化を行い、安定的供給を図る。

〈組織再編した食品部門、市販食品では時短・簡便のみでなくおいしさを食卓へ〉
各事業の前期業績や2021年度方針について、各部門の担当役員が説明、食品部門については、山口敬三取締役市販食品本部長が説明した。

前期業績は、コロナ禍の影響が大きく減収見込みだという。業務用冷凍食品は、主力の直系工場製品を中心に拡売。キョクヨーフーズのオーシャンキング、極洋食品塩釜工場のエビカツ、煮魚・焼き魚の個食パックなど簡便商品を拡売したが、外食、特に居酒屋ルートの営業自粛による影響を受け、売上目標未達となった。

家庭用冷凍食品は、弁当品は苦戦したが、内食拡大の中で食卓品が堅調で、塩釜工場、タイKGS社の煮魚・焼き魚を中心に魚惣菜商品が伸長し、売上高は前年比16%増となった。

常温食品は春先の備蓄品需要があり、主力の青物缶詰が順調推移。また、家飲み需要に支えられおつまみ商品の販売が拡大するなどして増収増益となった。

また、食品部門は、4月1日に組織再編を実施。従来冷凍食品セグメント、常温食品セグメントの商材別組織から、業務食品本部、市販食品本部の業態別体制とした。これにより、メーカーとしての機能強化を進めながら、さらに直系工場製品の開発、育成、販売を強化していく。

中計初年度の今期売上目標は1,050億円、内訳は業務食品本部730億円、市販食品本部320億円を掲げた。

方針として、業務食品部門では、キョクヨーフーズのカニカマはフル稼働で年間7,000トン以上の販売を計画。極洋食品塩釜工場では、主力のエビカツが順調に推移し、継続的に品位向上を図りながらさらなる販売拡大に繋げる。海外では2020年8月、タイKGSの煮魚・焼き魚ラインが稼働。2021年12月には寿司ネタなどの生食ラインが竣工し、従来のKUEに加え、万全の供給体制構築により生食商品の拡大に繋げる。

市販食品部門の方針は、タイKGS、極洋食品塩釜工場の魚惣菜シリーズの魚種・メニューバリエーションを拡大。食卓出現頻度の高い商品の提案投入を強化する。また、ニューノーマルのライフスタイル変化に対し、時短・簡便にとどまらず、冷凍食品のおいしさ・楽しさを家庭に届ける取組みに注力する。

缶詰では、主力の青物、ツナ缶の拡大をテーマとする。ツナ缶については、汎用性の高い料理素材として伸ばせる余地があり、海外の新規製造拠点の構築、競争力強化を図る。

ジョッキのおつまみでは、注力商材としてチーズ製品の開発・提案に務め、主力のイカ製品に続くカテゴリーに育成する。

〈冷食日報2021年4月13日付〉