テーブルマーク「ごっつ旨い」シリーズ、出発点は夕食の家族メニューを1人でも食べられるという価値提案〈ブランドの創りかた〉

テーブルマーク「ごっつ旨い」立ち上げ当初から続いている2品“お好み焼”“ねぎ焼”
テーブルマークは冷凍お好み焼のパイオニアだ。ただしその歴史は平坦なものではなかった。1970年代に生タイプのフライパン調理品を発売したが、いったん終売。1992年にレンジ対応となって復活し、1999年に「ごっつ旨い」を冠して、現在まで続く飛躍につながった。家庭用冷凍お好み焼ではおよそ6割のシェアを握るとされる人気ブランドの成り立ちを、マーケティング戦略部の福本真之調理加工品カテゴリーマネジャーに聞いた。
テーブルマーク マーケティング戦略部・福本真之調理加工品カテゴリーマネジャー

テーブルマーク マーケティング戦略部・福本真之調理加工品カテゴリーマネジャー

「ごっつ旨い」シリーズは1999年に「お好み焼 いか・えび・たこ」と「ねぎ焼」の2品でスタートした。「いろいろな商品を発売して失敗もしてきたが、振り返ればスタート時の商品は今も残っている(ただし、定番品のお好み焼は現在、いか・えびに変わっている)」。
 
同社の冷凍お好み焼の歴史は古い。未加熱仕様でフライパンやホットプレートで調理する「生タイプ」の発売が1976年。その後、1980年代後半からの冷凍食品の電子レンジ化に対応して、同社のお好み焼もレンジ対応に大きく変化させた。
 
生地を焼く直前に具材と混ぜ合わせ、落とした生地を鉄板上でコテを使ってまとめるコテコテマシン、正確に生地をひっくり返す技術など職人技を再現した基本技術を確立し、その流れのなかで「ごっつ旨い」は誕生している。
 
「ごっつ旨い」という名称の起源は本格志向という開発の基本方針があり「大阪の専門店の味を冷凍食品で忠実に再現したい」という開発者の思いがあったとされ、「一口食べたら思わず『ごっつ旨い』(物凄く美味しい!)とつぶやいてしまうような商品にしたい」という思いが込められていることは確かなところだろう。
 
商品コンセプトは1人で食べられるお好み焼だ。家庭のお好み焼は夕食に家族みんなで食べるメニューで、1人分を作って食べるシーンは想像し難い。
 
冷凍お好み焼の開発当時は、今にもつながる核家族化の進行、単身世帯の増加という社会背景があり、これに対応して1人でも食べられるようにと考えた。
 
「ごっつ旨い お好み焼」は紙トレー入りで皿いらず、ソースと鰹節、青のり、さらにマヨ風ソースまで添付され、足りないものがない――この基本形は現在まで引き継がれている。
 
利用シーンには変化もあるようだ。発売当初のパンフレットには「スナック、間食、おつまみに」と提案されていたという。それに対して「今は昼食をはじめ、食事としての利用が増えている」。女性社会進出や高齢者が活動的になったこともあり、簡単に食事を済ませたいニーズが増えていることが背景にある。
 
〈冷食売場が広がり配荷拡大 「ごっつの日」施策にテレビ番組の追い風〉
「ごっつ旨い」の発売が冷凍お好み焼の飛躍につながったとされるが、冷凍うどんと同様に徐々に伸びていった商品だという。ただし販売の伸びが顕著に見られるのが2010~15年。配荷率が大きく上昇したという。
 
「スーパーで冷凍食品の棚が広がってきて、品ぞろえの充実の一環として、配荷が拡大した。卸やスーパーの協力でお客様とのタッチポイントを上げられた」。冷食のスナック市場が伸びていた時期でもあったという。
 
15年以降も購入率は5%ずつ増えていたが、18年度には原料価格の上昇を受けて値上げをしたことで、一時停滞した。
 
これに対して定番の「いか・えび」に「ぶた玉」などシリーズ品をプラス1品することでスナックコーナーの充実を提案する「プラス1SKU」施策を18年度後半に打ち出し、さらに19年には5月2日を「ごっつの日」と制定してデジタルプロモーションとキャンペーン施策を展開した。
 
その販促のため2019年4月、5月は店頭露出を最大限行っていたところにテレビ番組で「冷凍食品総選挙」が放送され、潮目が一気に変わった。「新規トライアル層がものすごく増えた」という。
 
さらに20年はコロナ禍によって家庭内での食事が増え、手軽な食事としてお好み焼・たこ焼が重宝されている。購入者には「DEWKS の女性やシニア女性に加えて、男性のワーキングシングルが増えている」という。
 
〈お好み焼・たこ焼のブランドに さらなる認知拡大、顧客満足の向上目指す〉
20年以上の歴史の中、「ごっつ旨い」ブランドの領域にも変遷があった。今でこそお好み焼、たこ焼のブランドになっているが、一時は冷凍麺商品にも付けていたことがあったという。
 
2010年に加ト吉からテーブルマークになったときに「ごっつ旨い」ブランドをお好み焼・たこ焼に集約した。パッケージの統一感を持たせたのもこの時期だ。配荷が伸びた時期にも重なり、「お客様へのわかりやすさにもつながったのかもしれない」とする。

2010年に「ごっつ旨い」をお好み焼・たこ焼に集約/テーブルマーク

2010年に「ごっつ旨い」をお好み焼・たこ焼に集約/テーブルマーク

今後の課題は認知度のさらなる向上と顧客満足度を上げることだという。
 
「ごっつ旨い お好み焼」はリピート率の高い商品だが、同社調査によれば、知らない人も4割いる。「冷食の中では一定の認知をもらっているが、ビールや即席麺、菓子などの有数のブランドと比べたらまだ認知の部分には課題がある」とする。
 
重要なのは商品を食べてもらうきっかけづくりだ。コロナ前はリアルイベントでのPR を実施していたが、今は好評だった試食会もできない状況にあり、ごっつの日を中心としたデジタル施策やキャンペーンを実施してきた。
 
プロモーションについては、「店頭での販促効果は非常に大きい」が、コア層である40代以上の主婦と、若年層との接点は異なり、デジタルは若年層に対してはより効果的ととらえている。インストア・アウトストアのプロモーションの相乗効果が重要だと考えている。
 
顧客満足度の向上については「品質の向上やコミュニケーションを含めて、継続的に取り組まなければいけない」と話す。
 
ごっつ旨いお好み焼は発売から10年ほど生地や具材、味付けの改良を頻繁に重ねてきた。近年はパッケージ変更が多くなっているが、「商品開発は生地やソースなど、様々な部分で『もっと美味しく』をまだまだ目指していけると言っている」。
 
 「ごっつ旨い」ブランドの在り方については、「20年以上の実績とファンをつかんでいるので、期待を裏切らない安心感と、フェス=屋台のワイワイした楽しさ、簡単に調理できることで大切な時間をつくりたいときに使ってもらえる、飾らないブランドにしていきたい」。
 
◆テーブルマーク「ごっつ旨い なんでうまい?」特設サイト

デジタルプロモーション「ごっつ旨いなんでうまい?」を発信

デジタルプロモーション「ごっつ旨いなんでうまい?」を発信

〈冷食日報2021年7月6日付〉