“炒めてきた時間は、誰にも負けない。”――ニチレイフーズの看板商品「本格炒め炒飯」が2021年で発売20周年を迎えた。冷凍炒飯カテゴリーでは20年連続売上げナンバー1を達成している。発売初年度から売上げ40億円を達成し、2017年には100億円を突破。冷凍食品業界で確固たる地位を築いた今も、さらなる売上げ成長を目指している。

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冒頭の言葉は発売20周年広告に使用しているキャッチフレーズで、冷凍炒飯に正面から向き合ってきた自負が表れている。

冷凍炒飯に炒める工程を始めて導入したのが「本格炒め炒飯」だ。それまでの冷凍炒飯はご飯に調味料と具材を混ぜ込んだだけの、いわば中華風混ぜご飯だった。

「加工食品の中には手作りとのギャップがあるものはたくさんあるが、そのギャップに向き合い、本質に近づくことができれば、生活者に響く。当社は冷凍技術でその実現を目指している」(城戸俊治家庭用商品グループリーダー)

当時冷凍食品には大幅割り引き販売や、コモディティ化による価格競争が横行していた。これらを脱却するために品質を高めて商品本来の価値を認めて頂こうという機運が、開発部門に高まっていたという状況もあった。

開発に当たって、より本質的、本格的な品質を目指し、油の量や、火力、具材を入れるタイミングなどプロの技を忠実に再現することを目指した。

その中で課題となったのが、工業的に大量連続生産を実現することだった。炒飯はプロの料理人でも美味しく作れる量は2〜3人前といわれる。これを工業化するのは至難の業だった。

ニチレイフーズが千葉に置く技術開発センターは製造設備の開発機能をもっている。当時、どこにも存在しない製造装置を独自に開発し、米の加工から炒め機への材料投入、凍結、包装まで一気通貫で行う製造ラインを完成させた。

開発スタートから3年以上かけて発売にこぎつけた。冷凍食品業界にとっても革新的な商品だったことから、発売当初からプロモーションには力を入れた。

プロサッカー選手(当時)ゴン中山(=中山雅史氏)をイメージキャラクターに起用。侍の衣装に「なぜにこれほど香ばしい。」というキャッチフレーズを使用した広告を投入した。彼の前向きでポジティブなキャラクターとともに、向上心や高みを目指す商品メッセージを前面に出した。

〈2015年の転機売上ナンバー1商品なのに大改良したわけ〉
「3年かけて満を持して発売したといっても、100点ではない。本物、本格を追求し続けて100点を目指しており、それは今後も変わらない」(城戸氏)。

発売からの20年は改良の歴史でもあった。炒め方、火力の変更や焼豚の内製化、ゴロゴロ感を際立たせるカットサイズの変更、卵の風味を立たせる炒め方、米と具材と調味料の一体感を持たせる工夫など、味や見た目について、モニター調査などから抽出した、その時々の課題を一つひとつつぶしていくことで総合力の向上に取り組んできた。

「これだけ認知されている商品なので、主観に陥らず、10人食べて10人が“あり”といえる最大公約数を追求していくことが重要。非常に難しい」(城戸氏)。

発売当初からニチレイフーズトップクラスの売上げを記録した商品だが、大きくステージが変わったといえるのは2015年。「本格炒め炒飯」を大改良した年だが、これと同時期に競合他社も炒飯の新商品を投入し、当時“炒飯戦争”といわれる状況が、市場を活性化させた。

「メディアにもたびたび取り上げられ、今まで冷凍炒飯に馴染みのなかった人も、メディアを通して、進化やこだわりに関する情報に触れる機会が増えた。当社のものづくりへの思いに触れていただいたと思う」(渡辺千春マーケティンググループグループリーダー補佐)。

「本格炒め炒飯」はこの年に、素材・炒め・調味、すべてのこだわりを凝縮させ、製造ラインも刷新した。

この大改良プロジェクトは2011年に始まった。実に5年越しの大型プロジェクトとなった。ただ、立ち上げ時には機械の設計を含めて開発に3年間費やすことも想像できるが、今回はすでに地位を確立している商品に対するもの。もっと良いものができるという開発者の情熱が大きい動きにつながった。

新ラインには破格の30億円を投じた。完成させた“三段階炒め製法”は、ご飯に卵をコーティングする一次炒めに続き、250℃以上の高温熱風を当てる第2ステップ、そして強い攪拌による仕上げ炒め――プロの工程を再現した。また具材の焼豚は「本格炒め炒飯」を生産する、船橋工場で内製化し、焼豚の煮汁も活用、焦がしネギ油を使うなど、その時点で詰め込めるだけのものを詰め込んだ。

〈企業名と商品名をセットで認知してもらうことが課題〉
20年連続売上げナンバー1という「本格炒め炒飯」だが、渡辺氏は「認知はまだまだと思っている」と話す。

「購買率はまだ高いといえるレベルではない。認知度調査でも、誰もが日常で目にし、購入経験のあるお菓子や加工食品のTOPブランドレベルまでは先が長い。しっかりニチレイの『本格炒め炒飯』と、いかに企業ブランドと商品ブランドをセットで覚えてもらえるかを大きなテーマにしている」。

冷凍食品は、あらゆるカテゴリー・メニュー(商品)の集合体であるため、商品選択基準が“から揚げ”“炒飯”といったカテゴリー・メニュー基軸になりやすい。そのため、企業名や単品のブランドが立ちづらいという課題がある。「我々は本質を追求し、おいしさを高めていこうという、ものづくりをしているので、企業ブランドと商品ブランドをセットにして伝えていく必要がある」(渡辺氏)という問題意識だ。

「本格炒め炒飯」でも企業ブランドを隠して、どこの商品かを答えてもらうと、間違える人が結構多いという。冷凍食品には赤いパッケージカラーが多く、企業名を意識してもらう活動を特段行っていなかったことなども要因と考えられる。「企業名と商品名がつながれば、例えばテレビCMが確実に当社の売り上げにつながるなどの効果が期待できる。今はまだ取りこぼしが多い」(渡辺氏)。

2019年からメーンスポンサーとして協賛している「全国高等学校ダンス部選手権」のタイトルには「POWERED BY ニチレイ『本格炒め炒飯』」と記載している。

冷凍食品には購買者と喫食者とが異なる傾向がある。冷凍炒飯であれば、保護者がスーパーで買い、子どもが食べる。子どもは出されたものを食べるだけで、自分がどのメーカーの何という商品かを知らない。

ダンス大会への協賛は、今後のメイン購入者となり得る、そういった若い人たちに直接アピールする活動の一環でもある。

今後の目標として、品質面について。城戸氏は「冷凍することで失われてしまっているおいしさがある。そこを越えたい。手作りと変わらない品質の実現に一歩でも二歩でも近づきたい」として、「組織として信念と執念をもち続け、あきらめずにチャレンジしていくこと。全員がまだ先があると言い続けられる組織であれば、実現できると思う」と話した。

他方ブランディングについても、渡辺氏は「まだ足りていないことはいっぱいある」と話す。2021年4月に新聞広告で“炒めてきた時間は、誰にも負けない。”というメッセージを発信した。この広告に対して、お客様相談センターには肯定的な意見が寄せられたが、「社内にも響いたことがよかった」という。
新聞広告“炒めてきた時間は、誰にも負けない。”

新聞広告“炒めてきた時間は、誰にも負けない。”

 
「例えば、社員の子どもが自信をもって、この商品をつくっている会社で親が働いているといえるということが、ブランドの成長を前進させると思う」としたうえで「プロモーションは認知を一般に広げる役割が大きいが、同時に『本格炒め炒飯』は極めて当社にとって象徴的な商品なので、従業員にも響くメッセージを届けていければ、社会にとってもいい会社になっていくと思う」と話した。
 
また「ニチレイの本格炒め炒飯が、誰もが喫食経験があり、ブランドと商品、その味がすべて結びつく商品となれば本物だと思う」(城戸氏)とした。
 
〈冷食日報2021年8月5日付〉