日本加工食品卸協会と食品物流未来推進会議は、「納品リードタイム延長問題」の解決に向け、「製配販各層に対する提言(案)」を取りまとめた。今後、日本加工食品卸協会内部での承認などを経て同提言を発出。製・配・販連携協議会とも連携して納品リードタイム延長に向けた取り組みを進め、ひいては持続可能な食品物流の構築に繋げる構えだ。

10月28日、東京ビッグサイト青海展示棟で開催された「FOOD展/フードディストリビューション2021」の中でパネルディスカッション「加工食品流通の納品リードタイム延長問題〜メーカー・卸間の取組み」を開いた。日本加工食品卸協会の時岡肯平専務理事がコーディネーターを務め、パネリストとして日本加工食品卸協会から三菱食品SCM統括オフィス室長代行の小谷光司氏、国分首都圏執行役員首都圏業務センター部長の殿村貴茂氏が、食品物流未来推進会議から味の素上席理事食品事業本部物流企画部長の堀尾仁氏、キユーピーロジスティクス本部本部長の前田賢司氏が参加した。

「納品リードタイム延長問題」の背景には、昨今の物流を取り巻く危機的環境と、嫌われる加工食品物流という2つの状況が挙げられる。物流業界は生産年齢人口減によるドライバー不足にあえぐ上、国の「働き方改革関連法」の一貫として、2024年には年間労働時間の上限960時間が適用される「2024年問題」もあり、既に危機的状況にある。中でも加工食品物流は短いリードタイム、夜間作業、長時間待機、付帯作業の多さ、他頻度検品など物流業者・労働者に「嫌われる」要素が多い。

そうした中で全日本トラック協会が2019年7月、「加工食品物流におけるリードタイムの延長に関する意見書」を発出。その中で「多くの加工食品物流は、物流事業者が午後に出荷指図を受けて、翌日午前中に納品する運用となっており、ドライバー不足が深刻化するなか、夜間運転や、夜間の仕分け作業を前提とした運用がドライバーになることを敬遠させ、ドライバー不足に拍車を掛けている」と指摘し、加工食品業界に対し、現行、受注日の翌日納品となっているところ、翌々日納品とするよう、リードタイムの延長を要望した。

それを受けて、製・配・販連携協議会では「納品リードタイム延長」を検討テーマに設定し、リードタイム延長に関する基本的な考え方と今後の取組みの方向性をとりまとめた。

日本加工食品卸協会では、同協議会の取組の方向性である「受発注締め時間の調整」について検討し、卸売業-メーカー間の受発注締め時間の調整を行うための課題について議論。そして、日本加工食品卸協会物流問題研究会・リードタイム課題検討ワーキンググループとしての活動を開始し、食品物流未来推進会議8社(味の素、キユーピー、ハウス食品、キッコーマン食品、日清フーズ、日清オイリオ、ミツカン、カゴメ)と卸6社(伊藤忠食品、加藤産業、日本アクセス、三井食品、三菱食品、国分グループ)にてメーカー・卸相互にこの取り組みを検討した。

さらに2021年6〜7月には実証実験を実施。味の素、キユーピー2社と、受注時間の後ろ倒しによる物流業者への作業影響を検証するため、受注時間を2時間後ろ倒しで実験を行った。

メーカー・卸売業間の物流の場合、リードタイム延長がもたらす「効果」としては、発荷主であるメーカーおよび委託先物流事業者にとって
▽夜間作業の軽減
▽集車の効率化
▽配車の効率化
▽積載率の向上
――という改善点が挙げられる。

リードタイムを1日伸ばすことで、夜間の集荷・仕分け作業を翌日昼間に行うことができる上、現状、見込みで集車することもあって非効率なところ、納品数確定後に翌々日分の配送車両を過不足なく準備できるようになり、より効率的な配送ルート、物量確定の早期化による積載率向上・使用車両低減にも繋がる。

一方、こうした発荷主側の「効果」の反面、着荷主である卸売業が対処すべき「課題」として
▽欠品リスクの増加
▽安全在庫の増加と、それに伴う保管スペース・在庫ロスコストの増加▽需要予測・発注の精度向上が要求されること
――が挙げられている。こうしたコスト・課題を、着荷主(この場合は卸売業)のみに課せられるのは負担が大きすぎ、それがこの問題を容易に解決できない要因となっている。

詳しくは割愛するが、実証実験でも、概ねこの「効果」と「課題」に沿った結果が見られた。

これまでの議論・実証実験を経て、日本加工食品卸協会では「持続可能な加工食品物流」の構築を進める上で、製配販各層が歩み寄るべき項目をまとめた「製配販各層に対する提言(案)」を作成。今後、その実現に向けて卸・メーカー間の活動を進めるとともに、小売業へのアプローチおよび製・配・販連携協議会との連携を強め、この「問題」解決に向けて取り組む方針だ。

【資料】日本加工食品卸協会・製配販各層に対する提言(案)
「持続可能な加工食品物流」の構築を進める上で、製配販各層が歩み寄るべき項目。

【製(メーカー)】
〇リードタイム延長を前提とした受注締め時間の後ろ倒しの取り組み
・13時締めを第1ステップと捉え、締め時間の更なる後ろ倒しの可能性について継続して取り組
む。
・締め時間後ろ倒しの為の必要条件・前提要件を配販と共有し、その解消に各層で協力する。その
上で受注締め時間の15時までの後ろ倒しの可能性を追求する。

〇リードタイム延長実施と合わせた、柔軟な緊急対応の許容
・リードタイム延長を実施した背景を認識し、単発的に発生する緊急対応を許容した上で、その検
証を継続する。

【配(卸店)】
〇メーカー発注の原則EDI化、緊急対応等、負荷業務の抑制
・メーカーの受注調整業務の負荷となる要件を理解した上で、受注締め時間を後ろ倒し
に取り組む事を前提として、その要件を解消する事に率先して協力する。

〇リードタイム延長に伴う需要予測精度向上に努める
・配販で連携して、精度の高い販売情報を共有し、需要予測の精度向上

〇リードタイム延長による一定の在庫増加リスクへの柔軟な対応

【販(小売業)】
〇特売、新商品の適正リードタイム日数確保と計画数量化・追加の抑制
・納品日から「▲8日前受注・計画発注化・原則追加なし」の業界標準の推進

〇小売→卸間での定番発注締時間の前倒しへの協力

〇納入期限の統一化の検討
・賞味期間:180日以上の全てのカテゴリーにおいて、納入期限の統一化
メーカー→卸:賞味期間2/3残余
メーカー・卸→小売:賞味期間1/2残余業界標準とする

〈冷食日報2021年11月1日付〉