ラーメン新時代は冷凍? 市販・EC ともに拡大傾向に、新たにラーメンを発売した企業も

日清本麺「ゆず塩ラーメン」
コロナ禍に冷凍食品の需要は大きく高まり、最近では高単価な冷凍食品も販売を広げている。その中でラーメンは、テレワークなど家庭で過ごす時間の増加もあり大きく成長している。また、より品質の高い商品の需要もコロナ以前と比べて高まっており、ラーメン店のスープや麺を使った冷凍商品の販売も伸びている。

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冷凍めんの売上の上位はパスタか素材うどんだ。ラーメンの割合は決して大きくない。日本冷凍めん協会が2021年に発表した2020年の「冷凍めん年間生産食数調査」によると、市販冷凍麺の中で、「セットめん・調理めん」の生産食数は3億8,890万食(前年比32.2%増【協力企業数が毎年変動するため前年比はすべて参考値】)で、最も多い「パスタ」は1億3,019万食(23.9%増)だった。「中華めん」は1億1,436万食(37.5%増)で、大きく伸長したもののパスタより若干少ない。

ただ、パスタについては「売場でも一定のスペースを確保できており、急拡大はしないのでは」(業界関係者)と予想する。その中でラーメンは、パスタと比較して売場スペースは大きくない。そのため、施策によっては拡大の余地をまだ残しているとの見方もある。

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2022年2~3月に発売された市販向け冷凍食品を見ると、日清食品冷凍は昨年投入した新ブランド「日清本麺」から新たに「ゆず塩ラーメン」を追加した。TVCMも放映して訴求を強める。キンレイは「麺屋はなび」監修の台湾まぜ麺や博多豚骨ラーメンを投入している。また、これまでラーメンを扱っていなかったニチレイフーズは「冷やし中華」を発売した。レンジで温めるのに冷たい麺を楽しめるという今までになかった商品として注目を集める。

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キンレイ「お水がいらない 博多豚骨ラーメン」

キンレイ「お水がいらない 博多豚骨ラーメン」

〈ラーメン店の「冷凍ラーメン」も拡大傾向に〉
さらに、ネット通販などでラーメン店が自店の冷凍ラーメンを販売し始めている。「宅麺.com」では、2021年は販売食数が70万食を超え、2019年の3倍以上を記録した。「Japanese Soba Noodles 蔦」や「飯田商店」などの人気店が多数参加しており、2022年3月時点の加盟店数は194店舗となっている。
 
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「コロナ禍になってから、店舗まで食べに行けない人の注文も増えた」と話すのは、「宅麺.com」の運営会社、グルメイノベーション(東京都渋谷区)の井上琢磨代表取締役。行列のできるラーメン店の味を自宅でも楽しめるようにすることをコンセプトとしている。また、ラーメン店の負担にならないよう、追加の投資を必要としない形にした。
 
2月からは新たな取り組みとして、ラーメン店からレシピなどを借りて製造を請け負う「宅麺クラウドキッチン」を開始した。ライセンス契約を結んだラーメン店が監修し、店舗とそん色ない味になるまで繰り返し開発しているという。販売の一部をライセンス料としてラーメン店に支払う。
 
冷凍自販機でさまざまな店舗の冷凍ラーメンを扱う「ヌードルツアーズ」も順調に推移しているという。手掛けるのは、都内で製麺業を営んでいる丸山製麺(東京都大田区)だ。
 
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丸山製麺 冷凍ラーメンの自販機「ヌードルツアーズ」

丸山製麺 冷凍ラーメンの自販機「ヌードルツアーズ」

始めたきっかけを丸山晃司取締役は「元々は飲食店向けの販売しか行っていなかったため、コロナ禍に飲食店が休業になるなどして売上は落ち込んだ」と話す。その中で、冷凍自販機を活かし、さまざまな店舗のラーメンを自販機で扱うことを思いついたという。
 
2022年2月時点では22都道府県に自販機を設置している。参加店は、二郎系ラーメンで人気の「バリ男」や、ビブグルマンに掲載された「カネキッチンヌードル」など20店だ。「欠かすことのできない事業に成長した」と語った。
 
イートアンドホールディングスは、冷凍ラーメンの通販サイト「ラーメンジャーニー」を開設した。23店舗が参加している。特徴は、スープと麺を同じ鍋で調理できる商品を扱っている点だ。多くの商品は麺とスープを別々の鍋で温める必要がある。イートアンドでは湯切り済みの冷凍麺を開発し、スープと麺を同じ鍋で温められるようにしている。今年4月にはサイトのリニューアルを予定し、新たなイベントも検討している。
 
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〈広がる冷凍ラーメン 先々に期待〉
メーカーの商品と共に、着実に支持を広げているラーメン店の冷凍ラーメン。コロナ禍に冷凍食品自体の利用が増え、冷凍食品へのネガティブな印象が薄れたことで、一般的な小売店で売っている商品だけでなく、高単価な商品の販売も伸びている。
 
他方、外食需要の代替として伸びたという側面もある。2021年10月に緊急事態宣言が解除された際、市販の冷凍食品は売上が落ち込んだという。高単価な冷凍商品も「はっきりと分かるぐらい落ちた」(関係者)ようだ。
 
しかし、長引くコロナ禍が消費者の心理にどのような影響を与えたか、先々では分からない。今までは、美味しいものを食べる際は「外食に行く」という選択しかなかった。今では「冷凍商品の取り寄せ」などの選択肢も生まれている。その時々で、自由に、さまざまなラーメンを食べられる取り組みが進んでいる。
 
〈冷食日報2022年3月22日付〉