日本水産の食品事業 2022年度第1四半期は2ケタ増、家庭用冷食惣菜好調で弁当も堅調、業務用は中食堅調にレジャー食回復、販売予測精査が課題に

日本水産・梅田浩二取締役常務執行役員食品事業執行
日本水産は8月9日、東京・西新橋の本社で専門紙向けに食品事業説明会を開催し、梅田浩二取締役常務執行役員食品事業執行らが食品事業の方針などについて説明した。 

8月4日に開示した食品事業の連結業績は、売上高が前年比10.5%増929億円、営業利益28.9%減36億円と増収減益となった。販売数量の増加に加え、円安や値上げによる販売価格の上昇も増収に寄与した一方、急激なコストアップに対し、値上げが追いつかず減益となった。

梅田常務は「2月に実施した値上げは商品・企業によって時期がずれた所もあったが、概ね受け入れられてる。一方、値上げを決めたのは昨年11月で、そこから原料高騰、為替変動でコストアップが続き、春の値上げではそれをカバーできていない」とした。 

そのうち、ニッスイ単体(国内)での食品事業(チルド事業除く)の売上高も前年比7%増と伸長。内訳は家庭用冷食2%増、家庭用ハムソー前年比100%、家庭用練り製品5%増で、家庭用食品計で3%増。業務用食品が15%増、常温食品が6%減だった。また、チルド事業も1%増と増収だった。一方で収益は全体的に苦戦したという。 

家庭用冷食は、値上げ後も個食、惣菜を中心に販売が堅調で増収となった。惣菜カテゴリは前年比22%増と伸長、鶏製品は消費者キャンペーンと連動して売場展開し、シェア拡大を図った。また、弁当カテゴリが3%増と市場を上回り、ユーザー・利用シーン拡大を目的としたキャンペーンの効果が出せた。 

一方、収支は想定以上の為替悪化と価格改定遅れによる経費増が影響した。 

第2四半期は、夏休み含む夏場、レンジ調理ニーズ拡大に対応する米飯・からあげカテゴリを強化。7月全国発売の「松屋監修キムカル牛めし」や、既存の「辛メシ」フライドチキンやから揚げ類、「大串やきとり」など夏向け商品を増力する。 

熊谷賢一家庭用食品部長によれば、今秋の新商品では、ワンプレート「まんぞくプレート」は伸長が期待される個食商品で、市場に少ない「白ごはん」タイプの商品として小売業の反応が良く、また「ハピもぐ ツナマヨ焼きおにぎり」新しい切り口の商品として引き合いが良いという。 

なお、中野博史執行役員食品事業副執行によれば、2022年7月に火災に遭った北九州ニッスイの冷食工場は、現在解体中で一旦更地にするという。北九州ニッスイが担ってきた焼きおにぎりの生産能力は、八王子工場の増設で8月までに回復。また、アメリカンドッグの生産は今春ハチカンに移管した。一方、大学いもは休売中で、現時点では品位を保てるような工場を選定中だという。 

業務用食品は、引き続き中食商材が堅調に推移しているほか、レジャー関連の外食商材も回復傾向にあり、2ケタの伸長となった。 

調理品では、水産揚物伸長が継続。また、安城工場の設備増強で増力した焼売も、春夏新商品中心に新規導入が進んだ。農産品は、枝豆が顧客増加や外食復調で回復した。また調味料カテゴリでは、今秋、スープやフィリングの「FISHERMAN’S DINING」シリーズを新たに展開しており、今後も調味料販売を強化していく。 

一方、課題としては予算以上のコストアップによる収支悪化のほか、マーケットが急激に変化する中、対応が追いつかず供給がひっ迫した商品があったという。金澤建支業務用食品部長は「第1四半期、人流回復によるレジャー食、スナック類の需要急拡大に機敏に対応できなかった。コロナの影響による海外工場での労働者の入国制限や中国の移動制限があり、日本から現地を訪れることも難しく開発面でも一部支障があった」という。 

第2四半期は、こうした供給ひっ迫ラインへの対応を強化し、販売予測の精査などを進める。また、調味料ではNB新商品・既存品の売り込みのほか、PB品の早期導入に向けたワークも実施するという。 

家庭用加工品(ハムソー・練り製品)は、値上げの後、全体の動きは堅調だが、売価帯により好不調が見られるという。主力カテゴリでは細ちくわ12%増、太ちくわ6%増、かに足フレーク3%増、ソーセージ1%増だった。 

常温食品は、瓶詰・レトルトは好調だが主力の青物缶が不調で全体では前年を下回った。 

チルド事業は行楽需要、人流回復によりおにぎり・サンドイッチが好調。6月後半の気温上昇で冷やし麺も売上回復し、増収となった。

〈冷食日報2022年8月10日付〉