嗜好の多様化や若者のアルコール離れ、人口減少と既存ユーザーの高齢化など、酒類を取り巻く環境は厳しい。焼酎についても「多様性がなくなり、コモディティー化が進んでいる。価格競争やアイテムカットが進んでいるのが大きく影響しており、業界として打破できていない」(メーカー)など、低迷が続いている。県別では、宮崎県が霧島酒造の好調に引っ張られ、2014年から2016年の酒造年度(7~6月)における本格焼酎の出荷数量で、3年連続日本一となった。ただ、来年は明治維新150周年を迎え、NHK大河ドラマで「西郷どん」が放映される。すでに鹿児島県の各メーカーは関連商品をそろえ、大幅な増加が見込まれる観光客や、小売店の「鹿児島フェア」などに対応できる体制を整えている。

「焼酎は鹿児島の文化であり宝だ。その鹿児島の焼酎の文化が揺らいでいると、危機感を持っている。鹿児島の焼酎をもっと飲んでもらい、売って、売って、また1位を奪還しないといけない」と、2月に開催された鹿児島県本格焼酎鑑評会表彰式で、総裁の三反園訓鹿児島県知事は力強く語った。

来年2018年は、日本一の“奪還”を実現するまたとないチャンスと言える。冒頭述べたように明治維新150周年の節目で薩長土肥の4県への注目が集まり、影響力の大きいNHK大河ドラマの「西郷どん」が放映される効果により、鹿児島の焼酎の販売数量の増加が大いに期待できるからだ。

薩摩酒造は11月1日からテレビや雑誌、SNSで「白波」ブランドとして初のキャンペーンを九州限定で実施する。今月2日からは、鹿児島最大の繁華街である天文館近くの屋外広告で、「黒白波」の新広告をお披露目した。西郷隆盛と大久保利通の若かりし頃の2人が、この先の日本を変えていこうと大志を抱くイメージで、「焼酎の維新は、薩摩から。」というコピーを掲げる。「芋焼酎は“薩摩”ということをきっちりと伝えていかないといけない」(同社)。関連商品として、この2人の偉人に思いを馳せた本格芋焼酎「薩摩獅子(さつまじし)」も発売している。

本坊酒造は過去に商品化した「西郷どん」の商標を持っており、大河ドラマを機に商品開発を行った。「特殊な原酒を使っているので限りはあるが、観光客が増えた過去の例からも数多く売れると思う」(同社)。小正醸造は、西郷隆盛を表現した美濃焼の徳利に白麹製本格芋焼酎を詰めた「さつま小鶴西郷徳利」を数量限定で新発売。ツートンカラーの「西郷500ボトル」も大々的に提案していく。「『西郷どん』の放映で観光誘致が盛んになるので期待したい。量販店からも求められた」(同社)。山元酒造も関連商品として鹿児島限定で発売した「本格芋焼酎吉之助」が好調で、「芋長期貯蔵酒維新の煌」の反応もいいという。関連会社のオガタマ酒造でも「泣こよかひっ飛べ」を発売した。

その一方で、好調が続くトップメーカーの高い壁が立ちはだかる。霧島酒造は主力商品の「黒霧島」が来年、1998年に宮崎限定、翌年に全国発売して以来20年を迎える。「節目の年でもあり、ご愛飲いただいている皆様方への感謝の気持ちを何か表せないか企画検討中」(同社)。また、総工費157億円をかけて志比田工場を増設する。志比田第二工場は来年7月に完成し、8月の稼働を予定している。既存の工場は土日もフル稼働している状況のため、供給体制が整うことで、さらなる伸びが期待される。

〈食品産業新聞2017年11月16日付より〉