モトックスは23日、フランス・パリ「ディスティレリ・ド・パリ」から創業者のニコラ・ジュレス氏を迎えたセミナーを同社オフィスで開催した。運営は武蔵屋。同ディスティレリ(蒸留所)の創業は2015年。フランスでもクラフトジンはブームになっていたが、「マーケティングコンセプトだけでジンを造ったのではない」とジュレス氏は言う。

パリ10区北駅近くにある家族経営の高級食料品店「ジュレス」家に生まれたジュレス氏はもともとウイスキーに興味があり、ディアジオ社で15年にわたりコンサルティングとして経験を積む中、自分の蒸留所を立ち上げようと決意。また、食材店のオーナーとしてこだわりの食材の造り手から話を聞く中、「いいものを造るには技術だけでなく、美しさがなければ」との考えもあった。コニャックやカルバドスだと伝統に縛られるが、自由な発想で理想とする蒸留酒を創るには、美と食の都であり、自分が生まれ育ったパリしかないと考えた。

だが、フランスでは基本的にAOC のない土地で蒸留酒を作ることはできない。また、パリのような大都会では、火災の心配があるため、これまで蒸留所の設立が禁止されていた。ジュレス氏は連日役所と粘り強く交渉・説得を続け、4年かけてようやく受理されたという。ちなみにボトルラベルに記された数字「751301」は、「パリで2013年に許可された第一号蒸溜器」を表しているそうだ。

〈香水にインスパイアされたオートクチュールジンの基本は「美しいフレーム」〉
ジュレス氏は、若い頃に研究した香水とスピリッツの間には、「香りをつくる」という共通項があることに気付く。「ワインは自然と時間の産物だが、スピリッツは自分でデザインできる。ではどうやって個性を出すか?」考える中、「ZEN(禅)と同じように、いらないものをそぎ落とし、美を追求する」と決めた。ボタニカルの数に頼ることなく、マセラシオンもしない。香水のように「美しいフレーム」を創造し、香水のようにベースのニュートラルアルコールにボタニカルを溶かし込む。
香水にインスパイアされたオートクチュールジン

香水にインスパイアされたオートクチュールジン 設計図

設計図によると「バッチ1」(左)は、ウッド、フラワー、スパイス、フルーツの要素をベルガモットがつなぐ。キナ抽出物をジンそのものに溶け込ませた「トニック」(中)はウッドとスパイスが一本の柱になる。レ・ユニオン島のボタニカルだけを空輸して使う「ベル・エール」は、エキゾチックからシトラス、そしてウッディへと流れがある。

蒸溜器はドイツ・アーノルドホルスタイン社製。「オートマではなく一眼レフのようにひとつひとつを調整できるよう」カスタムメイドでオーダーをかけた。また、加水は軟水で一日1Lずつ、2か月以上を費やして手作業で撹拌することで「アルコールと水が馴染み、水で割っても薄まらない」。

3年間で90種以上のジンを造った。「伝統的なジンではなく、ボタニカルの数を競うわけでもない」。いずれもスタイルは異なるが、すべてに共通するのは「香りの凝縮感となめらかなアルコール、そして美しいフレーム」だ。ボタニカルも基本的にフレッシュなものだけを自ら市場で選んで使うことも、こだわりのひとつ。

カクテルにしても楽しめるが、お勧めは「ベル・エールをベースに、ベルモットの代わりにフィノ(シェリー)を使ったネグローニ」。フードペアリングも勧める。なかでもトニックに生の魚が合うそうだ。日本取扱いアイテムは現在3品で、いずれも500ml/7,500円(税別)。

〈酒類飲料日報 2018年8月27日付より〉