アサヒビールは今年の事業方針として“基幹ブランドの強化と新需要の創造”を掲げており、RTDにおいては“もぎたて”“ウィルキンソンRTD”“贅沢搾り”の3本柱に注力し、年間で前年比112.6%となる500億円を目標としている。

※RTD=Ready To Drink、チューハイ・サワー等のふたを開けてすぐ飲める低アルコール飲料。

今年3月には福島工場に14億円を投じて、ビール類などを製造している既存のラインでRTD商品の製造を可能にする設備投資を実施し、調合タンクやカーボネーション設備も新たに導入。この設備投資により、同社のRTD商品製造能力は2018年と比較して約2割増となる。

大規模な投資の他にも各商品の大幅なリニューアルや新商品・限定商品の投入も積極的に行っている。RTD市場のさらなる盛り上がりに寄与するアサヒビールの戦略について、マーケティング本部RTDマーケティング部の藤本健部長に伺った。(以下、アサヒビール藤本部長)
アサヒビールRTDマーケティング部藤本健部長

アサヒビールRTDマーケティング部藤本健部長

〈「圧倒的な果実のフレッシュ感」を再度強調/「アサヒもぎたて」〉
まずは「もぎたて」だが、当社の中ではトップブランド。ここ最近は少し苦戦したが、大幅なリニューアルを機に持ち直してきており良い流れが来ている。

「アサヒもぎたてまるごと搾りレモン」

「アサヒもぎたてまるごと搾りレモン」

リニューアルでは従来から行っている「収穫後24時間以内に搾汁した果汁のみを使用」「劣化を抑制し、果実由来の香りを維持する超低温殺菌技術の活用」に加えて、製造工程を見直し、1商品当たりの製造時間を4%短縮することで劣化を抑制。劣化を抑制する抗酸化素材の種類や配合を見直したほか、容器空寸の縮小により劣化の原因となる酸素量を削減し、同商品の特徴にさらなる磨きをかけた。
 
パッケージも大幅にリニューアル。デザインの選定では、従来の定量調査や定性調査などに加え、今回新たに、消費者の無意識的な反応を科学的に検証できるニューロリサーチを採用した。これまで高アルコールのRTDで使用されることが多い黒色の部分の面積を減らし、“パっと見”をする缶体上部に木を模した緑色のデザインを入れた。同商品が持つ魅力について“高アルコール”であることに加え、“鮮度”を訴求するためのもの。売り場でも目立つデザインとなり手に取ってもらえる機会も多くなっている。
 
プロモーションとしては、前年は“食との相性”を訴求していたが、発売時から訴求してきた“24時間以内の搾汁”による“圧倒的な果実のフレッシュ感”という価値が少し希薄になってしまった。そこで今年は原点回帰ということで、改めて果汁のフレッシュ感にフォーカスしたプロモーションを実施。TVCMでは山口智子さんを起用し、「もぎたて」の価値を前面に押し出した“教えてあげる篇”を4月2日から放映している。

山口智子さんを起用した「もぎたて」CM“教えてあげる篇”

山口智子さんを起用した「もぎたて」CM“教えてあげる篇”

競合品にはない価値を訴求し、伸長が著しい高アルコールRTD市場の中で差別化を図りながら、顧客の獲得に努めていきたい。
 
〈ヘビーユーザーからも支持され前年比39%増で推移/「贅沢搾り」〉
昨年発売した「圧倒的な果実感」が魅力の「贅沢搾り」は、1~5月で前年比131%と大きく躍進。想定していた20~30代の女性を中心としたエントリーユーザーに加えて、一定数存在していた“たまにはアルコールが低く、飲み口がソフトで、より果実感を感じられる商品が飲みたい”というヘビーユーザーからの支持も頂けたことで、間口を拡大し好調に推移している。

「アサヒ贅沢搾りレモン」

「アサヒ贅沢搾りレモン」

今年2月に実施したリニューアルでは、果汁などの量を調整し、甘味や酸味、香りのバランスを見極め、果実感・果汁感をさらに強化。限定商品の投入も積極的に行っている。プロモーションは、昨年から引き続き出演していただいている嵐の相葉雅紀さんに加えて、新たにモデル・女優の本田翼さんを起用した。よりターゲットに近い方から魅力を訴求してもらう。果実を食べているかのような味わいを訴求するべく、コミュニケーションでも“丸かじりチューハイ”というキーワードを前面に押し出している。
 
〈炭酸水No.1ブランド「ウィルキンソン」の「強炭酸」魅力押し出す/「ウィルキンソンRTD」〉
「ウィルキンソンRTD」シリーズも3月に大幅にリニューアル。リニューアル後はアルコール度数9%の「ウィルキンソン・ハードナイン」と、6月に発売した7%の「ウィルキンソン・ドライセブン」の2シリーズを展開しており、いずれも国内No.1ブランドの炭酸水「ウィルキンソンタンサン」が持つ絶対的な価値である「強炭酸」を受け継いでいる。
 
〈クリアで軽やかな飲み口の「ウィルキンソン・ハードナイン」〉
9%の「ウィルキンソン・ハードナイン」シリーズは2018年発売の「ウィルキンソンハード」シリーズの実質的な後継商品。既存の商品ではベースとなるスピリッツにジンと当社独自のフルーツスピリッツを用いていたが、リニューアルを機にウオッカも使用する「トリプルスピリッツ製法」を採用することで、クリアで軽やかな飲み口を実現。特徴である炭酸も、ガス圧を約1割高めて、当社RTD史上過去最高のガス圧とし、「強炭酸」「甘くない・ドライ」の味わいを際立たせた。

「ウィルキンソン・ハードナイン 無糖ドライ」

「ウィルキンソン・ハードナイン 無糖ドライ」

パッケージでは「WILKINSON」のロゴマークの面積を拡大し強調するとともに、プロモーションでは新たに俳優の藤原竜也さんを起用。「知らなかった、炭酸でチューハイがこんなに美味しくなるなんて」というキャッチコピーで魅力を発信する。

「ウィルキンソン・ハードナイン」CMには藤原竜也さんを起用、「炭酸にこだわると、お酒はうまくなる。」を訴求

「ウィルキンソン・ハードナイン」CMには藤原竜也さんを起用、「炭酸にこだわると、お酒はうまくなる。」を訴求

〈レモンフレーバーのみ展開する「ウィルキンソン・ドライセブン」〉
7%の「ウィルキンソン・ドライセブン」はレモンフレーバーのみで展開するシリーズ。「喉にぐっとくる」炭酸感と、弾けるようなレモンのフレッシュな風味が特徴的な商品だ。
 
豊かなレモンの風味が特徴的な商品だが実は果汁は使っていない。というのも、果汁を入れてしまうと殺菌工程において、密閉状態でより多くの熱をかける必要が出てくるが、その際に缶内部圧力が上昇してしまう。一方で同ブランドの魅力は“炭酸の刺激”であり、強炭酸では缶体強度が保持できないという課題があった。このように従来の技術では容器の強度の都合上、炭酸の強さと果汁の多さはトレードオフの関係(何かを達成するために別の何かを犠牲にしなければならない関係)となっていたが、炭酸の強さを維持しつつ豊かなレモンの風味を表現するべくニッカウヰスキーが開発した、特許も取得しているレモンスピリッツとレモンエキスを採用することでこの問題を解決。絶対に他社には真似できないという自信がある。

「ウィルキンソン・ドライセブン ドライレモン」

「ウィルキンソン・ドライセブン ドライレモン」

味わいについては、まずは“のど越し”の良さを追求し、そのあとに芳醇なレモンの香りが来るような設計としている。ビールを例にすると、ピルスナータイプのビールはごくごくと何杯も飲むことができるが、エールタイプの香りが強い、濃厚なビールはそうはいかない。RTDも同じ考えで設計しており、香りと味感のバランスを何度も調整することで、何杯でも飲み続けられるような風味を追求し、この味わいとなった。現在日本で発売されているRTDの30%、料飲店のサワー類では40%がレモンフレーバーとなっており、いわば業界の中心となるフレーバー。その世界で我々もしっかりと戦える商品となるべく育てていきたい。