〈「日EU・EPA発効に伴うワイン販売について」流通小売アンケート〉
本紙「酒類飲料日報」はこのほど、首都圏のSM(食品スーパー)チェーン各社に対し日EU・EPA発効時の欧州ワインの値下げや販売動向についてアンケート調査を行った。

日EU・EPAは今年2月1日に発効し、ワインの輸入時の関税が即時撤廃された。そのため、様々なコスト上昇により値下げは難しい環境の中で、メーカー、卸、輸入各社は一斉に値下げを発表した。それぞれコスト構成や従来の価格が異なるため下げ幅はバラバラではあるものの、EU産のワインのうち安価なものはチリ産ワインの価格に大きく近づいた。チェーンの規模、展開地域の消費傾向や酒類に関する販売方針などの違いから一律に比較することはできないが、回答があったものを紹介する。

〈欧州ワイン値下げはほとんどのチェーンが実施〉
質問では、欧州ワインの値下げ有無、販売数量が伸びた銘柄、値下げ直後(2~3月)のワイン全体の販売動向、3月以降のワイン全体の販売動向などを聞いた。また、欧州ワインの販売スペース拡大を行ったか、今後取扱い拡大意向はあるか、日EU・EPAに関する消費者の認知度はどうだったかを質問した。回答は値下げ有無を除き自由記述。

欧州ワインの値下げ有無では、回答のあったうちほぼ9割のチェーンで値下げが実施された。酒税法の改正やコスト上昇の影響で、安売りしづらい中で販促の目玉としたチェーンもある。他方、値下げはしたものの、大きな影響がなかったチェーン、値下げ分を数量がカバーできず売上は減少したチェーンも存在する。

好調、販売数量を伸ばしたワインとしては、「直輸入低価格品500円前後、スパークリングワイン1,000円前後」といった回答のほか、様々な銘柄が挙げられた。挙げられたのは、「フレシネ」「フレシネコルドンネグロ」「マルティーニアスティ」「モエ・エ・シャンドン」「マドンナ」「ドンロメロ」「ハウメ・セラブリュット」「プリンスデバオ」「トップバリュリゴル」「キャンティ」「バロンドレスタックボルドー」――など(順不同)。

値下げ直後の動向としては、「前年の約2倍」、「前年比20%増」、「8%増」など大きく伸ばした回答があった一方、「微増」、「減少」との回答もあった。過半数は増加と回答している。

さらに、発効から1カ月がたった3月以降のワイン全体の販売動向は2月以前と比べどうだったか聞いたところ、2月と同様に過半数は増加と回答した。「10%ほど金額ベースで増加している」「5%程度アップ」「欧州ワインが全体的に伸長している。特に値下げ幅の大きい“スパークリングワイン”が伸長」と増加した回答があった。半面、「下落」「やや下落」「数量は若干伸びたが金額ベースでマイナスと思ったより厳しい」といった声も。動向はまちまちで、市場全体が好調とは言い難い。

値下げを実施しなかったチェーンに理由を聞いたところ、「今は収益重視、売上高というのはいつでもできる。単品によっては安くなったと伝わりづらいものもある為」と利益面での判断も。

2月以降、欧州ワインの販売スペースを拡大したかどうかを聞いたところ、回答のあったうちの半数以上で「変更なし」との回答だった。一方、値下げ後の動向として、売上増と回答したチェーンはおおむね拡大との回答で、「取扱いSKU数を増やした」「常時拡大しているわけではないが、EPA関連のセールの際は拡大して販売している」などの回答があった。

欧州ワインの今後の取扱いについて、数量、銘柄などの拡大意向はあるかを聞いたところ、回答のあった内過半数は拡大意向だったが、条件付きでの回答が多い。「販売状況による」「足元の実績を見ながら少しずつ」「低価格帯、中価格帯」「価格が下がる事により、値ごろ感のある商品(味と価格のバランス)が増えれば」といった条件が挙がっている。一方、「あまり気にかけてはいない。味、価格、ラベル等お客様ニーズに応えられるものであれば産地は関係ない」「現状維持もしくは縮小」などの意見もある。

日EU・EPAによるワイン関税撤廃についての消費者の認知は高かったと感じられたかと聞いたところ、過半数は「高くなかった」「思ったより盛り上がらなかった」と回答している。ただし、欧州ワインの販売を伸ばしたチェーンに限ると「高かった」又は「2月ごろは高いと感じられた」と回答している。各店舗での情報発信などとの連動で、来店客の消費動向、認知度にも変化が表れた可能性がある。

〈市況判断は「ワイン低価格化による浸透」「お酒離れへの危機感」など〉
日EU・EPAに限らず、近年から足元にかけて、ワイン市況(売場)や酒類の販売について感じることがあるかを聞いたところ、様々な意見が寄せられた。

「ワインの低価格化により、日常的に利用されるお客様が増えてきていると感じる」「ユーザーの知識は向上、オーガニックへの関心アップ」といったプラスの市場変化が挙げられたほか、「従来伸長を続けてきた“チリ産ワイン”が落ち着いてきた。“チリ産ワイン”の拡大に伴い、単価が下降しているため特長のある商品や“オンリーワン商品”の売り込みを行い、単価を上げながら売上を確保していく」「今回のEPAのように話題があれば売上につながることがまだあると感じている」と販売拡大への見通しも語られた。

他方、ワイン業界、酒類全体への危機感を示す声も多く、「新規ユーザー不足、流入が少なく流出が多い」「ワイン市況はというより酒類全体で若い方のお酒離れがあるからか、厳しい状況にある」「酎ハイ、ハイボール、ウイスキーにトレンドが集中しており、ビールや酎ハイからも流出している。お客様ニーズがそこにある以上、単価施策や新しいきっかけが作れないと業界としての低迷は止まらないと感じる」「ワインの売上の増減はワインを知らない人にどれだけ飲んでもらえるかにかかっていると思う。しかし、メーカー、輸入者、小売と勧める努力をしていない」などの声が挙がった。

〈酒類飲料日報 2019年7月17日付〉