”日本初”の本格ロー・ノンアルコールバー「Low-Non-Bar」東京駅近くに開店

店名を冠したコンセプトカクテル「LOW-NON-BAR」
アメリカを代表する高級オーガニックスーパー「ホールフーズ・マーケット」は2019年末、「2020年のフードトレンド」としてノンアルコール飲料を挙げた。ノンアルコールのカクテル「モクテル」から「ゼロプルーフ」(アルコール0%)と呼ばれるノンアルコール飲料はハッピーアワーの定番メニューだ。

日本でもノンアルコールビールが年々市場を広げ、市場規模は10年で4倍になった。ノンアルコールRTDも増えており、量販市場では定着しつつあるが、料飲店でのチョイスは運転者のためのノンアルビール以外、まだソフトドリンクしかないのが現状ではないか。 「お酒は飲めなくても、お酒を飲んでいる雰囲気は味わいたい」「ソフトドリンクでは味気ない」という需要は確実にある。

そんな中、東京駅近くにこの3月、日本では初となる本格ロー・ノンアルコールバー「Low-Non-Bar」がオープンした。扉を開けると、まさに誰もがイメージする「バー」がそこにある。棚にはアンティークのグラスのコレクション。メニューを開けば、想像力をかきたてる「カクテル」の多彩さに魅せられる。だが、なぜ「ノンアルコール」バーなのか? 同バー創業者カクテルワークス・オーチャードナイト代表取締役宮澤英治氏に話を聞いた。

〈ノン&ローアルコールカクテル22種揃え、「モクテルの楽しさ」伝える〉

「Low-Non-Bar」創業者・宮澤英治氏(カクテルワークス・オーチャードナイト代表取締役)

「Low-Non-Bar」創業者・宮澤英治氏(カクテルワークス・オーチャードナイト代表取締役)

数年前、体調を崩した宮澤氏はお酒を控えることになった。お酒は飲めないが、バーには行きたい。だが、ノンアルコールカクテルの選択肢はあまりにも少なかった。
 
「カクテルは、方程式の世界。レシピも素材も少ないノンアルコールカクテルに苦手意識を持つバーテンダーは多い。でも、プロが苦手とするカテゴリーこそ、ビジネスチャンス。10年にわたりバーを経営してきて“バーの間口を広げたい”と考える中、ノンアルコールにそのポテンシャルを感じた」。
 
お酒は控えたいが、仕事帰りにどこかへ寄りたいというニーズは確実にある。お酒を飲まない若年層が増える中、新しい場の提供が必要だ。「海外ではバーが生活の一部という方は多い。カクテルが世界的なブームとなる中、バーの楽しみ方はお酒だけではないことを伝え、モクテルの価値や楽しさを日本にも根付かせたい」との思いは強い。
 
客層は、20代が中心。「お酒が飲めないけど、バーに行ってみたかったという方々に喜んでいただけた」と、宮澤氏も笑顔を見せる。
 
だが、ノンアルコールバーで苦労したことを尋ねると「たくさんありますよ」と苦笑した。
 
「まず、高品質なノンアルコール商材が少ないこと。日本初の国産ノンアルコールスピリッツ“NEMA”や英国産の“シュラブ”を使いつつ、求める味わいをお店でハンドメイドすることも多い。お酒と違って賞味期限が短く、管理にも気を遣う。さらに普通のバーならウイスキーやスピリッツのショット売りができるが、ノンアルコールでは難しい。カクテルの完成度を追求すると、提供に時間がかかるのも課題のひとつだ」。
 
スタンダードカクテルのツイストから、絶妙な香りのマリアージュが楽しめる一杯まで、カクテルメニューは現在、ノンアルコール・ローアルコール各11種の計22種。レシピ考案には、錚々たるバーテンダー6人が協力した。いずれも一杯1,400円で提供する。決済は完全キャッシュレスというのも新しいスタンダードだ。
 
コロナ禍で営業自粛を余儀なくされた5月には、店名を冠したコンセプトカクテル「LOW-NON-BAR」で「ステイホームモクテルセット」(6杯5,000円)のオンライン販売も開始。6月15日には、アルト・アルコ社と共にノンアルコールECサイト「nolky」をオープンした。コロナ一色の2020年だが、日本における「ノンアルコール元年」として刻まれる年にもなりそうだ。
 
◆ノンアルコールECサイト「nolky」
https://www.no-lky.com/

 
〈酒類飲料日報2020年6月22日付〉