コロナウイルス禍に伴う営業自粛要請やSTAY HOMEの流れを受け、バー業界も大きなダメージを受けている。酒販免許の一時緩和で、“カクテルキット”のテイクアウトは可能になったが、カクテルの販売には「酒造免許」が必要だ。カクテルキットも、酒類が含まれる場合は都道府県内の販売に限られるという規制があった。

バーならではの価値であるカクテルで、できることはないか。さまざまな可能性を模索する中、「リキュール免許を取得している会社なら、課税商品の混和・商品化が可能」とわかり、「ボトルドカクテル」の開発に踏み切ったのが、スピリッツ&シェアリングCEO南雲主于三氏だ。「旨味ビターズ」などを展開するJCCエージェントの山崎勇貴氏と6月、ボトルカクテル第一弾となる「ブリティッシュ・ネグローニ」(500ml/4,800円)を限定発売した。

これに先駆けて、3月には「日本初」となるボトルドカクテルを「ボクテル」として発売したのが、ザ・リッツ・カールトン東京だ。第一弾「ボクテル」は「ザ・リッツ・スプリッツ」(350ml/5,000円)。「目新しく実験的なアプローチを追求するカクテルのトレンドというべき新たなスタイル」(料飲部長ジェレミー・エヴラール氏)。ギフトボックスに入れて販売するほか、レストランやカフェでも提供。7月には「ボクテル」第二弾となる「コニャック・オールド・ファッション」をリリースした。

〈「バーテンダーのクリエイティビティとプレミアム素材」という付加価値〉
「ボトルドカクテル」への参入は加速している。7月8日には、WEBマガジン「BAR TIMES」が購入型クラウドファンディングサイト「BAR TIMES LAB」を立ち上げ、第一弾となるプライベートブランド「バータイムズ ボトルカクテル」から、新宿「Bar Ben Fiddich」オーナーバーテンダー鹿山博康氏が監修した「BENFIDDICH MANHATTAN」(500ml/8,000円)を発売した。
新宿「Bar Ben Fiddich」オーナー鹿山博康氏(左)と、製造担当JCC山崎氏(右)

新宿「Bar Ben Fiddich」オーナー・鹿山博康氏(左)と、製造担当のJCC山崎氏(右)

コンセプトは「バーテンダーのスペシャリティ」というだけあり、鹿山氏が得意とする薬草酒を使ったオリジナリティあふれるカクテルだ。
 
さらに7月9日には、焼酎の蔵元である小正醸造がクラウドファウンディングサイト「MAKUAKE」で、「ボトルドカクテル」の新ブランド「BARTENDER CRAFT」を立ち上げた。小正醸造が製造するスピリッツをベースに、プロのバーテンダーの創造性を加えたカクテルで、ほうじ茶ジンをベースにダンデライオン・チョコレートのカカオニブを使った「#01CACAO&HOJI NEGRONI」と、桜島小みかんジンをベースにカシスリキュールとアペリティフワインを使った「#02FRAGRANT PARISIEN」を発売する(各1本入り飲み比べセット6,000円~)。監修は、前者が虎ノ門ヒルズに新店「Memento mori」をオープンした南雲氏、後者は札幌の名店「the bar nano gould.」の富田健一氏

「#01CACAO&HOJI NEGRONI」「#02FRAGRANT PARISIEN」

「#01CACAO&HOJI NEGRONI」「#02FRAGRANT PARISIEN」

「ボトルドカクテル」展開の課題は、缶入りRTDとの差別化や付加価値をどう伝えるかだが、ボトル入り高級茶の成功例を考えると、「需要創造型」商品として期待できるのではないか。
 
「バーテンダーのクリエイティビティによるプレミアムな味わい」という価値で売る、理想的なビジネスモデルが構築できるかもしれない。
 
小正醸造も「家族や友人との団欒やオンライン飲み会に、一人での晩酌に。そのままで、ロックスタイルで、何かとミックスしてなど自由な発想で楽しむことができる」と提案する。
 
今後、フレッシュな果物や素材を使った冷蔵のボトルドカクテルや、プレミアムなお茶やコーヒーを使ったボトルドカクテルなどが出てくれば、さらに面白くなりそうだ。
 
バーは、店独自の世界観や非日常性の中で、オーダーメードのお酒や会話を楽しむ場所である。だが、これからは一流のバーテンダーが創る珠玉のカクテルが、どんなお店でも、家庭でも、アウトドアでも楽しめるようになる。さらに、日本のバーティンディングが世界的に注目される中、海外への展開も期待できそうだ。
 
〈酒類飲料日報2020年7月13日付〉