「酒類を学問する」と言われると想像するのは何だろう。例えば微生物工学の研究室がある大学で麹や酵母の働きを学ぶことだろうか。はたまた食品関連の学科がある高校で現場の即戦力となるような知識を学ぶことだろうか。とにかく生物系の学問を修めるイメージが強いと思われる。東京農業大学の醸造学科などはまさにその一例だ。

しかし、近年さまざまな角度から酒類を切り取り、学問に取り入れる動きが活発になってきている。その代表的な大学が新潟大学、山梨大学、鹿児島大学の3校だが、2021年11月25日に共同で「第1回 日本の酒シンポジウム」を新潟大学とオンラインの両方で開催した。当連載ではシンポジウムで発表された、それぞれの大学の取組の概要と研究成果を紹介する。 

〈大学、県、組合の3者連携でセンター設立〉
2017年に新潟大学、県立として全国で唯一の日本酒専門の試験研究機関である醸造試験場を有する新潟県、日本一酒蔵が多い新潟県の酒蔵を取りまとめる新潟県酒造組合の3者が連携協定を結び、2018年に「日本酒学センター」が設置された。

当初は有志の研究者が自主的に集うグループだったが、2020年に学長直轄の全学共同教育研究組織となり大学の正式な組織としてスタート。現在は発酵・醸造など理系分野を統括する「醸造ユニット」、歴史や文化など文系分野の「社会・文化ユニット」、医系分野の「健康ユニット」の3つのユニットで構成されており、それぞれのユニットの単独の研究のみならず、分野横断型の研究も進められている。

同大学が提唱する「日本酒学」とは、日本酒を対象に広範な学問を網羅する対象限定領域横断型の学問で、取り扱う対象は、原料(水・酒造好適米等)や微生物から醸造・発酵の知識と技術、そして日本酒が消費者の手に届くまでの流通や販売、マーケティングに関する領域、さらには醸造に関連する気候や風土、地理的表示保護制度(GI)などの地域性に関する領域、歴史や酒税、醸造機器、日本酒のたしなみ方や健康との関わりなど、日本酒に関連する多岐にわたる領域を対象としており、将来的には「日本酒学」の拠点としての立ち位置を確立し、世界中から「日本酒学」を学びに来てもらえるような存在を目指すとしている。 

〈「酒の陣」、経済波及効果は30億円超に〉
シンポジウムでは唯一人文科学系の研究を発表した新潟大学は、新潟県酒造組合が主催している「にいがた酒の陣」の経済効果を発表。 「にいがた酒の陣」は2004年から始まったイベントで、モデルとなったのが、ドイツのミュンヘンで1810年から開催されている「オクトーバーフェスト」。「その土地を大切にし、県外及び国外から来た人たちと共に、地元の食と地酒を楽しむことがコンセプト」(同組合)。

ここ2年はコロナ禍の影響で開催されていないが、2019年は2日間で14万人以上が来場するなど、県内でも屈指の規模を誇るイベントだ。 研究によると、2019年の「にいがた酒の陣」来場者1人当たりの消費支出額は、日帰りであれば1万898円、宿泊であれば3万8,671円となっており、来場者の消費支出総額を26億9,339万円と試算。経済波及効果を算出する際には上記の購入者価格から生産者価格(新規需要額)に変換する必要があり、これを変換すると27億6,865万円となる。

新規需要額から県外に流出したとされる金額(8億687万円)を控除して、県内の生産活動に投入される県内需要額(=直接効果)を19億6,176万円と推計。直接効果を生じた部門(産業)が他の部門(産業)から原材料や部品等を購入することで誘発される生産額(=1次間接波及効果)の推計は6億7,915万円。

さらに、直接効果と1次間接波及効果の業務に従事した人の所得の増加分が新たに消費に回ることによって誘発される生産額(=2次間接波及効果)を推計すると、1,201万円となった。以上のことから「直接効果」「1次間接波及効果」「2次間接波及効果」を合計することで推計された経済波及効果(総合効果)は、30億5,294万円に上るとした。

〈酒類飲料日報2021年12月22日付〉