日EU・EPAで大枠合意、豚肉では差額関税制度維持、セーフガード確保

山本有二農林水産大臣は6日夜、記者会見で日EU・EPAが大枠合意に至ったと発表した。日EU・EPAは2013年4月に交渉を開始、4年以上に及ぶ交渉を行い、6日に安倍総理とEUのユンカー欧州委員会委員長がブリュッセルで首脳会議を行い大枠合意した。

山本大臣は「麦・乳製品の国家貿易制度、豚肉の差額関税制度など基本制度の維持、関税割当やセーフガードなどの有効な措置を獲得し、農林水産業の再生産が引き続き可能となる国境措置が確保できたと考えている」とした。特に、豚肉では差額関税制度を維持したほか、豚肉・牛肉で長期の関税削減期間と輸入急増に対するセーフガードを確保したことを強調した。なお、乳製品では、ソフト系チーズについて、関税割当にとどめ、枠の数量を国産の生産拡大と両立できるものとした。脱脂粉乳、バターでは、国家貿易を維持し、限定的な民間貿易枠を設定するにとどめた。

一方、EU側の関税では、牛肉、水産物など輸出重点品目を含め、ほぼすべての品目で関税撤廃を獲得(ほとんどが即時撤廃)し、EUの5億人の市場に向けた輸出環境を整備することができた。

また新たな国際環境に入る中で、「農水省としては、わが国の農林水産業の国際競争力を強化し、輸出産業への成長を目指した強い農林水産業の構築のため、交渉で獲得した措置と併せて、万全の対策を講じる」と述べた。

具体的には、「総合的なTPP関連政策大綱」に盛り込まれている体質強化対策は、これまでの実績の検証を踏まえた所要の見直しを行ったうえで、必要な施策を実施する。牛・豚マルキンの経営安定対策は、日EU・EPAの大枠合意の内容、TPPの状況などを踏まえて必要な検討を行っていく。EU向けの農林水産品・食品輸出の拡大では、豚肉、鶏肉、鶏卵、乳製品など畜産物、加工食品などの輸出条件の改善、国内の環境整備を図っていく。

なお、発効時期はユンカー欧州委員長が「19年初めを考えている」と発言したとの報道があるが、農水省では、「韓国とEUや、カナダとEUのFTAの状況をみると、2~3年間かかる」との見方を示している。