各輸出事業者による輸出の現状と輸出戦略/日本畜産物輸出促進協議会

畜産日報 2018年3月29日付
〈各市場で和牛の認識高まる、現地ブロガーを活用したPR活動に注力〉
日本畜産物輸出促進協議会(事務局:中央畜産会)は23日、東京・千代田区のTKPガーデンシティ御茶ノ水で、17年度の牛肉の輸出に関する報告として「各輸出事業者による輸出の現状と今後の輸出戦略」と題した講演会を開催した(「各畜産物の取組みと今後の活動の方向性」については既報)。伊藤ハム、スターゼンミートプロセッサー、ミートコンパニオン、日本ハムの4社による活動報告が行われた。

はじめに、同協議会が和牛に関する海外向けのPR活動報告として、冊子や動画を紹介した。冊子は2013年に制作され、和牛統一マークの紹介や、日本産和牛の特徴、牛トレーサビリティ制度と品質保証、和牛を使用したレシピなどを掲載している。また、和牛の飼育環境についての問い合わせが多いことから日本の風土や、繁殖・肥育農家の紹介といった内容も取り上げている。18年度以降のPRに活用するため新たに動画も制作、全編約15分で、現在、日本語・英語・広東語の3ヶ国語を用意している。これらのPR媒体を活用し今後も和牛の魅力を海外にアピールしていきたいとした。

4社の活動報告では、伊藤ハムの荒尾義隆マネージャー(ANZCO Foods Europe 駐在)が、「EUにおける和牛輸出の現状と販売戦略」と題して講演。EUへの販売戦略として、国内農場からEUの販売先まで一括して管理を行う“インテグレーション”を活用した、独自ブランド「ITO WAGYU」を展開することで、現在EU域内16ヶ国への販売を可能にし、対EUの牛肉輸出量も17年度132tと順調に推移していると説明した。販売促進活動として荒尾マネージャーは、「ロイン系以外の部位の販売を積極的に行った。また、海外の方に実際に日本に足を運んでもらい現場を見てもらうことで更に理解を深めてもらうことが出来た」とし、和牛セミナーの実施や海外得意先の日本招待の様子も報告した。

スターゼンミートプロセッサーの井野岳司部長は、「輸出の現状と輸出戦略について、供給数量の拡大~日本の食肉を世界へ」と題して講演した。同氏は、「輸出エリアは拡大しており、特に米国・台湾への輸出が増加した。今後は豪州・韓国への輸出解禁を期待している」という。現在は、輸出量の拡大を目指し、阿久根工場では月間850頭の輸出候補牛をと畜、それに伴い積極的な商品提案を行っている。また、輸出対応工場に関しては現状、鹿児島と宮崎に集中しており、東北・北日本の工場の活用も検討中だ。瞬間冷凍商品や電場技術(賞味期限延長)といった先進技術を活用し、鮮度や賞味期限についても対応を強化している。井野部長は、「嗜好品マーケットの他に、スーパーなどへの食肉マーケットを開拓していくことで輸出量の拡大へとつなげていきたい。販売先構築のためには、料理提案、食肉加工技術者派遣、招致事業といった取組みを行い、オールジャパン体制で和食・日本食文化の拡大を図っていくことが求められる」と指摘した。

ミートコンパニオンの植村光一郎常務取締役は、「輸出の現状と輸出戦略」として、これまでの海外でのPR活動とその反応を報告した。香港では62のアイテムを紹介し、各部位の味見も行った結果、評判もよくフルセットで売れたという。また現地メディアの対応として、「香港は現地ブロガーの情報発信力が大きく、口コミの重要性もあると感じた。和牛に対しての関心も高く、アジアの重要な拠点となっている」と述べた。また香港のシティスーパーでは日本同様、韓国産の牛肉にロゴマークが付けられて販売されていたことから、日本も統一ロゴマークの認識をさらに高め、生産工程等のアピール強化が必要だと指摘した。ロンドンでも複数回イベントを行い、現地の料理人に現地向けの和牛料理を提案してもらうことで、徐々に和牛の認識が広まってきている。

日本ハムでは海外事業本部東山隆司氏から現場の取組みが紹介された。同社では海外に事業所を設けており、各事業所を通して海外ユーザーに販売を行っているため、コストが高いというデメリットはあるが、カット講習を行うなどの細かな対応ができるメリットがあると説明。また輸送コストについては、日持ちの短いチルド和牛を飛行機で輸送する際、できるだけ豚肉や鶏肉といった他の食肉と一緒に輸送することで、コスト削減を図っているとした。台湾では、自社でセミナーやカットの実演会を実施し、ユーザーに和牛の正しい取扱いを説明していると紹介し、イタリアでのレストランでのイベントの模様を紹介。現地の有名ブロガーのシェフとタイアップしたところ、100人を超える集客となり、このことからもインフルエンサーを活用していくことが、今後もPRにおいて必要であるとした。東山氏は、「今後も、国によって好みや調理方法が異なるので詳しい調理法や調理時間等を詳しく伝えてきたい」とした。

〈畜産日報 2018年3月29日付より〉

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