日本食肉市場卸売協会が24日に開催した「第36回経営トップセミナー」では、HACCP制度導入への対応について、飛騨ミート農業協同組合連合会、群馬県食肉卸売市場がそれぞれの取り組みを紹介した。

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飛騨ミート農業協同組合連合会の小林光士常務理事が、食肉市場におけるHACCP導入への対応について説明した。同社では、前施設時の約20年前からHACCPを導入しており、17年前に新築移転時には、HACCP対応として建築した。施設としては、牛のみを扱い年間6,000頭、約6割をカットしている。従業員数は約40人で、売上高は約100億円だとした。輸出に関しては、香港からはじまり、EUなど13の国・地域に輸出が可能で、職員のモチベーション向上のためにも、難易度の高い国・地域を狙っており、最近では豪州、アルゼンチンでも認可を得ている。

HACCPについては「改正により猶予期間を入れ3年でHACCPを導入する必要がある。導入できなければ、廃業することとなり分かりやすい制度となった。食品の安全な生産を保証するための予防システムで、各施設にあった各手順を作成し、工程の中で危害が予想される部分を科学的な根拠に基づき管理することが重要だ。また構築されたHACCPはPDCAサイクルによって運用していく必要がある」と述べた。

HACCP導入時の課題については、あくまでも予防システムであり、事故が起こってから取り組むものではなく、起こるべき危害を予測し、工程管理により予防するシステムだとした。その上で、HACCPチームを構成し、教育する必要があるとした。作業員教育も必要だが、作業員は全行程を理解する必要はなく、担当工程を理解する必要があり、各作業員の理解でHACCPが成り立つとした。ただしHACCPチーム構成員は全行程を理解する必要がある。HACCPの導入効果については、一律の作業が可能となり、事故(食中毒)の予防が期待される。導入後はPDCAサイクルにより、現状維持、さらに高いレベルの衛生管理体制にしていくことが課題になるとした。

〈群馬県食肉卸売市場、牛・豚でHACCP導入、牛では動物福祉対応でEU輸出も可〉
続いて群馬県食肉卸売市場品質管理課の田村美知枝氏が、同社の取り組みを紹介した。同社の17年度と畜頭数実績は、肉豚48万1,807頭、肉牛は1万3,761頭。品質管理課では商品の品質管理を行っており、輸出食肉の衛生管理も行っている。
群馬県食肉卸売市場品質管理課・田村美知枝氏

群馬県食肉卸売市場品質管理課・田村美知枝氏

HACCP導入については、1999年に米国規則に基づき、HACCPシステムを完全実施している。輸出相手国の衛生条件を満たすことで、現在は9か国に輸出が可能だとした。

HACCPによる工程の安全性管理については「従来の安全性管理は、完成製品の抜き取り調査が中心の品質管理であり、全製品を保証するものではない。HACCPによる管理では、原料の受入から製品の出荷までの工程を全て管理することにより、全製品の安全性を保障するもの」だと説明した。同社では、牛では99年にHACCPを導入し、“頭絡”を使用することで、動物福祉にも対応しEUへの輸出が可能となっている。

豚では2015年にHACCP導入、16年にはSQF認証を所得している。豚導入時には処理頭数が多いこと、処理スピードが速いことが懸念され、HACCP管理を理解させるために、担当者全員の会議参加、危害要因分析にも全員参加させ、危害要因の洗い出しが活発に行われた。その上でHACCP導入には、経営者のトップダウンや、社員教育、人材育成も必要だが、消費者に安全で衛生的なものを提供する必要性を意識することが最重要だとした。

最後に「生産者が愛情を込めて長い年月をかけて育てた、肉牛や肉豚を責任と自信のある技術で、衛生的に処理し、消費者に届けている。今後も安全な食肉を製造できるように努力していく」と述べた。

〈畜産日報 2018年7月27日付より〉