〈18年12月の需給展望 牛肉〉年末需要もA5での個体差大きく、加重平均では上昇幅は縮小

畜産日報 2018年12月5日付
〈和去A5は2,950円前後、A3は2,500円前後か〉
11月は需要期に入ったものの、比較的暖かい日が続いたことから、鍋需要は盛り上がりに欠け消費は期待には届かなかった。気温が高く11月の鍋つゆの売上げは2割減との見方がある中で、牛肉の販売量は、多くの店舗で前年を下回ったと見られる。

枝肉相場は、10月比で和去A5が48円高、同A4で109円高、同A3は160円高と4・3等級は100円を超す上昇となった。季節的な上昇とともに、低価格志向の中で安価な和牛、いわゆる大衆規格への引合いが高まっていることが要因。この時期は年末に向けパーツ(凍結)を仕込むため、こうした手当てが相場を底上げした。関連して交雑B2も66円高、前年比では366円高と高値を付けた。またホルスB2も7円高と高値が続く。

12月は、4日現在で首都圏は季節外れの暖かい陽気だが、週末には真冬の寒さに戻るとの予報で、再び鍋需要が戻ると期待される。極端に需要が盛り上がることは考え難いが、切落し、スライスだけではなく、クリスマス前後は輸入を含めたステーキ、かたまり肉の販促が見込まれる。年末の一時期を除けば安価な国産牛肉への嗜好は根強く、これらを勘案すれば、高値だった11月から大きく上昇することは難しい。A5はこれまで出荷調整で出荷が少なめだったが、年末に向けてその分が上乗せされ、等級内での格差が拡大することで平均は若干抑えられる。4~3等級は人気があるものの量販店の兼ね合いで価格が上げられない。そのため和去A5からA4~3、交雑種ともそれぞれ50円前後の上昇とみられる。12月はパーツの仕込みはほぼ終了し、銘柄牛など当用の手当てに移行するため、5等級でもパーツ向けの大型の牛は価格が付き難く、平均相場が抑えられることも背景にある。

11月の東京食肉市場の規格別の価格(生体、消費税込み)をみると、和去A5が前月比48円高の2,937円、A4は109円高の2,653円、A3は160円高の2,461円、交雑去勢B2は66円高の1,541円、乳去B2は7円高の1,109円となった。和去A5は、前年のこの時期に相場を押し上げた輸出向けのロースが前年ほどの勢いはなく、小幅な上昇にとどまった。だが、出荷頭数に占める5等級の比率が上昇する一方、安価な3等級などいわゆる大衆規格は物量が少ないこともあり大きく上昇した。交雑も数量が思ったより少なく上昇した。前年比でみると、和去A5は前年をやや上回って推移しているほか、和去A3が7月以降前年を大きく上回り、11月は前年比で245円高となった。同様に交雑B2は11月には前年比で366円高となっている。

12月の生産見通しは農畜産業振興機構の予測では、成牛の出荷頭数は2.0%減(1日当たりでは0.6%減)の9万8,200頭と見込まれる。品種別の出荷頭数は、和牛は1.9%増の4万7,000頭、交雑種は1.6%減の2万3,000頭、乳用種は8.5%減の2万6,700頭が見込まれる。和牛の出荷は増加するものの、交雑、乳用種で減少し、全体でも前年を下回ると見込む。輸入牛肉(チルド)は同機構の予測では、11月の輸入量は7.0%増の2万3,500t、12月は3.4%減の2万2,600tを見込む。12月は豪州産の輸入量が減少することで前年を下回ると見込んでいる。

11月の量販店では、15日のボジョレーヌーボー解禁、23日「勤労感謝の日」からの3連休などイベントがあったものの、気温が例年より高く、鍋需要はもう一つ盛り上がらなかった。あるバイヤーは、「鍋つゆは前年比で2割減との見方があり、牛肉、豚肉の鍋需要も気温の影響を受け不振だった」と話す。3連休を含め後半は冷え込みが進みある程度は回復したが、前半の落ち込みが大きかった。また、ここまで魚関係の不振が肉類の需要を持ち上げたが、今年はサンマが豊漁で価格も安く、平日の需要は一部、サンマに流れたとの見方がある。

その中で、売れ筋は切落しと肩ロースのスライスであり、気温が比較的高いものの、焼材は不振。中堅量販店では、和牛切落し350g・税抜1,290円などのジャンボパックを販売、大手チェーンでは黒毛切落しを年内100g397円で販売するなど、20日ごろまでは切落し中心の販売となる。ジャンボパックは、単価は下がるものの、1点ごとの販売価格の上昇で売上を確保するのが狙い。その後、クリスマス前後はステーキ、かたまり肉などの販促が行われるが、こちらは輸入牛肉となる。そして年末の1週間は和牛肩ローススライスなどすき焼き・しゃぶしゃぶ用が中心となる。また、低価格志向が払しょくされないため、等級、品種(和牛→交雑→乳雄)、部位など、より安価な国産の牛肉を求める動きはさらに強まっている。

これらを勘案した12月の相場は、昨年に和去A5の価格を引き上げた輸出向けのロースは今年はそこまでの勢いはなく、出荷を遅らせていた和牛がある程度出てくるとすればA5等級は、等級内の格差がさらに拡大し、大きな上昇は難しい。前述のように、12月は銘柄牛の需要が中心で、A5でも一般の牛はここで買っても年内に消化できないと判断すれば値が付かなくなる。銘柄牛と一般牛の格差が拡大し、平均では大きな上昇は難しい。A4、A3は引き合いがあるものの、量販店店頭では12月にも関わらず切落しが中心であり仲間価格は上げきらず、肩ロースもスライス需要が好調で一定程度価格は上昇しているものの、これ以上の上げは簡単ではない。交雑は出荷が少ない一方で引き合いが強く上昇も、すでに高値でありこちらも極端な上昇は難しい。このため、月間平均では各等級で50円前後の上昇とみられ、和牛去勢A5で2,950円前後、同A3は2,500円、交雑B2は1,600円前後と見られる。また乳去B2は1,100円前後とみられる。

〈畜産日報 2018年12月5日付より〉