農水省生産局の富田育稔畜産部長に2019年の畜産行政の課題と対応を聞く新春インタビュー。インタビュー後半は、豚肉の賞味期限延長の議論の方向性や和牛遺伝資源の保護、畜産基盤強化のための取組みについて話を聞いた。
 
――豚肉の賞味期限延長については


冷蔵豚肉の輸出のためには、賞味期限延長が必要であることから、日本畜産物輸出促進協議会の豚肉輸出部会において、畜産物輸出特別支援事業(17年度補正予算)を活用し、冷蔵豚肉の賞味期限の延長のために必要な衛生管理手法(加工処理施設内の温度等)について、国内4カ所の施設でサンプリングを行って試験研究を実施している。年度末までに研究結果をとりまとめることとしており、課題を整理して冷蔵豚肉の輸出拡大に繋がることを期待している。豚肉はブランド力があり、生産者も高品質なものを生産している。

昨年、国内で26年ぶりに、岐阜県において豚コレラが発生した。公的機関でも発生しており、養豚場は衛生対策を徹底する必要がある。また、野生イノシシの感染が続いており、野生動物の侵入防止対策のほか、車両の消毒、人の衣服や靴の交換など、飼養衛生管理基準を徹底して取り組んでいくことが重要である。なお、最近は国内でPEDの発生は少なくなり、豚肉生産は回復傾向にある。

他方、海外では中国や欧州でアフリカ豚コレラ(ASF)が発生している。今後も中国でASFの発生が続き、中国国内の生産量が減少するような事態が生じた場合、中国はさらに海外からの豚肉の輸入量を増やすことになるだろう。輸入豚肉の国際需給がどうなるか、世界の動きを注視する必要がある。

――遺伝資源の持ち出しについては

生体、精液、受精卵などを海外に持ち出す際には、家畜伝染病予防法に基づき、動物検疫所の輸出検査を受ける必要があるが、輸出検査を受けずに牛の受精卵などを中国に持ち出し、中国当局から輸出検疫証明書の添付がないことから輸入不可とされた事案が報道された。

輸出者に対し厳重に注意を行うとともに、受精卵などの輸送には、外見でも容易に判断できる特別な容器が用いられることから、船舶会社、航空会社、生産者団体、税関などに注意喚起を行い、同様の貨物を輸出しようとする者がいた場合には、動物検疫所に連絡するよう要請を行っている。

和牛は、日本固有の貴重な遺伝資源であるため、生産者団体などでは和牛の遺伝資源の輸出に大きな懸念を有しており、和牛の遺伝資源の輸出自粛に取り組んでいる。本件は大変遺憾なことと考え、厳正に対処すべく、事実関係の調査を進めている。今後とも、日本の貴重な遺伝資源が不正に海外に持ち出されることのないよう対応していく。

改めて、国内の畜産の生産基盤の強化は待ったなしの状況といえるが、肉用牛の生産基盤である繁殖雌牛の飼養頭数は、10年以降減少傾向にあったが、幸いにも、18年2月1日時点では、前年比1万3,100頭増の61万400頭となり、16年以降、3年連続で増加している。減少が続いていた生産基盤を立て直す芽が出てきた。この芽をつぶさないように、伸ばしていく。

また、乳用牛においても、飼養戸数は減少しているものの、飼養頭数については、16年ぶりに前年比5,000頭増の132万8,000頭と増加している。乳用牛の飼養戸数は減少しているが、それだけに残っている生産者の技術や経営能力はきわめて優れている。競争力強化支援法に基づく資材価格の低減や畜産クラスター事業などにより、畜産農家を支援していく。

これまでの行政の継続性もあるが、個人としては、貿易交渉が進展し畜産業界が転換期にある中で、海外に打って出る畜産物を作り上げるよう取り組みたい。関係者一体となって取り組むことで、日本の畜産は今後とも、輸入畜産物に十分に対抗していけると考えている。とくに若い経営者には自信を持って経営に取り組んでもらいたい。

〈畜産日報 2019年1月24日付〉