ハンバーグ新工場など増産体制を整備、19年は売りに徹する/スターゼン展示会会見

左から横田常務、永野副社長、中津濵会長兼社長、寺師専務
スターゼングループ総合展示会の開催に当たり行われた記者会見では、第3四半期までの状況、新ハンバーグ工場や食肉加工品への取組み、食肉マーケットの現状と展望、展示会の目玉などで次のように説明が行われた。
 
[永野章代表取締役副社長]

第3四半期までの状況は、取扱量・売上はほぼ見込み通り順調に推移した。しかし、原材料費の上昇、特に食肉では和牛肉、交雑種牛肉が非常に高値で年間を通して推移した。12月の需要期も高値で想定した利益が取り難い状況だった。物流費・輸送費の値上げも効いている。人手不足を背景にした労務費・人件費の上昇も加わり、この3つの要素が営業利益を圧迫した。昨年12月単月を見れば、昨年とほぼ同じ利益であり3重苦の中では健闘した。ただ11月に通期業績見通しを修正したが、これに収束される。通期はこの発表した数値に落ち着く見通しだが、景気はいざなぎ超えといわれるものの、実態、実感としてあるかは疑問であり、消費の先行きは不透明だ。1~3月は慎重な対応が必要になっている。
 
[寺師孝一代表取締役専務]

スターゼン食品本宮工場(ハンバーグ新工場)は、福島県本宮市に建設、昨年9月に竣工した。10~11月まではテスト生産、生産機械の稼働調節、松尾工場からの移管商品の対象企業の監査作業があり、12月から通常生産に入る。生産量はまだ満足できないが、まずは計画に近い数量を生産している。品質も想定通りの仕上がりで、竣工記念でリニューアルしたNBハンバーグもお客様に評価をいただいている。松尾工場を含めハンバーグの増産体制が整備され、今年は業務用を中心に様々なジャンルへの拡販を販売部門と協力して進め、今年は売りに徹する年としたい。加工食品のもう一つの柱であるローストビーフは、一昨年に増産体制を完了し、今年はもう一つギアを上げて生産体制を100%活かせるように拡販に取り組む。この展示会でハンバーグ、ローストビーフともに新商品を展示している。また広島のキング食品でつまみ系を作っているが、この増産体制も検討したい。世界的にイカが不漁で、その一方で家飲みスタイルが拡大しており、このマーケットシェアを取り込みたい。ビーフジャーキー、カルパス、カニカマ、魚肉シートを作っており、イカの代替に魚肉シートに引合いがある。

[横田和彦常務取締役(スターゼン販売社長)]
TPP11、日欧EPAで海外からの原料、製品の調達の流れが大きく変わると想定している。国内では人手不足対策が待ったなしの状況。当社のメインのお客様である全国のスーパーマーケットチェーンでは、人手不足と技術者不足で店内の精肉カットが難しくなっている。当社は、食肉加工のプロを抱え、全国に加工センターを持つ。これをフルに生かしお客様のお手伝いを提案したい。なお、牛肉の価格が高い中で、分母はまだ小さいものの、ネット通販など今までの商品の置き場と違うところで売れており、最終加工製品になるところまで我々が作り上げ、お客様の要望に沿って直接、消費者に届ける仕組みも提案する。

今回の展示会の一番の売りは、食品廃棄の問題。肉をスライスした後のお客様の口に入らず捨ててしまう食品廃棄の数値を少なくする取組みを紹介する。会場にアウトパックのコーナーを設け、スライス加工しパックした商品を展示している。品質、見た目も切りたてのような状態。こうした取組みは、と畜場併設の衛生的な加工場を持ち、しっかりとコールドチェーンでつなぎ最終のお客様に届けるというスターゼンの特徴を生かせると考えている。

アウトパックのコーナー

〈新たな貿易体制に向けスペイン産生ハム、米国産ベーコンを提案〉
その後の質疑では、TPP11、EPA発効に向けた取り組みについて、鶉橋正雄取締役(スターゼンインターナショナル社長)が、「豚肉調製品、中でも差額関税のハム・ベーコンを展示している。これは11年で撤廃されるが、今回、スペイン産生ハムと米国産ベーコンを展示した。原木で輸入し国内でスライスする形を提案している。牛肉では、カナダ産・NZ産にフォーカスし、豪州産のトリミングだけではなく、NZも生産が可能であり、両国の価格を見て輸入できるメリットが出てくる。豚肉では、シーズンドポークの関税が現行20%だが、2年目に13.3%となる。6年で撤廃され、取り扱いを強化していく」と述べた。

スペイン産生ハム

関連して中津濵会長は、「これをチャンスととらえている。国内の産地事業も整備していく。海外で疾病があれば国内供給が重要になる。また、海外からも差別化するブランドを入れることを検討している」と新たな海外ブランドへの取り組みを示唆した。
 
アウトパック関連では、横田常務が「スーパーチャネルでは、自社でプロセスセンターを持つところが増えている。当社がスーパー向けに供給する8割がプロセスセンター用となっている。より加工度を高め機械に入れるだけでスライスできる状態にするため規格への対応を強化する。川上から一度に行った方が鮮度管理に有利であり、当社のアウトパック部門に任せていただけるよう提案を行っている」と、アウトパック対応の提案を改めて強調した。また中津濵会長は、「お客様で加工しづらい商品を受けて、産地工場で加工、レディ商品として届ける体制を整備している。工場でトリミングすることで、小売りだけではなく外食にも供給できるようにしたい」と述べた。
 
〈畜産日報 2019年2月4日付〉