ルーシーポーク社の新工場が本格稼働、プレミアムポーク「麦富士」の品質が一段とブラッシュアップ

プレミアムポーク「麦富士」
カナダ・ケベック州のルーシーポーク社(Aliments Lucyporc)は、ケベック州を代表する農業関連事業会社ロビタイグループの豚肉製造事業部門を担っており、1998年の設立以来、良質な穀物飼料と最先端の選抜・交配・育種技術を活用し、日本市場で高い品質評価を得ることを最優先事項とした豚肉生産・販売を追求してきた。

ルーシーポーク社が日本市場向けに供給する「麦富士」は、ここ数年、日本市場で急拡大しているカナダ産チルドポークの中でも、プレミアム品質ポークの「パイオニア」として評価され、同ブランドのプロジェクト開始から約20年の実績を持つ。

日本市場を最優先市場とするため、独自の畜種改良と大麦および小麦を中心とした飼料配合に依り、輸入チルドポークの中でも、そのジューシーな肉質・しっかりと締まった白上がりの脂肪がもたらす深い味わいが多くの顧客に支持され、全国の量販店はもちろん、フードサービスからハムソーメーカーおよび冷凍食品会社の原料など、多岐にわたる業態で使用されてきた。そして、その安定したおいしさ・安全性を前面に訴求して販売できるなど、差別化できる商品として認知されてきた。

〈~ブランド「麦富士」の優位性~ 一貫体制による日本人好みの肉豚生産〉
ルーシーポーク社の最大の特長はその一貫生産・販売体制である。

豚の遺伝子の管理・改良・育種から、養豚、配合飼料の設計・生産、豚肉製造、販売のすべてにおいて、委託生産など他人任せにせず、自社グループでの一元管理を行っている。豚の畜種は、20年以上の歳月を重ねて育種改良した門外不出の「デュロック」を止め雄とするLWDを採用。さらに自社でデュロック種豚専用農場を所有し、弛まぬ育種改良を続けている。このため、北米の種豚販売会社から買い付けたデュロックで生産を行う一般的なLWDとは肉質において明らかに目指す方向性が異なる。この同社が独自で開発してきたデュロックを止め雄とする肉用豚を、カナダ品質保証プログラムで認定されたわずか3農場のみで生産している。

ルーシーポーク社は、これら3農場と20年にわたる強固なパートナーシップを構築しており、3農場は、遺伝子から飼料および投薬プログラム、肥育システム、農場設備に至るまで同一のオペレーションで生産した生体を供給している。

さらに、3農場はすべてトラックで工場から2時間以内(100km 圏内)のアクセス圏に位置しており、生体輸送時にかかるとされるストレスを大幅に低減できるロケーションにある。

生体は、平均175日(25週間)をかけてじっくりと育て、規格内範囲の重量の生体のみを工場に出荷するため、常にサイズの安定した「こだわり」の豚肉が供給可能となる。また、生体は、すべてと畜前日に輸送・搬入され、平均20時間の休息を与えてストレスフリーの状態にした上でと畜処理を行っていることも、他社との差別化を図る大きなポイントである。

さらに、こうした一貫生産体制を活用した独自の生産履歴追及システムも構築している。このシステムによって、日本に供給される各包材にはトレースバックコードが印字されるため、このコードから生産農家・給餌飼料・投薬薬品・工場内各作業工程時間などの生産履歴が1ピース単位で把握することが可能となっている。これによって、万一何らかの問題が発生した際にも、速やかな原因究明と問題解決が可能となるなど、日本のエンドユーザーにとっても安心かつ信頼性の高い生産システムとなっている。

新工場の稼働によって品質が一段と向上、農場も含めた「麦富士」の生産体制拡大へルーシーポーク社は、創業以来、ケベック州ヤマチチにある自社工場で生産してきたが、今年4月23日から新たに取得した新工場で生産を開始し、一層の品質向上を図ることになった。新工場では最新鋭の製造ラインを導入しており、衛生的かつ合理的な方法で生産能力を大幅に増強している(今春から稼働開始するトラハン工場)。

なかでも特筆される点が、従来の皮はぎ方式から、垂直型スチームシャワーによる脱毛方式へと変更したことだ。全てコンピューター管理されたスチームシャワー処理により、表面の毛穴が開いた状態で脱毛処理が行われる。これにより、従来の皮はぎ方式に比べ、表面の細かい血合いが皆無となり、きれいな白上がりの脂肪となり、麦仕立て本来の良さをより一層引き立てる。もちろん、枝肉表面への豚毛付着も無く、菌数管理においても優れた結果をもたらしている。また、伝統的な湯槽による湯はぎ方式とは異なり、極めて衛生的で肉質へのダメージを最小限に抑えた処理方法である。

さらに、脱毛処理の後、ウィザードナイフで、肩ロース部分からモモに至る枝肉背骨側を部分的に皮はぎし、ブラストチラーで冷却することで、枝肉温度を、従来の皮はぎ方式よりも短時間でかつ効率的に下げる事を実現した。

こうした一連の新処理方式を導入したことによる効果が数値的にも明らかとなり、肉質テスト結果によると、と畜処理48時間後の保水性は、皮はぎ方式時ではドリップロスが2.0~2.5%であったのに対し、新方式では平均1.5%に改善している。また、PH検査でも、皮はぎ方式時の平均5.75に対し、新方式では平均5.85までに改善された結果が出ている。つまり、これらのテスト結果は、従来よりもなお一層「ジューシーで締りある肉質」の「麦富士」を証明する裏付けとなる。スチームシャワー方式は、日本でも、すでに大手ハムソー会社の豚肉製造基幹工場で採用されており、こうした事実は、優れた肉質の豚肉を製造できる「技術的水準の高さ」を裏打ちするものといえよう。

このほか、新工場の枝肉大分割をバンドソーで行うため、従来比、一層歩留まりおよび見栄えの両面においてより優れた商品を作れる事になった点も大きな改善点だ。

新工場の稼働に合わせ、農場も増産体制を敷き、配合飼料工場での増産工事を終えている。これに合わせて母豚数も現行の1万9,000頭から2万1,000頭へと増頭した。さらに、新しい試みとして、昨年11月から3農場すべてにおいて育成舎段階から、去勢・メス豚を分けて肥育しており、各々の性に適した肥育プログラムを実施する事で、ロースの肉芯サイズや「さし」の入り具合をより均一化することが可能となった。工場のオペレーションだけでなく、農場の段階から非常に均一化された豚肉を提供できる体制が出来上がったといえよう。

今春から稼働開始するトラハン工場

今春から稼働開始するトラハン工場

なお、新工場では、1日当たり最大3,200頭の生産能力があるが、移行当初は1,800頭(現行1,500頭)からスタートする予定だ。
 
ルーシーポーク日本事務所では、引続き、日本の顧客と緊密な連携を取り、カナダ側からの情報提供はもちろん、日本の顧客側からの声をカナダにフィードバックする体制を敷いていく。20年の長きにわたり「こだわり」の豚肉生産を追求してきた実績から、平均的な国産豚肉よりも、味わい深い豚肉として定着している「麦富士」。この春の新工場の稼働を機に、より多くの顧客に「麦富士」をお届けしていく方針だ。
 
〈畜産日報 2019年4月17日付〉