伊藤ハム米久HD2019年3月期決算、増収となるも物流費など販管費の増加により減益

伊藤ハム米久ホールディングス 宮下功社長
伊藤ハム米久ホールディングスは5月10日、2019年3月期の連結業績を発表した。売上高は前年同期比2.3%増の8,507億2,100万円と増収だったが、販管費が32億3,900万円増加したことなどにより営業利益は32.8%減の144億9,400万円、経常利益は35.8%減の156億7,900万円、当期純利益は32.9%減の105億8,800万円と減益となった。2020年3月期の連結業績は売上高が3.4%増の8,800億円、営業利益が24.2%増の180億円、経常利益が27.6%増の200億円、当期純利益が32.2%増の140億円を見込んでいる。

セグメント別の詳細は次の通り。
 
【加工食品事業】

ハム・ソーセージでは、消費者キャンペーンなどの実施により「The GRAND アルトバイエルン」「朝のフレッシュシリーズ」「ポークビッツ」などの主力商品が堅調に推移したが、業務用商品の伸び悩みなどもあり売上高は減少した。調理加工食品では、消費者の簡便志向・健康志向に対応した商品提案を強化して、チルドピザ「ラ・ピッツァシリーズ」などのピザ・スナック類、「サラダチキン」などのチキン商品、「レンジでごちそうシリーズ」など簡便調理を訴求した商品が好調に推移した。ハンバーグ・ミートボール類やトンカツなどフライ商品などの拡販に努め、販売数量が伸び売上高も増加した。

ギフトでは主力ブランドの「伝承」、ローストビーフや調理品ギフトなどの拡販に努め、歳暮商戦では販売数量、売上高ともにほぼ前年並みであった。この結果、加工食品事業全体の売上高は1.5%増の2,919億3,900万円と増収となったが、営業利益は生産・物流コストの上昇分を販売価格に転嫁しきれなかったことにより26.5%減の79億1,400万円の減益となった。
 
【食肉事業】

国内事業では、新規取引先の獲得や国内生産者との連携強化のほか、オリジナルブランドなど付加価値の高い商品の拡販に取り組み、売上高は増加。牛肉は、国産牛肉の相場高に加えて輸入牛肉も含めた調達コストの上昇の影響を受けたが、販売数量が伸びたことで売上高は増加した。

豚肉は、オリジナルブランド「アルティシモ・リバサム」「麦の誉」「菜の花そだち三元豚」が伸長したが、国産豚肉の相場下落の影響を受けて売上高は減少した。鶏肉は「大地のハーブ鶏」の積極展開などに取り組んだが、国産・輸入ともに前年の相場高の反動を受けた販売単価下落などの影響によって売上高は減少した。

海外事業は、アンズコフーズ社で売上高が増加したが、調達コストの上昇などの影響を受け収益面では苦しい状況だった。食肉事業の売上高は2.7%増の5,545億7,600万円だったが、営業利益は海外事業の収益環境の悪化などの影響で35.6%減の73億6,400万円となった

〈アンズコ社の構造改革を進め、海外事業の収益性を改善/伊藤ハム米久HD宮下社長〉
業務用加工商品は商品動向を把握し、リニューアルなど進める伊藤ハム米久ホールディングス(HD)は10日、東京都中央区の東京証券取引所兜倶楽部で2019年3月期決算発表会を開いた。会場では、宮下功社長、伊藤勝弘常務執行役員(コーポレート担当・コンプライアンス担当)、前田聡経理財務部長が出席し、同期の決算概況と今期(2020年3月期)の連結業績予想を説明した。

説明会で宮下社長は前期を振り返り、「19年3月期は増収減益となった。営業利益、経常利益、当期純利益ともに30%台の大きな減益の半面、売上げは2.3%の増収だった。このなかで、アンズコフーズ社の為替調整要因が約50億円あり、実質的には240億円程度の増収となっている」と説明。

利益面に関しては、「営業利益は前期比で70億円のマイナスとなり、最も大きな要因としてアンズコフーズ社の部分が前期比で32億円の減益となったこと、物流費が食肉と加工食品事業を合わせて30億円程度増加したところが大きい。また、経常利益は90億円ほどのマイナスで、一番大きな要因として、この2つの要因に加え、米国IPC社の減収要因も16億円あることが挙げられる」と述べた。

今期の連結予想は売上高8,800億円で3.4%の増収、営業利益が180億円の同24.2%増、経常利益が200億円の同27.6%増、当期純利益が140億円・32.2%増と予想している。宮下社長は、営業利益の減益要因にひとつである海外事業要因(マイナス32億円)に関して、アンズコフーズ社の構造改革を進めながら収益を改善していくほか、食肉・加工食品ともに販売数量を伸ばして増益につなげていく方針を示している。

このアンズコフーズ社の構造改革については、「アンズコ社の借入金の部分で、わが社の信用力を持った借入れに統一することで金利を抑える取組みを、この3月末にすべてその形に切り替えた。その意味で、今期からその効果が最大に出てくる。一年前から大部分をそのように切り替えたが、100%し切れていなかった部分もあり、4月からその効果がでてくる。これにより、金利で億単位での効果が出てくると想定している。それ以外にも、どんな点で損益が悪化しているのか、仕入コストの悪化も本当に外部要因だけのものなのか、仕入れの競争力がないのか、そうした点をできる限り自分たちで全て分析する。輸出・販売面でも本当に自分たちの価格が適正なのか、適正なマーケットプライスで販売できているのかを、ニュージーランドの貿易統計からの各項目の輸出単価と自分たちが販売するものを照らし合わせていく。そうすることで、売り負けているか、安売りしているのかといった部分も、輸出国別に自分たちと国全体の単価を比較するなかで、売り負けしているところがあればその部分を改善していく。さらに、全体最適をとるなかで、販売・仕入・工場と一体となって、いままで月1回の頻度で方向性など検討していたが、いまは毎週かつ毎日微調整を繰り返しながら、全体マージンの最適化を図っている。前期から取り組み始めており、徐々に効果が出てきている。まだ100%期待される効果に達してはいないが、こういうことを一つずつ積み上げていくことで収益性を高めていきたい」と説明した。

このほか、前期に苦戦した加工食品の業務用商品に関しては、昨年11月の中間決算発表時に、営業接点の見直しや様々な商品提案などのてこ入れ策を講じる方針を述べていたが、「まだ道半ばであるため、継続して取り組んでいる。価格の見直しあるいは新規商品の提案を踏まえて、業務用加工商品のところは肌感覚として10億円程度収益性が悪化していると感じている。とくに何アイテムか収益性が大きく悪化した商品を明確に把握しているため、こうした商品を中心にリニューアルなど通じて改善をはかっていく」と方針を示した。

〈畜産日報 2019年5月13日付〉