〈令和元年7月の需給展望 豚肉〉出荷減も末端消費低迷、上場頭数減で500円台後半の水準に

畜産日報 2019年7月3日付
〈疾病問題で需給不安定、波乱含みの要因も〉
6月は前月の大型連休明け以降の節約志向の強まりと梅雨の本格化が相まって末端消費の不振が顕在化し、豚枝肉相場も上物税抜きで549円(東京市場)をつけるなど、この時期としては珍しく前月比12円安となった。各パーツともに動きは鈍く、比較的マシなのはモモなど安価なスソ物で、枝肉高・部分肉安の流れとなっている。末端消費が予想以上に冷え込んでしまっているため、中間流通段階では枝相場高・部分肉安の逆ザヤは広がる懸念もある。そのため、7月の平均相場は税抜き570円と6月から値上がりするものの、前年7月の603円を下回るものとみられる。
 
[供給見通し]

農水省が6月6日に発表した肉豚生産出荷予測によると、7月の出荷頭数は前年比1%増の128.1万頭と、6月の127.7万頭からやや増加する見通しとなっている。7月は暦の関係で前年よりも1日分平日が多いが、稼働日1日当たりの出荷頭数は22日稼働で5.8万頭、21日稼働で6.1万頭と6万頭前後で推移するとみられる。ただ、大阪市場ではG20大阪サミットに伴い6月26日から7月1日までと畜が休止(セリは6月27日から7月2日まで休止)となること、南九州では7月第1週目の水曜日はと畜がないため、7月前半の全国出荷頭数は少なく、「海の日」の三連休を境に出荷のピークを迎える流れが予想される。

ただ、例年この時期は天候不順により豚の増体が悪化し、枝肉重量65kg 割れの小振りの出荷が増え、上物率の低下につながる可能性もある。7月は実需よりも、こうした出荷・上場頭数の動向が枝肉相場の押上げ要因となりそうだ。

農畜産業振興機構の需給予測によると、7月のチルド豚肉の輸入量は、前年同月比0.2%減の3.2万tとほぼ前年並みと予想している。

中国の需要増加でコストは上昇しているとはいえ、この時期の国内豚価の上昇もあり、特売商材として確りと3万t台の輸入が続く見通しだ。フローズン豚肉の輸入は現地相場が上昇しているとはいえ、4.5万t(前年同月比1.4%減)に達すると予想される。

[需要見通し]
5月の連休明け以降、食肉の消費不振が深刻化しつつある。最大10連休となった大型連休による消費疲れと梅雨の天候不順が重なり、「いったい何を食べているのか」(卸筋)と予想外の不振となった。一方、岐阜・愛知の豚コレラの影響で、中京圏送りの需要が続いているものの、全体として末端の需要は良くなく、6月後半からは生鮮物の投げ物が目立つなど、パーツ相場は逆ザヤを余儀なくされた。

7月は、天候に大きく左右される面が大きいが、消費者の節約ムードは引続き強く、正直、現状では需要の回復は見込めない。この時期、量販店の精肉コーナーでもしょうが焼き用や小間切れ・切り落とし商材を中心に品ぞろえされる以外は、目立った販促もなく、20日以降は夏休み入りで学校給食も止まるため、ウデ・モモの需要も鈍る方向にある。ただ、単価の安いモモに関しては先月下旬から動いており、学校給食休みを見据えて、下旬にかけて一部末端では販促も入っているもよう。その他のパーツも価格が安ければ動くといった塩梅のため、輸入チルドとの競合もありロースやカタロース、バラの中部位の苦戦が予想される。

[価格見通し]
6月の枝肉相場は、月後半も大きな値上がりはなく、当初予想よりも下回る結果となった。7月も足元の需要の下ブレ感からすれば、後半にかけて大きな相場の乱高下はなく、比較的安定して推移するとみられる。疾病や天候不順による増体不良など、供給事情での相場上げ要因があるものの、それ以上に末端不振により7月の枝肉相場は上物税抜きで570円(税込み620円)を挟んだ展開となりそうだ。一方、昨年の西日本豪雨は記憶に新しく、最近は天候の不安定要因も多いことから、乱高下の波乱含みの相場展開となる可能性もある。

〈畜産日報 2019年7月3日付〉