〈1例目農場には、海外からイノシシ群にウイルスが侵入し伝播か〉
農水省は8月8日、第9回拡大豚コレラ疫学調査チーム検討会を開催し、これまでに実施してきた疫学調査の結果について、中間とりまとめを行った。今回のとりまとめでは、28例目までを対象に分離ウイルスの性状分析、農場へのウイルスの侵入時期の推定、豚舎への侵入時期の推定、農場・豚舎への侵入ルートの推定を行っている。

分離ウイルスの遺伝子学的性状分析では、発生農場及び野生イノシシから分離されたウイルス株は、過去に日本で分離された株や、日本が備蓄しているワクチン株とは異なり、遺伝子亜型2.1dに分類され、近年中国国内で発生している、弱い病原性を示す豚コレラが原因であることが報告されている。中国以外では、東アジア地域の各国では流行株の解析が進んでいないため、近縁の株による発生が周辺国で起こっている可能性もある。国内発生例で分離されたウイルスは、中国または周辺国から侵入したウイルスと推定されるとした。なお日本で備蓄されているワクチンは有効性が期待できる。

海外から日本への侵入要因としては、1例目農場が最初に感染したと考えられ、1例目農場では海外との接点がなく、岐阜市では18年7月、8月に平年よりも多くの死亡イノシシが発見されており、これらが感染していた可能性もある。なお18年9月時点で感染野生イノシシが確認されていたのは、岐阜市と各務原市だけであった。輸入検査の受検は自己申告方式であり、輸入検疫を受けずに旅行者の手荷物などによりウイルスが侵入し、汚染された肉や肉製品が不適切に廃棄され、野生イノシシに感染した可能性がある。海外から直接1例目農場にウイルスが侵入した可能性よりも、海外からイノシシ群にウイルスが侵入し、1例目農場に伝播した可能性の方が高いとした。

農場や豚舎への侵入要因では、28例の多くで感染野生イノシシ由来のウイルスであると考えられるが、愛知県田原市の5例(9例、14例、16例、21例、23例目)では、近隣の発生農場由来と考えられる。このうち、9例目、16例目ではいずれかが地方から感染した可能性があるが、先に感染したとされる農場が感染したと考えられる時期には、近隣に野生イノシシの感染や他の発生農場は認められておらず、比較的離れた地域からウイルスが運ばれた可能性が高い。また愛知県瀬戸市の3例(15例目、19例目、22例目)では、周辺に感染野生イノシシも存在したため、感染野生イノシシ由来、近隣の発生農場由来、どちらの可能性もある。

その上で疫学調査チームは、農場及び豚舎への侵入ルートを遮断するために〈1〉毎日の健康観察と早期通報・相談〈2〉野生動物対策〈3〉適切な洗浄・消毒の履行〈4〉農場内での豚の移動時の対策〈5〉適切な飼料の給仕〈6〉感染リスクがある地域の農場から豚を出荷する場合の対策の徹底〈7〉適切な水の使用――を提言しており、これまでに農場に対して求めてきた内容を、改めて徹底することを求めた。

今後は29例目以降の発生事例の検討をするとともに、各発生農場への侵入時期をより適切に推定し、野生イノシシにおける感染状況を適切に評価するため、感染豚や感染野生イノシシにおけるウイルスの体内動態や免疫応答について検証を進める。また各発生農場由来のウイルス株や野生イノシシ由来のウイルス株の遺伝子解析などを実施し、農場間の関連性や野生イノシシ感染事例との関連性の検証を進める。豚コレラ発生のリスク要因と防御要因を明らかにするため、発生農場で実施されていた衛生対策と非発生農場で実施されていた衛生対策の違いなどについて検証する。さらに、豚舎内外での野生動物の動態調査や豚コレラウイルス遺伝子検出調査などを行い、野生動物による豚コレラウイルスの伝播リスクについて検証を進める。

〈畜産日報 2019年8月13日付〉