プリマハム フローズンのシェア高まる、「オレガノビーフ」が大幅伸長 北米産の拡大を期待、豪州では新たなプログラムも

プリマハム 取り扱いブランド 各種ロゴ
プリマハムの輸入ビーフの取扱いは、従来からチルドを主軸にした小売り向け販売を得意としており、パッカーの協力のもと、ユーザーの作業性や歩留まりを追求した独自の規格を提供してきた。このプリマハムの強みである規格開発力を生かし、前期から外食や中食業態向けに加工度を高めたフローズン原料の取扱いも伸ばしているところだ。

ブランド展開では、豪州では伊藤忠商事とティーズ・オーストラリアの3社で協同出資したフィードロットで生産した「オレガノビーフ」を、米国ではアグリビーフ社との取組みによる「ダブルアールランチ」シリーズ、カナダからはオンタリオ州畜牛飼育家協会がつくり上げた生産者の顔が見えるブランド「オンタリオコーンフェッドビーフ」を中心に独自のマーケティングを展開している。食肉事業本部食肉商品事業部長代理兼ビーフ部長の奥崎善行氏に、現在の取扱い状況と今後の重点政策を聞いた。

プリマハム 食肉事業本部食肉商品事業部長代理兼ビーフ部長 奥崎善行氏

プリマハム 食肉事業本部食肉商品事業部長代理兼ビーフ部長 奥崎善行氏

――前期の取組み状況は
 
現在、ブランドビーフとしては、豪州産「オレガノビーフ」、米国産は「ダブルアールランチ」シリーズ、そしてカナダ産の「オンタリオコーンフェッドビーフ」の3ブランドに注力している。ほかにも、例えば豪州産ではアンガス種に限定しワインの搾りかすを与えて200日以上肥育した「味わい葡萄牛」も長年取り組んでいるが、いまの市場ニーズが150日以上肥育のミドルグレインである「オレガノビーフ」にシフトしているため、現在は生産の拡大よりも維持する方針で取り組んでいる。
 
前期(4~3月期)の輸入ビーフ取扱いは、金額ベースで前期比107%、数量ベースで同105%となった(チルド・フローズン・内臓含む)。このうち、「オレガノビーフ」は現地で生産頭数を増やしており、同ブランドの取扱い数量は2018年度第3四半期から150%と大幅に増加、通期で125%の実績を上げ、プリマハムの輸入ビーフの取扱いを押し上げることができた。
 
これまで豪州産では、「オレガノビーフ」「味わい葡萄牛」といった、ワンランク上の品ぞろえに特化し、品質の良さやストーリー性などこだわりのある商品に注力してきた。前期も一般的な豪州産ショートグレインからオリジナルブランドに置き換わるなどして、結果、全体の輸入ビーフの取扱いは107%に着地している。
 
北米産の取扱いは安定している。プリマハムの取扱いも、日本市場全体の北米産の輸入量とほぼ同じ伸びだったといえる。とくに、カナダ産はTPP11の効果が非常に大きく、2月以降、分母は小さいながらも急増しており、これが今期の数字に大きく表れると期待している。
 
一方、プリマハムはこれまで量販店向けなどにチルドビーフをメーンに展開して伸長してきたが、前期はフローズンビーフの取扱いシェアも大幅に高めている。量販店などテーブルミート向けの需要が大きく拡大し難くなっているなか、中食や外食業態の需要は堅調で、プリマハムとしてもこれらの販売チャネルに向けて、加工度を高めた原料やオリジナル規格を通じて顧客に提案している。
 
――北米産のオリジナルブランドはいかがでしょうか
 
米国産では、「ダブルアールランチ」シリーズが、繁殖、肥育、飼料の配合、と蓄、加工までのアグリビーフ社の一貫生産管理体制により、希少かつプレミアムな商品として定着している。シリーズのなかでも最上級にある黒毛和種の血統を持つ交雑牛の「和縁牛」から、モデレ-ト以上のトップ1/3チョイスに限定した「ダブルアールランチシグネチャー」などの4種類のブランドを、「ダブルアールランチ」シリーズとして14年から販売している。さらに、一次加工品を手掛けられるのもアグルビーフ社の優位性であり、素材や顧客に合わせたTボーンステーキやショートリブのステーキカットなどを開発し提供している。
 
――今期のブランド戦略は
 
今期力を入れていくのは米国産と捉えている。米国産はもともと品質に定評があり、そのなかでもプリマハムは差別化できる商品・ブランドをつくってきた。今期も引続き、「ダブルアールランチ」シリーズなどに力を入れていく。そのうえで、プリマハムの販売チャネルが要望している、米国産を使った加工原料にも力を入れていく。とくにCVS弁当や外食向けの原料などに、現地および国内でひと手間加えた加工用原料を提供していく方針だ。
 
「ダブルアールランチ」シリーズは、いまの時流に合っており、徐々にマーケティングが出来上がりつつあり、新たな差別化を行う段階に来ていると捉えている。取扱い数量の拡大のためにも、ロイン系などこれまで扱っていなかった商品も提案する必要もある。このうち「和縁牛」は、来期以降の注力商品といえる。今後の日米二国間協議の後を見据えており、関税が下がることで、「和縁牛」のようなプレミアム商品ほど価格メリットが生まれるためだ。また、500日以上の肥育期間で仕上げているため、これまでは出荷月齢が30カ月齢をわずかに超えて日本向けに輸出できない牛もあったが、月齢制限が撤廃されたことで今後、より安定的な供給が可能となる。こだわりの商品を求める顧客や、国産牛に代わる高品質な牛肉として提案を強化していく方針だ。
 
豪州産に関しては、「オレガノビーフ」を中心とした販売を継続していく。アフリカ豚コレラの影響で中国からの牛肉需要が大きく高まる可能性があるなかでは、同ブランドのような一貫生産を行うサプライヤーとの取組みが安定供給・安定価格につながるといえる。「オレガノビーフ」を一括して肥育しているコンダンマインフィードロットに隣接している牧場では、種雄牛も生産しており、繁殖農場も2カ所展開している。独自のプログラムにより品質を向上させることができる点も一貫生産の強みである。この強みを生かし、「オレガノビーフ」の供給を年末に向けてさらに拡大させる方針だ。また、強豪国との買負けや、現地価格の高騰を防ぐためのオペレーションの見直しも進めており、19年度第3四半期以降にその成果が出始める流れだ。
 
豪州産ではこのほか、ニューサウスウェールズ州のパッカー・生産者との取組みにより、国産牛肉(ホルスタイン種雄)と同等以上の品質のある肉牛の開発を進めている。アンガス種をベースに、交配する畜種の選定や交配のパターン、飼料設計、肉質・産肉量などを各項目で検討を進めており、近くその検証結果が出る予定となっている。早ければ今年度第4四半期には出荷が始まる予定で、これを来期、再来期へと拡大させていく。
 
カナダ産の「オンタリオコーンフェッドビーフ」は、生産数量が限定されるため、各エリアで取扱い企業同士が競合しないよう、エリアマーケティングを展開していく。新商品としては、カナダAAAのトップチョイスグレードに限定した「オンタリオコーンフェッドビーフ・プラチナム」を7月から入荷する予定で、ある程度の物量に達してから本格的にマーケティングをする方針だ。
 
海外パッカーとの関係では、ナショナルビーフ社と規格化という点で協力関係を築いており、コモディティのなかでもプリマハム独自の規格づくりに注力している。同社はアイオワプレミアム社を買収したほか、ナショナルの株主であるマルフリグ社が、今年輸入が解禁されたウルグアイにも生産拠点を所有している。プリマハムとしてもここにどう参画していくか、南米産、欧州産も含めて様々な可能性について精査・検証をしながら進めていく方針だ。
 
【問合わせ】
プリマハム(株)食肉事業本部 食肉商品事業部 企画統轄課(TEL:03-6386-1810)
 
〈畜産日報 特別増刊号 第9号 2019Summer〉