新型コロナ経済対策案、「お肉券」で国産牛購入を促進、肉・牛の流通を止めない/自民党

〈食肉・外食・給食事業者の需要拡大に向けた取組みを支援〉
自民党は3月26日、農林・食糧戦略調査会、農林部会合同会議を開き、新型コロナウイルスに関する経済対策案を審議し、承認した。修文作業を塩谷立農林・食料戦略調査会長、野村哲郎農林部会長らに一任した。27日に全体の経済対策案を取りまとめる。

本紙(畜産日報)関連の経済対策案では、
〈1〉労働力確保をはじめとする生産基盤強化
〈2〉農林関係事業者などへの経営継続に対する支援
〈3〉需要喚起対策の推進
〈4〉畜産物の物流の停滞の解消対策
〈5〉畜産・酪農経営の安定に向けた対応
〈6〉外食、食品製造業等の食品事業者への対応
〈7〉農林水産物・食品の輸出に取り組む生産者・事業者への緊急支援
――を重点事項として挙げた。

〈1〉では、手続きの簡素化など入国できる技能実習生の円滑な受け入れ推進、農業高校・大学などの学生による援農や派遣事業者(JAなど)による人材派遣・研修・農機の導入支援、スマート農業の実証・実装の加速化などを通じた人手不足の解消推進、感染時の経営継続に向けた代替要員の確保に対する支援などを推進する。

〈2〉では、農林関係事業者などの経営継続に必要な返済猶予、税の減免措置及び納税猶予などを推進する。

〈3〉では、国内外における牛肉の需要喚起として、インバウンド需要の減少などによる和牛需要の大幅な低下に対応するため、「お肉券」など小中学生・高齢者などの消費者による国産牛の購入を促進するための取組み、食肉事業者・外食・給食事業者が行う販促活動など消費者の需要を拡大する取組みを支援する。また、国産農林水産物・食品の需要喚起として、一層の消費を促すため、米をはじめとする国産農林水産物・食品を消費者に購入してもらうための販売促進の取組、飲食店などの客足回復を図るための取組み(クーポンなど)を推進する。

〈4〉では、需要喚起対策では解消できない牛肉の過剰在庫などの物流の停滞に対応するため、需要先の確保や保管機能の強化、繁殖・肥育経営の産地での円滑な出荷の取組みを推進する。

〈5〉では、収益性悪化による経営継続への不安に対応するため、繁殖・肥育経営などへの実質無利子化・無担保化の融資枠の増額など資金繰りへの支援、共同施設などの整備を推進する。

〈6〉では、円滑な資金繰りの推進、国産原料の使用促進、食品事業者へのマスク供給を含めた衛生管理の徹底・改善、食品製造事業者の生産性向上・共同化などを図る取組み、感染拡大時でも事業継続が可能な省力化・自動化や卸売市場の機能の高度化などを図る取組み、などを推進する。また、技能実習生の就労時間延長などを推進する。

〈7〉では、海外拠点を含めた輸出事業者の事業・雇用の継続、商流への影響緩和、衛生管理の強化、輸出手続きの円滑化、コールドチェーンなどのインフラ整備、風評の払拭などの取組を推進し、輸出商流の早期回復・拡大を図るため、仕向け先の転換のための商談・プロモーション、品目毎の影響に応じた取組、需要回復時の輸出拡大などの取組を推進する。

野村農林部会長は「お肉券がインターネット上で批判されていることは理解している。ただ水産部会でも商品券を考えている。肉は、輸出・インバウンド需要が大幅に減少し、在庫は4~5カ月分抱えており、冷蔵庫に入らないという悲鳴が全国から聞かれる。場合によっては農家からの出荷を止めなければならないが、止められると牛舎で死んでしまう。肉・牛を流通させ、農家の出荷を止めなくてよい対策を講じる必要がある。肉の消費を促進しないと、農家にまで大きな影響がでる」と述べた。

また〈2〉については、食品産業事業者や輸出関係を含めるように修文するとした。参加した議員らからは
▽近江牛はインバウンド需要・県内流通に頼っていた。インバウンドが無くなったことで、市場でも価格が付かず大手スーパーで投げ売られている。
▽在庫・消費の問題に、ふるさと納税制度を活用できないか。緊急措置として返礼率を3割ではなく、10割、20割として自治体の買い上げに関しては交付税で対応する。非常事態のため期限を区切り、荒業を使ってでも消費拡大を図る政治決断を発動する場面だ。
――などの意見が挙がった。ふるさと納税に関し野村部会長は、返礼率3割を超えることに関しては現在、裁判も起きており、影響する可能性があるため難しいとの見解を示した。ただし、他部会でも同様の意見が挙がっていれば、党として調整するとした。

〈畜産日報2020年3月27日付〉