〈令和2年8月の需給展望 牛肉〉盆休み需要は小売り中心に期待、パーツも焼き材の引合い堅調

〈相場は休み明けの在庫補充の動き次第、全体として弱含みの予想〉
新型コロナウイルス感染症の広がりを受けて休業を余儀なくされていた外食店舗も、感染対策を講じながら営業を再開したことで牛肉需要は緩やかに戻りつつあった。

ところが、7月に入ると再び感染者数が増加し、政府がGo to キャンペーンを打ち出す一方で、各自治体では営業短縮や移動の自粛要請を行うなどちぐはぐさが見られ、この夏、国民もどのような消費活動を送ればよいのか不安とともに不信感も生じている。

牛肉にとって8月は盆休みを中心に消費が盛り上がる時期だが、上述の状況を受けて、今年は例年のパターンとは違った展開が予想される。とくに盆休み期間中の地方への帰省が少ない分、都市部を中心に量販店などの小売関係や、ファミリー層メーンの焼肉店などの需要は底堅く推移するとみられる。

枝肉相場も今週は盆休みに向けた買いで、相場を支えるとみられるものの、盆休み明け後の補充買いの動きは例年よりも弱いとみられ、枝肉相場は弱含んでくるとみられる。月平均ベースでは各等級・畜種ともに前月から一段下げの展開が予想される。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、8月の成牛出荷頭数は和牛で3万4,000頭(前年同月比4.5%増)、交雑が1万7,100頭(同3.5%減)、乳用種で2万6,100頭(5.2%減)となり、成牛全体では7万8,700頭(同0.5%減)と予想している。

和牛は相場低迷で出荷を控えていた牛もあると言われ、滞貨していた出荷適齢牛が、盆休み需要を見込んで出荷が集中するなど、実際の出荷はさらに多い可能性もある。一方、機構の需給予測によると、チルド牛肉の輸入量は2万3,100t(同11.5%減)、フローズンで2万6,100t(4.7%減)と前年を下回る予想。

外食中心に国内需要が悪化していることから、各社抑制気味の調達とみられ、輸入牛単体では少ないなりに需給のバランスが取れつつあるといえる。

〈需要見通し〉
7月の4連休は、梅雨明けが遅れたものの、再び自粛ムードの高まりから、小売り関係では予想以上に牛肉の売れ行きは良かったもようだ。

一方、8月の盆休み期間も量販店、とくに都市部の店舗では地方への人口流出が少ないとの見通しから、今年は焼き材を中心に和牛・国産牛の品揃えを強化しているもようだ。

枝肉の手当ても、先週は見込み部分と地方送り分の手当てが一巡、今週は調整分を含めた実需(発注)ベースの動きとなっているが、カット場の稼働日数が少ない関係もあり、足元のパーツの引合いも焼き材やロースも含め全体的に強い。

「バラなど量販店向け焼肉スペックは発注に追いつけていない」(関東の卸筋)という。畜種も和牛の4~3等級や交雑が堅調で、ホルスもトモ三角など焼き材は堅調で、比較的ロースは弱いものの、価格次第で量販店向けに流れている状況だ。

後半は、盆休み明け後の在庫補充の動き次第だが、需要全体でみれば居酒屋や高級焼肉など外食需要は厳しい環境が続いており、学校の夏休み期間も短いことから、テーブルミートも普段使いができるスソ物の切り落とし材や輸入牛肉に需要がシフトする可能性もある。

和牛・交雑中心に枝肉相場が上がってきているなかで、それにパーツ価格が追い付いていけるかがポイントといえそうだ。

〈価格見通し〉
8月の枝肉相場は、前半は盆休み前の手当てで7月後半の水準を維持するとみられるが、盆休み以降はこれといった上げ材料はなく、下げの展開が予想される。

月間平均では弱含みの展開が予想され、枝肉相場(東京市場)は和去A5で2,300円前後、同A3で1,700円前後、交去B2で1,060~1,080円、乳去B2で910~930円と予想される。

〈畜産日報2020年8月5日付〉