〈令和2年9月の需給展望 牛肉〉盆休み明けの需要は低迷、今後の末端消費は天候に左右か

〈和牛中心に相場は底堅く推移も、ロインの動き次第〉
8月の牛肉需要は、新型コロナウイルス感染症に伴う家庭内消費の増加や地方への帰省客の減少などから、盆休み期間中も小売り関係では販売増加が期待された。だが、猛暑や野菜価格の高値から焼肉・BBQ需要の伸びは限定的で、好調だった7月4連休の再現とまではいかなかったようだ。

量販店各社は販売額こそ2ケタ程度のプラスで推移しているものの、原価が上昇したことで徐々に利益が取り難くなっているという。今後も家庭内消費は堅調に推移するとみられるが、相場の動向次第では秋冬の商品政策にも影響する可能性もある。

9月は全国的に平年より気温が高く、残暑が続くと予想されるが、4連休もあり量販店での販促が期待されるところ。ただ、焼肉か鍋物のどちらに消費が移るのかは、野菜価格や天候次第ともいえる。このため、枝肉相場も極端な上げ・下げ要因は少ないものの、全体的に底堅く推移するとみられる。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、9月の成牛出荷頭数は和牛が3万6,200頭(前年同月比1.9%増)、交雑が1万8,200頭(同4.4%減)、乳用種が2万7,000頭(同3.8%減)としており、引続き和牛はやや多めの供給が見込まれる。

輸入牛はチルドが2万1,400t(同0.3%減)、フローズンが2万6,500t(同8.6%減)と、チルドはほぼ前年並みの供給見込みだ。関係筋によると、7月後半からアジア向け和牛の輸出が増え出したこともあり(これが夏の枝肉相場高の要因のひとつともみられる)、農家の出荷控えの動きも解消されるとみられる。ただ、輸入チルドは豪州産がコスト高で供給が絞られる半面、米国産はコストが改善された玉が入荷してくるため、焼き材関係などはホルスとの競合が予想される。

〈需要見通し〉
上述の通り、盆休み期間中の末端消費が思ったほどは伸びず、在庫を持ち越した関係で、8月後半から牛肉全体として荷動きは一服感が出ている。9月は4連休が控えるが、現時点では目立った発注の声は聞こえていない。例年、量販店では彼岸の時期を境に棚割りを変更し、スライス関係の品揃えが増える方向にある。

本紙が各地の主要量販店のバイヤーにヒアリングしたところ、
▽景気不安による消費者の生活防衛意識の高まり
▽長期間の巣ごもり需要による調理疲れ
▽野菜価格の値上がり▽残暑や台風などの天候不安
――から、どちらに転んでも対応できるよう、棚割り変更後も切り落としを主軸に、残りのスペースを焼肉&すき焼き用の2本立てで品揃えしていく企業が多いようだ。

利益率が厳しくなっていることから、アイテムを絞り込んで単価を上げていくとの声もある。このため、パーツの動きも、スソ物中心に万遍なく引合いが継続するとみられるが、問屋筋としては、今後、急な駆け込みの発注が入るとかえって対応し難いとの声も。ロースとヒレは価格次第という状況だ。今後、気温低下で鍋物関係の動きが強まったとしても、野菜価格の高騰が続いた場合、和牛から国産牛へ、さらに国産牛から輸入牛・豚肉へと需要が移ってしまう恐れもあるため注視したいところだ。

〈価格見通し〉
8月の枝肉相場は、下旬に交雑種が値下がりしたものの、月間平均では概ね前月から値上がりした。ただ、和牛は等級間価格差の広がりが指摘されている。9月もロースの動き次第といったところだが、共励会も多いことから全体的に引続き底堅く推移するとみられ、和牛去勢A5(東京市場)で2,450円前後、同A3で1,860円程度、交雑去勢B2で1,230円程度、乳雄940円前後と予想される。

〈畜産日報2020年9月3日付〉