〈令和3年6月の需給展望 牛肉〉末端消費の冷え込みで高級部位中心に在庫圧迫

〈相場は緊急事態宣言解除の動向次第、枝相場はやや下げか〉
5月の牛肉需給は、新型コロナウイルス感染症予防のための緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が発令され、飲食店の酒類の提供制限もあり外食需要は大きく落ち込んでいる。大型連休以降は消費者の節約意識が強まったうえに、早くも西日本では5月中旬に梅雨入りしたことで、小売り需要も停滞、売れ筋はスソ物の切り落としなど、牛肉全体の消費は冷え込んでいる。

部分肉では外食需要の停滞でロース、ヒレ、カタロースなど高級部位の在庫がチルド・フローズンともに膨らんでおり、枝肉相場とパーツ相場の乖離が広がることに。これらの状況を反映して枝肉相場(東京市場)も5月中旬から下旬にかけてジリ安の展開となり、月間平均では和牛A4(去勢)で2,409円(前月比236円安)、A3で2,219円(前月比286円安)と、ホルス以外は軒並み下げとなった。

6月は食肉の不需要期。関東甲信以北の梅雨入りも時間の問題とみられる。緊急事態宣言も6月20日まで再延長されたことで、少なくとも6月前半は需要面での好材料に乏しい状況だ。そのため、枝肉相場も多少の値動きがあっても平均では5月よりも100円程度の下げと予想される。カギは緊急事態宣言の解除であり、その見通しが強くなれば外食方面からの手当ての動きが出てくると予想される。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、6月の成牛出荷頭数は8万3,900頭(前年同月比2.9%減)で、このうち和牛は3万8,200頭(前年同月比3.9%減)、交雑種1万7,800頭(前年同月比3.8%減)、乳用種2万6,400頭(前年同月比1.4%減)と3品種ともに昨対割れと予想されている。今後の相場の動向次第では夏の需要期に向けて出荷控えの動きも出てくると想定される。

6月のチルド牛肉の輸入量は2万1,100t(3.1%増)と少ない予想。米国産など6月末に入荷してくるコストはさらに上昇しており、焼材やスソ物などホルスに代替の引合いも考えられる。

〈需要見通し〉
不需要期のなか緊急事態宣言の延長もあり、外食・ホテル需要はもちろん、小売需要も停滞している。動いているのは、切り落とし用のモモなどのスソ物程度で、大型連休前にはかなりの引合いがあったバラも鈍い。輸入チルドのコスト高からか、関西方面からホルスや経産牛のロースの問い合わせが増えているもようだが、総じてロース、ヒレ、カタロース、バラの動きは鈍く、在庫がかさみつつある。

5月後半から枝肉相場は下げ傾向にあるとはいえ、パーツにばらした場合、ロースなどパーツ相場との乖離はいまだ1,000円以上の開きがある。また関東甲信以北でも間もなく梅雨入りとみられるため、6月前半の実需は引続き厳しいものと予想される。ただ、こうした厳しい状況下で、緊急事態宣言の解除を見越した、あるいは「父の日」の催事に向けた手当てが入るとみられ、早ければ来週後半から6月3週目にかけて動きが回復し、相場が上げに転じる可能もある。残念ながら、6月の牛肉需要も自力回復よりは、行政による対応に左右される展開となりそうだ。

〈価格見通し〉
例年、6月の枝肉相場は前月比で値下がりの展開となる。ただ、輸入チルドなど先物のコスト高や夏場の需要(帰省や観光需要の回復など)を考慮すると、見方によっては「枝を集めるとしたら、この10日間くらいはまだ安いためチャンス」という声も。とくに交雑種などの出荷頭数が少ないため、中旬にかけて手当ての動きが出てきた場合は、和牛4等級で2,400円程度まで回復することも考えられる。このため、6月の月平均相場は和牛去勢A5等級で2,500円強、4等級で2,300〜2,400円、3等級で2,100〜2,200円、交雑種去勢B3は1,700円、B2で1,600円、乳雄B2で980円程度と予想される。

〈畜産日報2021年6月3日付〉